中学時代の橋本志穂容疑者(同級生提供)

「容疑者はおとなしい子だったから、今でも信じられない……」(近隣住民)

 3月24日、栃木県警捜査一課と同県警下野署は、会社員の母親(54)の死体を2月中旬から3月10日にかけて、同県河内郡上三川町にある県営住宅の自宅ベランダに放置し、遺棄したとして、同居していた自称イラストレーターの娘・橋本志穂容疑者(28)を逮捕した。全国紙社会部記者によると、

「母親が勤める会社が“2月中旬から無断欠勤していて、本人と連絡がとれない”と下野署に相談。警察官が3月10日、自宅のベランダで布のようなものに包まれた遺体を発見しました。遺体の頭や顔には刃物で切られたり、刺されたりした傷が数十箇所あったようです」

 実は、志穂容疑者は別の事件ですでに逮捕されていた。

遺体で見つかった母親のパスポートでイギリスへ

「2月25日、志穂容疑者は亡くなった母親のパスポートを使って、母親になりすまして成田空港からイギリスに渡っていた。だが、イギリスの入国審査でパスポートの虚偽が発覚して3月1日に強制送還。千葉県警に旅券法違反で逮捕されていたのです」(同・社会部記者)

 栃木県警は母親の死亡にも志穂容疑者が関与した疑いが濃厚として、慎重に捜査を続けている。母娘のあいだにいったい何があったのか……。

小学校の修学旅行に参加する橋本志穂容疑者(同級生提供)

 容疑者の母親は20歳前後で最初の夫と結婚し、5歳ほど上の兄と、志穂容疑者の2子をもうけたが、容疑者が乳幼児の頃に離婚。2人の子どもは母親が引き取って育てることに。

 その後、母親はトラックの運転手をしながら子育てをしていたが、職場で知り合った同じく運転手の男性Hさんと2度目の結婚をする。彼は先の県営住宅から2.5キロメートルほど離れた下野市の大地主の跡取り息子だったという。

「当時、30代後半のHさんは地元の名家の跡継ぎで、初婚でした。だから最初は親も親戚も子連れの相手との結婚に大反対だったけど、ふたりが押し切った。町の食堂を貸し切って、一族や地域の人も招いて盛大な結婚式を挙げたんですよ」(近所の主婦)

 だが数年後、容疑者の3歳下の弟が生まれた直後に、またしても離婚することに。

漫画好きで引きこもりがちだった容疑者

「弟は2番目の父親が引き取って、母親は兄と容疑者を連れて、家を出ていきましたね」(同・主婦)

 再びシングルマザーとなった母親が、子ども2人と今の県営住宅に住むようになったのは、20数年前だった。容疑者の小学校の同級生によると、

「確か小学校の低学年のときに転校してきたと思います。授業中に漫画のキャラクターの絵などをノートに描いているような子で、外で遊んでいる姿はほとんど見たことないですね。自宅にこもって漫画をよく読んでいたみたい。眼鏡をかけたおとなしい子なんだけど、かといって勉強も得意じゃなかった。宿題はほとんどやってこなかった記憶がある」

 中学校の同級生も同じ印象を持っていて、

「容疑者は美術部に入っていたと思う。運動や勉強はとくにパッとせず、目立つほうじゃなかったですね。ただこの頃、眼鏡からコンタクトレンズに替えていましたよ」

 容疑者のことを“覚えていない”“顔も知らない”という同級生が多かった。

橋本志穂容疑者の“実家”は廃墟と化していた

家族のことをほとんど話さない子

 高校生になると、近所のコンビニでアルバイトするようになった容疑者。

「真面目に働いていましたね。性格は暗くはないんだけど、こちらから話しかけるとしゃべるけれど、向こうからは話しかけてこないタイプ。あと、家族のことはほとんど話さない子でしたね」(アルバイトの先輩)

 母親は長男と容疑者を女手ひとつで育てるために、必死で働いていたようだ。

「県営住宅の入居者は月に1回、みんなで草むしりなどの掃除をするんですが、橋本さんのお宅は1度も来たことなかった。近所づきあいもしない。そんな暇もないくらい、忙しかったのかもね」(県営住宅の住民)

 容疑者が事件を起こした背景について、Hさんの親族はこう話す。

「自分の不幸な生い立ちを恨んだゆえの犯行のように思います。だって、まともに父親がいたときがほとんどないし、そのせいで弟とも別々に暮らすハメに。その原因をすべてお母さんのせいにしてしまったのかもしれない……。それで後先考えずに、自暴自棄になってやってしまったように思えます」

 Hさんと容疑者の弟が住む自宅を訪ねるも、不在。容疑者も幼い頃、住んでいたであろう場所は雑草が生い茂って廃墟のようになっていた。いったい何があったのだろうか。

 警察は志穂容疑者の認否を明らかにしておらず、事件の真相の究明が待たれる。