『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)のレギュラー放送が終了した。
木下ほうかの好感度を上げた美談
ミニドラマ形式で、トラブルメーカーが懲らしめられる話などを描くこの番組はある意味『水戸黄門』(TBS系)の現代版。同じ月曜8時台で人気を博し、ここからブレイクした者も少なくない。
そのひとりが「イヤミ課長」を演じた木下ほうか(58)だ。悪役だがどこか憎めないキャラがウケ、決めゼリフの「はい論破!」は流行語大賞にもノミネートされた。最終回にはスタジオに登場して、
「感謝しかないですね。なんか、さびしいなぁ。育ててもらったような気がして」
と、涙を流す場面も。ハリセンボンの近藤春菜から「一瞬でもウソ泣きだと思ってごめんなさい」とツッコまれ、絶妙な笑いが生まれていた。
が、その2日後、ふたりの若手女優への性加害疑惑が報道されることに。記事によれば、演技指導などを名目にパワハラ的な性行為をしていたという。脇役として引っ張りだこだったが、山下智久の主演ドラマ『正直不動産』(NHK総合)は降板。事務所からも契約を解除された。
それにしても、ブレイク番組が終わった直後に現実でも悪役になってしまうとは──。なんとも劇的な展開だが、この人にはもうひとつ劇的な話がある。
2017年、ACジャパンの日本骨髄バンク支援キャンペーンcmに出演。骨髄提供を行っていたことがわかった。ドナー登録を決意した理由については、インタビューでこんなエピソードも明かしている。
「大学時代に同じ演劇科の同級生だった女性と4年間付き合っていたんですけど、のちに彼女が急性骨髄性白血病で亡くなってしまって……。まだ29歳という若さでした」
この「美談」はブレイクをさらに揺るぎないものにした。かつての八名信夫や近年の遠藤憲一などもそうだが“実はいい人”というギャップが悪役系の役者の好感度を爆上げするからだ。
スキャンダルで好感度急降下
しかし、好感度が上がってからの不祥事は逆に爆下げをもたらす。例えば、田中聖が覚醒剤で逮捕された際、アンジャッシュの児嶋一哉がこんなことを言っていた。
「悪そうな人がホントに悪かったんかい、ってガッカリしちゃいますよね。ウラではちゃんとしてるっていうのがカッコいいなと思うんですけど、そのまんまじゃん」
木下もまさにこの状態なのである。
とはいえ、人間というのはそんなに単純なものではない。ドナー登録で誰かの命を救いつつ、若手女優を性加害で傷つけるという二面性が共存することもありうるのだ。
ちなみに、彼は独身。前述のインタビューでは、こんな発言をしていた。
「離婚したくないから結婚しないんです。結婚して離婚して……というのが多いじゃないですか。だからみんなもっと慎重にやろうぜって(笑)」
夭折(ようせつ)した恋人の話のあととあって、まじめな結婚観にも思えたが、性加害疑惑が報道された今は違うイメージになる。ケジメをつけるのが面倒なだけだったのではとか、自分こそもっと慎重にやっておけばよかったのに、などとツッコみたくもなるのだ。こうした詰めの甘さというか、馬脚の現し方みたいなものも「イヤミ課長」と重なるところがなかなか興味深い。
それでもこれが『スカッとジャパン』なら、誰かが懲らしめてくれるし、笑いに変えてもくれる。が、現実はドラマのようにスカッとはいかないのだ。
今後不定期放送されるというこの番組に「イヤミ課長」の席はあるだろうか。