まぶたが重くなってきた。視野が狭くなった……。顔の印象が変わり、老化を実感する「眼瞼下垂」。まぶたの下垂は、見た目だけではなく全身にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかってきた。有効な対処は「テープを貼るだけ」。手軽なセルフケアなのに効果は絶大だ。
「若いころはもっと目がぱっちりしていたのに、まぶたが下がってきた」と、感じていないだろうか。それは、「眼瞼下垂」かもしれない。まずは自分の顔をよく見て、その兆候をチェックしてみよう。
最近、耳にすることが多くなった眼瞼下垂。まぶたの機能に障害が起こり、まぶたが下がって目が開きづらくなる症状だ。
タレントの北斗晶(54)は、ブログで「年とともに細い目がどんどん開かなくなってくる。前が見えづらいのは……眼瞼下垂だからなんだってさ~」と告白している。
歌手の和田アキ子は、視界が狭くなったことや頭痛の原因が眼瞼下垂と診断されて、68歳で手術を受けた。そして手術でまるで別人のようになってしまったと世間を騒がせ、その後修正手術を受けている。
原因は化粧にあり
「症状が進行して視界が悪くなったり、垂れ目になって老け顔になったりと、自覚するのは年をとってから。でもまぶたが下がり始めるのは実はだいぶ早いんですよ」
と、眼瞼治療の第一人者の松尾清先生は言う。
「まぶたが下がる大きな原因が、まぶたをこすること。若いときからアイメイクをしている女性は、20代でまぶたが下がり始める人が少なくありません」(松尾先生、以下同)
コンタクトレンズをしている人は、まぶたを引っ張って装着するし、花粉症の人は、よく目をこするので、やはりまぶたは下がりやすくなる。さらに、無意識に行っているまばたきも、長年続けているうちにまぶたに負担が蓄積し、下がる原因になるという。
「45歳くらいまでには、ほとんどの人は、眼瞼下垂症になっていると考えられます」
しかも厄介なことに、このまぶたの下垂が一見関係がないような頭痛、肩こり、疲労感、眼精疲労、冷え性、不眠、うつ、自律神経失調症などを引き起こしているというのだ。
「女性の場合、眼瞼下垂が原因だと気づかず、原因不明、もしくは更年期症状として扱われ、症状が改善しないというケースが多くあります」
まぶたが黒目まで下がって、視界が狭まったり、見た目でも明らかだというくらい進行してしまうと手術が必要になる。しかし初期であれば、まぶたをこすらないように気をつけたり、身近なものを使ってまぶたの負担を軽くすることで、身体の不調を減らせる可能性はある。
まぶたの機能が脳を刺激
私たちのまぶたは上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)が伸びたり縮んだりして開閉している。
若いうちは上眼瞼挙筋の先端の腱膜と、まぶたの縁の瞼板という薄い組織とはつながっている。しかし、その組織はもろく、刺激が加わったり加齢によって連結が緩んでしまい、まぶたの開閉がうまくできなくなってしまう。すると目元にあるミュラー筋という筋肉が、まぶたを持ち上げるのを助けてくれる。バックアップをしてくれるのだ。
「このミュラー筋は意思決定や、情動のコントロール、覚醒を促す脳の神経“青斑核”を刺激することがわかっています。目を覚ますためにまぶたをこするのも、ミュラー筋センサーから青斑核を刺激して覚醒しているのです」
ミュラー筋がまぶたを開けようと頑張れば頑張るほど、青斑核を刺激して、交感神経を緊張させてしまう。こうして交感神経が緊張することで、頭痛や肩こりといった身体の不調を引き起こしてしまうのだ。
「このようにまぶたが下がることは身体の不調と密接につながっているので、放置しないでください。もし原因不明の頭痛や肩こり、不眠、眼精疲労などの不調で悩んでいるのなら、今回紹介するまぶたテープを試してみてください」。
もしあなたにまぶたが下がっているという自覚症状がなくても、まぶたが原因で、不調が起きているかもしれない。まぶた引き上げて視界と体調をクリアにしよう。
まぶたが下がっている兆候 セルフチェック
●おでこに横じわがある
●まぶたが黒目にかかっている
●眉間に縦じわがある
●話をしているときに眉毛が上下に動く
●鼻の脇のほうれい線が深い
眼瞼下垂になりやすい特徴やクセ
●目を覚ますためにいつもまぶたをこする
●コンタクトレンズを使っている
●花粉症などのアレルギーがある
●濃いアイメイクをしている
●逆さまつげがある
●涙もろくすぐに泣いてしまう
●アトピーで目がかゆくなる
●水泳のとき長時間ゴーグルをつけていた
「貼るだけ」で不調が改善&下垂予防
まぶたテープ
テープで眉毛を持ち上げると、頑張ってまぶたを持ち上げていたミュラー筋の負担が少なくなる。その結果、交感神経の緊張が解け、筋肉が緩んで、心身の不調の改善につながる。
〜やり方〜
(1)サージカルテープを3~4cmの長さに2枚切る。
(2)目をつぶり、テープの端を眉毛の下に貼る。
(3)まぶたを上げながら、テープで眉毛を引き上げるように貼りつける(まばたきができる程度でよい)。
(4)反対側も同じようにテープを貼る。
〜効果〜
頭痛や肩こりがなくなった、目の疲れがとれた、よく眠れる、気持ちが落ち着くといった変化や、身体の調子がよくなったと感じられたら、貼り続けて。1日に1回はテープを取り換えるようにすれば、貼ったまま眠っても大丈夫。改善しない場合は、ほかの要因も考えられるので医師に相談を。
まぶたと脳の密接な関係
(1) まぶたが下がるとミュラー筋が引っ張られる
(2) 脳の青斑核が刺激される
(3) 自律神経の交感神経が緊張する
(4) 頭痛、肩こり、イライラ、不眠、うつ、疲労などにつながる
腱膜性眼瞼下垂症が進行してまぶたが開きにくくなると、青斑核が刺激されにくくなり、疲れる、いつも眠い、やる気が起きない、身体に力が入らない、などの不調も!
ほかにもある眼瞼下垂セルフケア
ポイントはまぶたを休ませること。まぶたの負担を減らし、ミュラー筋を引っ張らない生活習慣を心がけよう。どれも簡単なので、まぶたテープと一緒に試してみて。
●眼球を左右に動かす
イスに座って肩の力を抜き、下を向く。1秒間隔で、目を左右にキョロキョロと動かし、10回繰り返す。日中、1時間半に1回行えば、眼精疲労の予防になり、肩こり改善効果も。
●ヘアバンドをする
眉毛を持ち上げてまぶたの負担を減らすために、前髪を後ろに引っ張るポニーテールやひっつめ髪にしたり、ヘアバンドをするのも有効。
●横向きで寝る
横向きに丸くなり、あごを引いて寝ると、眼球の位置が下を向き、ミュラー筋を刺激しにくくなり、よく眠れるようになる。不眠ぎみの人はあおむけ寝はNG。
●身体を温める
温かい飲み物や食べ物をとると身体が温まり、血管が広がり、交感神経の緊張が解け、ミュラー筋も緩んでまぶたを休ませられる。ややぬるめのお風呂にゆっくり入るのも効果的。
〈取材・文/水口陽子〉