3月28日(日本時間)、米アカデミー賞で、濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』が、国際長編映画賞に輝いた。日本映画が同賞を受賞するのは、2009年の『おくりびと』 (滝田洋二郎監督)以来、実に13年ぶりの快挙とあって、国内は大きな盛り上がりを見せている。そんな中、『ドライブ・マイ・カー』に登場する若手俳優のキャラクターに関して、実在の人物がモデルになっているとの話を『週刊女性PRIME』はキャッチ。
『ドライブ・マイ・カー』は、村上春樹氏の著書『女のいない男たち』(文藝春秋社)に収録された同名タイトルの短編を原作とする。最愛の妻・音(霧島れいか)を亡くした俳優兼演出家の家福(西島秀俊)が、演劇祭で出会った専属ドライバー・みさき(三浦透子)と時間を共にすることで、目を背けてきた自身の喪失に向き合っていく……というストーリーだ。
「女性問題で身を滅ぼした」という共通点
「そのほかに、本作の重要な役どころとなるのが、家福が演出する舞台に参加する俳優・高槻です。原作では40代でしたが、映画版では甘いルックスで人気の若手俳優という設定になっています。
彼は、脚本家だった音と不倫関係を結んでいた過去を持ち、のちに未成年女性とのスキャンダルで事務所をクビになったという問題児。そんな高槻を演じたのが岡田将生で、家福とともに“音の秘密”について語り合うシーンは、本作のハイライトの一つと言えるでしょう」(芸能ライター)
岡田は高槻を演じたことについて、ウェブメディア「CINEMA Life!」のインタビューで「この役を演じることができたことは大きいです」「お芝居が好きになりました」と語っており、岡田のキャリアにおいて、重要な作品になったことは間違いないだろう。
そんな高槻は、実在の人物がモデルになっているというから驚きだ。
「“高槻は東出昌大の要素を入れている”といい、東出をイメージして脚本もアレンジしていったそうなんです。東出といえば、濱口監督作品『寝ても覚めても』(2018年)で共演した、当時19歳の唐田えりかと不倫関係に発展、妻の杏とは別居を経て離婚に至りました。それまでの良き夫、良き父イメージは大暴落し、芸能活動に大打撃を食らったことは、記憶に新しいでしょう。
東出と高槻は『女性問題で身を滅ぼした』という共通点を持つわけですが、濱口監督が人間性の部分でも、高槻に東出を投影していたのでは……と考えると、これまでとは違った観点で本作を鑑賞できるかもしれません」(映画業界関係者)
例えば、家福に過去の女性スキャンダルを咎められた高槻が、怒涛の反論を展開するシーンがあるという。
「高槻は、『あれはハメられたんです』『(身元のわからない女性と肉体関係を持つことって)ないですか?』『フィーリングが合って、もっと知りたいって思ったら、(肉体関係を持つことって)ないですか?』と、まくし立てるのですが、東出もこういった衝動的な面を持っているのかな……と邪推してしまいます」(同・前)
一方で、高槻は音に対して特別な思い入れがあり、また自身の演技に葛藤しながらも、舞台に真摯に取り組む姿を見せていた。
シンクロぶりは“もはや奇跡”
「高槻は女にだらしないけれど、ただの軽薄な人間ではないというキャラクター。家福が高槻に『君は自分を上手にコントロールできない。社会人としては失格だ、でも役者としては必ずしもそうじゃない』『君は相手役に自分を差し出すことができる。同じことをテキストにもすればいい』と、芝居に関して助言するシーンを見ていると、濱口監督自身が東出に語り掛けているようにも見えてしまいます」(同・前)
濱口監督が、東出の役者としての才能を高く買っていたことはよく知られている。ウェブメディア「PINT SCOPE」での両者の対談(2018年8月30日掲載)では、
≪僕が最初に東出さんを観たのは、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)で、勿論そのときはまだ一緒に仕事をするなんて全く思っていないんですが、「こいついいやつだな」と感じたんですよね。東出さんの「そのまま」が写っている感じを見て、「ずっと見ていたい人だな」と感じました。その印象は、今でも変わらないですね。≫
と、俳優・東出昌大を絶賛していた。
「東出は以前から、ネット上で『棒演技』『大根役者』『滑舌が悪い』などと、演技力を揶揄されることがよくありました。しかし、濱口監督は東出を大いに気に入っていたようで、『寝ても覚めても』では、マイペースでつかみどころがなく、恋人の前から突然姿をくらます美青年・麦と、誠実で情に厚いサラリーマン・亮平という、正反対なキャラクターの一人二役という難役に抜てき。
麦と亮平を通して、東出の存在感が際立っていた印象でした。濱口監督は、≪東出さんの「そのまま」≫に魅力を感じ、『ドライブ・マイ・カー』でも、高槻のモデルにしたのかもしれません」(前出・映画ライター)
なお東出は、昨年10月、コロナ禍の中、映画のロケ地である広島に、交際中の一般女性を呼んでいたことを「週刊文春」(文藝春秋)にスクープされた。これを受け、今年2月、所属事務所「ユマニテ」から専属契約を解消され、奇しくも東出は高槻と同じフリーの道を歩むことになった。
「ここまでシンクロしているのは、もはや奇跡だけに、もし東出が高槻を演じていたらどうなったのだろう……と思わずにはいられません。ただ、実現していても、不倫スキャンダルのあおりを受け、作品がイロモノ扱いにされてしまった可能性は高いと思いますが」(同・前)
自身がモデルになったという高槻を見て、東出は何を思うのか。ぜひ『ドライブ・マイ・カー』の率直な感想を聞いてみたいものだ。