※画像はイメージです

 新生活に向け、家電も新調したくなる季節。だが、

「製品の特長や自分の生活との親和性を考えず、話題性だけで選ぶと後悔します」

 と現役家電販売員のAさんはストップをかける。

年間コストが高い! ダイソン空気清浄機

 まず“購入をすすめない商品”として挙げるのは、サイクロン式掃除機で有名なダイソンの空気清浄機。コンパクトでおしゃれだと“指名買い”する人が多いが、実は買う前に知ってほしいポイントがあると指摘する。

「ダイソンは、世界初のサイクロン式掃除機を開発・販売したメーカーで、掃除機もドライヤーもパワーが強いのが魅力。空気清浄機の集塵力も高いですが、とにかく音が大きい」(Aさん、以下同)

 さらにやっかいなのは、フィルターの交換。ダイソンはたった1年で交換が必要なのだ。それに比べ、4万~5万円の国内メーカー品であれば、フィルターは月1回程度の掃除を行うことで一般的に10年程度使える。

「フィルターの購入費用は6~7千円。掃除が不要なのはメリットですが、知らずに買うとガッカリしてしまうはずです」

 温風と冷風の両方が出るモデルになると、さらに“電気代が高い”というマイナスポイントが加わる。

「温風を出すセラミックファンヒーターは、ドライヤーをつけっぱなしにしているのと同程度の電気代がかかります。しかも、暖まる範囲が狭く、乾燥も激しい。空気清浄機、扇風機、温風ヒーターの3役とうたっていますが、評価できるのは集塵力の高さだけです」

 イオン発生機能などを搭載し、カーテンやクッションなどへの付着菌に対応しているシャープやパナソニックなどの国内メーカーと比べると“いま一歩感”が否めないとも語る。

「ルンバ」はペットの粗相を感知できない

 ロボット掃除機の代名詞ともいえる「ルンバ」も購入前によく検討すべき製品。こちらも“指名買い”が多いが、ペットが室内のトイレ以外で排便をすることがあるという場合は、容易に買ってはいけない。

「最新モデル以外は、排泄物を検知できずそのまま吸引。悲惨なことになります。ロボット掃除機=ルンバというイメージの人は多いですが、実は障害物を回避するセンサー機能はほかのメーカーが先行。ルンバはようやく最新モデルで追いつきました」

 “〇〇は、このメーカーがいちばん”といった固定観念にとらわれるのは危険。日々進化する家電業界では、情報のアップデートが必要だ。ひと昔前のCMで話題を呼んだ“液晶はシャープ”ももう古い。

「好みもありますが、他社製品のテレビに比べて色合いが薄く、お客さんから“画質がキレイだね”と言われることは、ほぼありません」

 近年、テレビの液晶は韓国のLGなど海外メーカーのほうが優良。国内でも東芝やソニーの評価のほうが高いため、Aさんは「売り場で好みの“映り”の確認をしてほしい」と力説する。

ドラム式から縦型へ出戻りが多いワケ

“今や洗濯機を買うならドラム式”という刷り込みも払拭しておきたい。

「実はドラム式から縦型に戻す人が少なくありません」

 と話すAさん。洗濯槽を回転させ、洗濯物を持ち上げて落とすという、ドラム式特有の“たたき洗い”により、タオルのふっくら感が損なわれ、洗うたびにゴワつくという悩みも原因の1つのようだ。

「“壊れやすい”という声も多いうえ、製品の平均寿命も縦型の10年に対して、ドラム式は7~8年。これはメーカーの担当者もひそかに認めています。モーターが動かなくなる、ホコリや小さな洗濯物が詰まって動かなくなるなど、メーカーによってはトラブルも縦型より多い印象です」

 ドラム式の構造上、洗濯物をかがんで出し入れするため、腰痛を悪化させてしまう人も。とはいえ、洗濯から乾燥まで一気にできるのは大きなメリットなので、日常的に乾燥機能を使うかどうかを基準に検討するのが賢明だと指南する。

バルミューダの掃除機は重くて吸引力も低い

 一方、名前だけが独り歩きしているが、購入の際は“慎重になるべき”とAさんが忠告するメーカーも。デザイン性が高いトースターで一躍有名になったバルミューダがその1つ。トースターが爆発的にヒットしたが、満を持して発売したスマホについては酷評する。「このメーカーは“いい物”と“悪い物”の差がはっきりしている印象」とAさん。なかでも“ヤバイ”と感じたのがコードレススティックタイプの掃除機だと話す。

フローリング用のモップをイメージして作ったようですが、とにかく重い! しかも、ダイソンなどの同様の掃除機と比べると1kg程度重いうえに、吸引力が低い。部屋の角のゴミや床の目地のゴミが残ってしまうレベルです。これで値段が約6万円は厳しいと言わざるをえません。デザインは抜群なので、残念」

 軽いと評判の炊飯器もお米の炊き上がりが販売員の仲間内で「微妙……」と評価が一致したというから要注意。

当たり・ハズレが激しいアイリスオーヤマ

 2万円以下で高性能な炊飯器を販売するなど、独自路線のお買い得家電で人気を得ているアイリスオーヤマも“当たり・ハズレ”があるメーカー。“安いだけ”の商品をつかまない目利きが重要だとAさんは見ている。

「あまりおすすめできないのは除湿機。除湿機の上部に取り付けられたサーキュレーター(扇風機)が“よくも悪くも”な付属物です」

 除湿機にはコンプレッサー式とデシカント式があり、デシカント式はヒーターの熱を利用して除湿をするため、使用すると温風が排出され、室内温度を上昇させる特徴があるのだ。

 アイリスオーヤマの場合、デシカント式の除湿機の上部にサーキュレーターを取り付けているので、部屋中に暖かい空気が巡ると指摘。

「冬に洗濯物を乾かす目的があればいいですが、これからの季節はよく考えて使ったほうがいいと思います」

 東芝や日立などに比べて半額程度の価格で販売されているLED照明は、光が部屋全体に広がるように設計されていないため、光源の真下以外は暗く感じがち。“安くてお得”とは言い切れないようだ。

「リビングではなく、寝室用に購入するならよいかもしれません。特徴と値段を天秤にかけて、適材適所で購入するのがよいと思います」

 上手な家電の選び方として、話題や人気といった情報に惑わされずに、自宅の様子や自分の生活に合ったものを選ぶべきとAさん。

「売り場で見て、触って確かめるか、最近はレンタルできるサイトも多いので、試してみることも失敗しないポイントです」

お店では教えてくれない!家電選びでソンしないコツ

最上位モデルが高性能と思い込まない

「メーカーにもよりますが、最上位モデルとその下では“デザインが部分的に違うだけ”程度のことが少なくありません。炊飯器や冷蔵庫など、それだけで数万円の差がつくことも。高級=性能がよいものとは限らないと心得たほうがいいでしょう」

最新モデルは発売半年過ぎてから検討を

「例えば、年に1回新製品が出る冷蔵庫は、春ごろに発売されてそこから1年かけて半額程度になることが多いです。発売されたばかりの時期は、新製品だからといってスペックに見合わない強気の価格設定をしている商品も。発売すぐの購入は避けるのが無難です」

使用家電を聞いて販売員の本音を探る

 1つの商品だけを強くプッシュする販売員を信じるのは要注意。「店側で“今月はこの商品を売る”などの目標が決められているかも。そういうときは“店員さんは何を使っているんですか?”と唐突に聞いてみてください。本音がポロッと出てくる可能性があります」

教えてくれた人は……現役家電販売員Aさん
●販売員歴15年。大手家電量販店の家電売り場全般を担当し、特に理美容ジャンルに精通。新製品はできるだけ試して使用感を確認。製品の長所・短所を分析する。

<取材・文/河端直子>