婚活をしている人たちに多いのが自分の年齢を棚上げして、「若い人と結婚したい」という願望です(写真はイメージです)

 人間年を重ねれば経験も知識も増えて内面の厚みもできていきます。一方で、歳を重ねるほどに体力が衰えたり、見た目が老けたりします。現在の自分の年齢をどう捉えるかは、人それぞれに違うと思うのですが、婚活をしている人たちに多いのが自分の年齢を棚上げして、「若い人と結婚したい」という願望です。ライターをしながら婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、“結婚相手の年齢”について、一緒に考えていきましょう。

おじさん、おじいさんが申し込みをかけてくる

 “結婚相談所で婚活するのは初めて”というよしえさん(32歳、仮名)。登録して1週間が経ち、憤りながら連絡を入れてきました。

「40代、50代の方からのお申し込みがとても多いので、驚いてしまいました。昨日は、60代の男性からも申し込みが来ていました。いったい何を考えているんでしょうかっ! 私の父は59歳なので、60代だと父よりも年上です。男性の希望年齢をプロフィールに記載して、年齢を区切ってもいいですか?」

 結婚相談所のプロフィールには、お相手の希望年齢を入れる欄があります。私はそこはあえて、“こだわらない”にチェックを入れるように会員たちには勧めています。なぜかと言えば、受けたくない申し込みは×で返せばいいのだし、年齢を制限することで来るお申し込みに制限をつけてしまうのは、もったいないと思っているからです。

 ただ、会員の中には、そう考えられない人たちもいます。親子ほど歳の離れた男性から申し込みが来ると、“女性としての価値を低く見られた”“バカにされた”と思うのです。

 よしえさんもそのひとりでした。そして、プロフィールの男性希望年齢の欄に“25歳から35歳まで”と、記載を加えました。ところが、それでも40代、50代、60代の男性からのお申し込みは来ます。

「希望年齢の欄を見ていないのでしょうか?」

 さらに憤りの連絡を入れてきました。そこで、私はよしえさんに言いました。

「たとえ希望年齢が書かれていても、申し込みをかけてはいけないという規定はないので、“もしかしたら受けてもらえるかもしれない”という気持ちから、ダメ元で申し込みをかけてくる人がいるんですよ。受けるか受けないかは、女性側に選択権があるのだから、受けたくない申し込みは、×で返せばいいんですよ」

 また、先日はあやこさん(44歳、仮名)からも、こんなメールがきました。

「会員番号〇番の75歳の方なんですけど、先月も先々月もお申し込みがきて、私が2度とも×で返したんですよ。それなのに、今月またお申し込みをかけてきているんです。お相手相談室に、もうお申し込みをかけないように伝えていただけませんか? 私も44歳なので贅沢は言えませんが、75歳と言ったら31歳も年上ですし、さすがに70代の男性と結婚する気にはなれません」

 女性たちの気持ちもわかるのですが、申し込む男性陣にしてみたら、「自分は年齢よりも若く見えるし気持ちも若いから、受けてもらえるかもしれない」と思っているのでしょうね。

同世代の女性とは話が合いません

 先日は、こんな男性が面談にいらっしゃいました。まきおさん(59歳、仮名)、バツイチで年収2000万円、自営業者です。私の相談所では、面談に来ていただくと、まずは面談用紙に、生年月日、婚歴、どんなお相手を希望するかなどを簡単に書いていただきます。まきおさんの女性希望年齢の欄には、20代と30代のところに〇がついていました。

 その面談用紙を見ながら、私が尋ねました。

「現在59歳ですよね。希望年齢が若すぎるので、もっと幅を広げませんか? この年齢に絞ったら、お見合いを組むのは難しいと思います」

 すると、まきおさんは毅然と言いました。

「いや、できたら子どもが欲しいので、年齢を上げることはできません」

 そして、1度目の結婚は、30代前半の時で10歳年下の女性だったというのです。その結婚は5年で離婚になり、子どもは授かりませんでした。

 男性の中には、40代後半、50代、60代になっても、「子どもが欲しい」という方がいらっしゃいます。そうした方たちは、ある程度の年収があったり、不動産などの不労所得があったり、平均よりも多額の貯蓄があったりと、経済的に豊かな傾向にあります。 

 ただ、婚活している多くの女性たちが口を揃えて、こう言うのです。

「結婚は日々の生活なので、お金は必要です。だからと言って、お金だけがあればいいというものではない。親子ほど歳の離れている男性だと話も合わないし、結婚して数年後には介護の問題が出てくるじゃないですか」

「そう言う女性が多いんですよ」と、まきおさんにもお伝えしました。ところが、まきおさんは、涼しい顔でこう返してきたのです。

「話が合わないという点で、僕は心配していないんですよ。仕事で若い人を相手にしていますし、僕自身の感覚も若いです。聞いている音楽も20代、30代の人たちに人気のあるアーティストです。むしろ同世代の女性の方が話が合わないんですよ」

 自分は、ほかの50代とは違う。感覚が若いから、同世代である50代の女性とは話しが合わないし、こういう自分は、20代、30代の相手と結婚するに相応しい男だと思っているのでしょう。

女性たちの中にも年下希望者が多い

 では、女性たちは申し込みをかける設定年齢を、どう考えているのでしょうか? 20代の女性ですと、10歳くらい上でも、お相手の条件がよければ申し込みをかけることがあります。しかし、30代に入ると多くの女性がどんなに上でも7歳くらいまで、できることならなるべく自分の歳に近い男性、もしくは年下にお申し込みをかけるようになるのです。

 中には、10歳、15歳下の男性にも、平気で申し込みをかける女性もいます。前出の32歳のよしえさんも、希望年齢を下は25歳からで上は35歳までとしていました。つまり、下は8歳差、上はたったの2歳差で設定しているのです。

 ようたさん(35歳、仮名)は、年収が900万円ありますが、先日45歳の女性からお申し込みが来て、こんなふうに憤っていました。

「何を考えているんですかね。僕は希望年齢のところに“35歳まで”としていて、年下希望なんですけど。10歳も上の女性とは、結婚できませんよ」

 ただ重ねて申し上げますが、申し込む時に、“○歳以上の年齢差があるお相手への申込みはできません”という規定はないのです。申込みは、個人の自由です。

時間軸は同じでも感じ方が違う年齢のマジック

 そして、年齢というのは不思議なもので、1年は365日、1日は24時間と決まっているので時間軸はかわらないのですが、下を見るとものすごく近く、上を見上げるととても遠く感じるものなのです。

 前出のまきおさんは59歳で、20代、30代の女性を結婚相手に希望されていました。もし29歳の女性だったとしたら30歳の年齢差があります。59歳に30歳を足したら、89歳。29歳の女性は、その時間軸でまきおさんを見ているのです。とても結婚相手には考えられないのです。

 “そんな理屈を並べ立てられても、結婚するのは自分。希望年齢は変えられませんよ”という方が多いでしょう。そんな方たちは、まずはリアルでお会いして、ご自身の魅力で異性の気持ちを掴んでいくしかありません。

 リアルに出会う婚活といったら、婚活パーティでしょう。パーティの場合は、第一印象が勝負になるので、年齢差カップルが生まれやすいのです。ただ婚活パーティの場合も、参加者を、“20代、30代限定”と年齢を区切っているところがあります。年齢の縛りがないのは、相席系居酒屋やバーでしょうか。ただし、こうした場所での婚活は、パパ活やママ活に、注意を払ったほうがいいですね。

 ともあれ仲人としては、年齢にこだわるよにもお人柄を重視した婚活をしていただきたい。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、これが率直な気持ちです。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。新刊100日で結婚(星海社)好評発売中。公式サイト『最短結婚ナビ』 YouTube『仲人はミタチャンネル