「2年ほど前にご主人と引っ越してきてね。言葉は交わさんけど、挨拶をすればきちんと会釈してくれる愛想のええ人やったよ……」
被害者の自宅近くの住民は言葉を失った。
4月3日の午後、大阪府大阪市淀川区の『ほっかほっか亭三津屋店』の店主が、
「アルバイトの女性が戻ってこない」
と大阪府警に通報をした。店内の防犯カメラには、午前8時35分ごろ、ベトナム国籍でアルバイトのヴォ・ティ・レ・クインさん(31)が、同店の2階に住む男と店を出ていく様子が映っていた。
その夜、警察官が男の部屋を訪ねると、その男は刃物で自らの首を切っていて、血まみれで倒れているのを発見。病院に緊急搬送されて、命に別状はなかった。
布団圧縮袋に詰められていたヴォさんの遺体
「警察は翌日にあらためて男の部屋を調べると、テレビ台の裏に隠された布団圧縮袋を発見。粘着テープで縛られた袋の中からヴォさんの遺体が見つかったのです」(全国紙社会部記者)
死因は首を絞められたことによる窒息死だった。
2階の男、トラック運転手の山口利家容疑者(59)が逮捕されたのは、事件発覚から2日後の6日。本人の回復を待って、自供を聞いた上での逮捕で、強盗殺人と死体遺棄の疑いだった。
警察の取り調べに対して容疑者は、
「生活が苦しく、金を奪おうとしたが、大声で騒がれたので首を絞めた」
と容疑を認めていて、ヴォさんの手提げカバンなどを盗んでいた。山口容疑者はどんな人物だったのか。
「いつも迷彩服の上下を着ている変わった男。階下で営業している同店に“シャッターの開け閉めの音がウルさい”とクレームをつけていたみたいですよ。
近隣の人によれば、“事件前日の夜にも、男と外国人女性の怒鳴りあうような声が聞こえた”って」(近所の主婦)
ヴォさんが夫に話していた“将来の夢”
被害者のヴォさんは、ベトナムの大学で日本語を勉強したのち、6年前に結婚。5年前に夫とともに来日した。同弁当店には1年半ほど前から勤務していたが、
「外国人の女性が働いていることは知っていたんやけど、奥のほうで調理していたし、マスクをしているから、顔まではようわからんかったね。でも、テレビで若いころの写真が出とったけど、美人さんやったんやねぇ」(弁当店の常連)
同店から2キロメートルほど離れた同市西淀川区の借家に夫とふたりで住んでいたヴォさん。冒頭の近隣住人は、
「日本人とのつきあいはほとんどなかったみたい。でも、お宅の前によく自転車が停まっていて、ベトナム人のお友達が遊びに来ていたね」
夫婦ともども社交的だったことがうかがえる。ヴォさんの夫の悲しみは、計り知れない。
「“日本は安全な国だと思っていたのに……。妻の夢は日本で働くことと、そして将来はベトナムの子どもに日本語を教えることでした。容疑者は厳しく処罰してほしい”と泣きじゃくっていましたね」(前出・社会部記者)
捜査関係者はこう話す。
「ヴォさんがなぜカバンを持って容疑者の住む2階の部屋へ上がっていったのか。そもそも、容疑者がアルバイトのヴォさんを強盗目的で襲うものなのか……。まだまだ不可解な点が多い」
夢を抱いて渡ってきた日本で、無惨にも命を奪われたヴォさん。彼女の無念を少しでも晴らすためにも、真相の解明が待たれる。