宮迫博之

 3月1日のオープンから3週間、連日の賑わいを見せている元雨上がり決死隊・宮迫博之プロデュースの高級焼き肉店『牛宮城』。芸人仲間やインフルエンサーに“大絶賛”された効果もあって、今なお予約が取れない繁盛ぶりだ。

 ところが、そんな絶好調の『牛宮城』を根底から揺るがしかねない動画が、3月21日にYouTubeで配信された。同店にアポ無しで突入したのは、『鬼滅の刃』登場キャラクターの“煉獄杏寿郎”のコスプレをしたユーチューバー。「個体番号のこと聞いたんだよ」と、何でも前日にも来店して『牛宮城』で提供している牛肉の「個体識別番号」を尋ねるも、一向に答えがもらえる様子がなかったために再訪したとある。

 2003年に施行された【牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法】、通称“牛肉トレーサビリティ法”によって、和牛や交雑牛を含めた国産牛を販売等するにあたり「個体識別番号」の表示化が義務付けられた。牛肉の飼育者や飼育地の情報を、消費者自身がインターネットで確認できるようになったのだ。

 以後は高級店やチェーン店も含めて、全国にある多くの焼き肉店が各HPにて個体識別番号を表示、また番号検索・照会サービスに関する情報を掲載。事前に生産経緯が記された、安心が証明された牛肉を消費者が選べる時代に。

 一方で、公式HPに個体識別番号の表示がない『牛宮城』は、高級店を謳う焼き肉店では珍しいケースと言える。とはいえ、HPになくとも、実際に店舗で番号を確認できれば問題はないため、そこは宮迫を信用しての予約、来店ということか。

和牛1頭の性別が「去勢(雄)」

 その通りに、件のユーチューバーが来店した際には、手書きで書かれた個体識別番号が記されたボードをスタッフが提示。日々の牛肉を仕入れていれば書き換えられるのは当然なわけで、手書きは新鮮な牛肉を提供している裏返しでもある。

 この日、お客さんに提供していた牛肉は、和牛3頭に交雑牛2頭の5頭とされる。いずれもこだわり抜かれた牛種、なのだろうが、その内の1頭に疑惑がかけられている。

 動画内で示された和牛1頭の個体識別番号を、独立行政法人家畜改良センターの「牛の個体識別情報検索サービス」で検索してみると、出生日は2019年8月の「黒毛和種」であることが確認できる。ところが、“雌雄の別”の欄に表示されたのは《去勢(雄)》ーー。

《【和牛】30ヶ月以上肥育されたA5の雌牛のみを使用し、ウェットエイジングという方法でお肉を熟成させて旨味を引き出します。》

 これは『牛宮城』HPに掲載されている、自慢のお肉を説明する文面だ。はっきりと《雌牛のみを使用》と書かれているため、ネット上では“雄牛を提供しているのなら偽装にあたるのではないか”との指摘が見受けられるのだ。

 動画の続きでは、ユーチューバーに対して“責任者が不在”と繰り返すスタッフ。そして“標的”にされた時の対応マニュアルなのか、現場に警察まで駆けつける騒ぎに。結局、宮迫本人が登場することはなかった。

検査や改善指導の対象になりうる

『牛宮城』でこの日に提供された牛の個体識別番号を調べると、《去勢(雄)》と出たが

 もちろん、このYouTube動画による“告発”だけで『牛宮城』の是非を判断するわけにはいかない。しかし、仮にこのような“食品偽装”があった場合にはどうなるのか。

 食品の偽装表示、JSA法、牛トレーサビリティ法等に関する懐疑情報を受け付けるためのホットラインとして設置された、「食品表示110番」を管轄する農林水産省消費・安全局消費行政・食育課に話を聞くと、

「(消費者より“情報提供”があった場合には)牛トレーサビリティー法に基づいて、与えられた権限に基づいた(提供店に)確認や検査が行われる場合があります。(仮に違反などがあった際には)改善の指導が行われ、(罰則は)内容を精査した上でのことになります

 即、罰則対象になるわけではなく、故意かどうかの調査次第などで対応が変わってくるようだ。では、去勢した雄牛を“雌牛”と謳って消費者に提供することに問題は?

「お話を聞いた上で申しますと、一般論としてこれは(去勢したからといって雄牛が雌牛には)ならないですね。(実際に確認しないとわかりませんが)表現としてよろしくはないと思います」

 宮迫はかけられた疑惑を堂々と晴らすことができるのか……、YouTubeで。