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 品薄な商品を高値で売りさばく“転売ヤー”(商品を転売する人)の横行。100円ショップのアイテムや人気の手土産品までが買い占められ、オークションサイトやフリマアプリなどに出品される。副業意識で手軽に始める人が多いが法的にはグレーだ。コロナ禍で主婦層も一挙に参戦。やり口や儲けの額を聞いた。

 転売ヤーが世の中を騒がせている。そもそも転売ヤーとは、購入した商品を転売して利益を得る人のことだが、それ自体は違法ではない。ただし、チケットを高額で転売する「ダフ屋」行為は違法で、迷惑防止条例やチケット不正転売禁止法に抵触する。また、転売目的で購入した商品を“継続的に”“ビジネス目的で”販売するには古物営業の許可が必要となる。

 つまり常習的に無許可で転売をし続ければ違法。しかし、利益を目的に繰り返し転売をしているかどうかの判断は難しいため、法的にグレーゾーンの転売が横行しているのが現状だ。

 最近、タレントの伊集院光が、ラジオ番組で

「1億総転売ヤーの時代。ガンプラ興味ない主婦とかも買って売っている」

 とコメントし、反響を呼んだ。少し説明すると、ガンプラとは、アニメ『機動戦士ガンダム』のプラモデルのこと。ファン以外には、その価値もわからないものだ。ところが最近、転売目的でガンプラを購入する層が増えている。それにより“おひとり様1個まで”といった販売規制が続いて品薄状態だ。真のファンがお目当てのものを手に入れるために、メルカリなどのフリマサイトやオークションサイトなどで高額な転売品を買うケースもある。

ガンプラ、ポケモンカードで
主婦がボロ儲け

 思い出されるのが昨年のクリスマス。子どもや孫からのリクエスト品であるゲーム機「Nintendo Switch」や「プレイステーション(PS)」の最新モデルが転売ヤーのえじきとなった。ネット通販でも品切れが続出、やっと見つけてもメーカー希望小売価格に何割も上乗せした販売額で売られていた。

 例えばPS5の希望小売価格は39980円だがネットで検索すると、9万円、20万円と驚くような高額販売品が見つかる。こうなると、1万円程度の上乗せなら良心的に思えてくるほどだ。実際、「5万円程度で手を打った」という声がネット上で多く聞かれた。

 さらに問題なのは、こうした転売に主婦や学生などの一般人が気軽に手を出している事実だ。巷では小学生までもが、ポケモンカードの転売価値を知っている。レアなカードは数百万円から、極端な例だと数千万円の価値がつくものもあるのだ。

「高額カードを売ったお金で新たなトレカを買う人も。お子さんが迷っているのにお母さんがノリノリで売るケースなども見かけましたね」(中古カード買い取り店スタッフ)

 昨年7月、アメリカで16歳の高校生が最新ゲーム機やポケモンカードの転売で1億8000万円を売り上げ、経済紙ウォールストリートジャーナルに報じられた。

 もはや子どもから大人まで軽い財テクになっているようだ。しかしガンプラやポケモンカードの知識がない主婦が、転売で儲けるなど不可能だろう。と、思いきや!

「何の知識がなくても、転売向け商品をリサーチできる無料ツールがあるんですよ。ガンダムなんて1度も見たことがないけど、どのモデルが高く売れるかわかりました」

 そう教えてくれたのは転売歴2年の主婦Y子さんだ。

「月2000円で商品需要のグラフや価格設定まで自動で計算してくれるツールもある。簡単に稼げますよ」(同)

 誰でも知識ゼロのジャンルで転売を始められる現状が、1億総転売ヤー時代を生んでいるのだ。

有名銘菓も転売のターゲットに

 転売の対象はゲーム機などの趣味グッズだけではない。

 2020年、マスクや消毒液を高額転売した主婦らが書類送検された。国民にコロナ不安が広がる中、品薄だった感染防止の必需品を買い占め、高額で売りつけようとする卑劣な行為を司法は見逃さなかったのだ。転売そのものは、たしかに違法ではない。だが不安に乗じた悪質な転売は国民生活安定緊急措置法で違法となった。

 違法でもグレーでも、どんなに高くても買う客がいれば、転売ヤーは転売を続ける。

 マスクや消毒液などの消耗品もそうだが、100円ショップのアイテムなども投資金額も少ないので、初心者が始めやすい商材だ。

「SNSで人気のものはスグ品薄になる。話題の商品を探すため、100円ショップのパトロールは欠かせません」(前出・Y子さん)

 美容家電も転売で人気のジャンルだ。

「私は扱ったことがないですが、パナソニックのナノケアシリーズなどは初心者向け商材として知られているようですね」(同)

 数千円から1万円程度の小遣い稼ぎにうってつけの転売品として、気楽に始める人も多いようだ。同じ美容のジャンルでは、ほかにも、

「化粧品の廃番商品も狙い目です。以前、とある口紅のカラーが廃番になると聞いてネット通販で大量買い。結果、大当たりでした。定価の倍近くで売れましたね」(同)

 プチプラコスメなど、そもそもの単価が低い商品は、セット売りにすることで利益をアップさせる技も。

 東京・千代田区に、村上開新堂という洋菓子店がある。常連からの紹介がないと購入できない“一見さんお断り”の老舗だ。菓子はすべて手作りで、購入は完全予約制。贈る側も受け取る側もステータスを感じる商品でいちばん小さいクッキー缶(0号缶サイズ)の価格は6千円ほどだ。

「それがアマゾンなどの通販サイトで、3万円を超える高値で売られているんです」

 そう憤るのは親の代から村上開新堂のクッキーを買い続ける主婦B子さん。

「先日、母が電話したら最短の予約で来年の春、と言われたとか。母もビックリして思わずお店の人に“そのころまで生きてるかなぁ”って言ってしまったそうですよ」(同)

 転売ヤーの爆買いによって、ますます“幻のクッキー”になってしまった。この状況を受け公式サイトでは以下の声明を出した。

《この度、弊社商品が大手通販サイトやオークションサイト、SNSなどにおいて、高額にて販売されていることが判明いたしました。(中略)手前どもの商品は、お電話または店頭以外でのご注文は一切伺っておらず、すべてご登録のお客様からのご注文を承り、販売させていただいております。こうしたサイトに出品されました商品は、残念ながらご購入品或いは受贈品であると考えられます》

 世の中で話題の商品、入手困難な商品はすぐ転売品が出回る。人が大金を払ってでも入手したい商品は転売ヤーが見逃さないのだ。先の伊集院ではないが1億総転売ヤー時代を嘆きたくもなる。

 庶民の自衛策としては正規の価格を正しく調べて知り、“転売ヤーからの購入はしない!”ということぐらいなのかもしれない。

その転売、儲かりまっか?【1】
SNSで人気の100円ショップアイテム!
「DAISO、Seriaのペット用サングラス」

 SNSで「可愛い」と話題になり品薄状態となったペット用サングラス。1点あたりの利益は少なく、手間を考えると転売ヤーのうまみもあまりなさそうだが、メルカリにはいくつか出品されていた。元値110円(税込み)をメルカリ出品価格450円(送料込み)で販売。諸々の出費を引くとプラス120円となる。ぱっと見、110円には見えず、飼い主の心もくすぐるアイテム。人気商品なので100円ショップで見かけることも少なく、仕入れ商材としては優秀なのかもしれない。《8個2500円》など、まとめ売りをする出品者も多いが、その場合には利益が1195円(売り上げ2500円−買価880円−メルカリ出品手数料250円−送料175円)となる。

小さな眼鏡やサングラスにゴムバンドがついており、ペットの頭部に固定できる。愛犬家、愛猫家にはたまらないアイテムだ

その転売、儲かりまっか?【2】
廃番カラーを買い占め&まとめ売り!
「メイベリン カラーセンセーショナル リップB05 2本セット」
 定価は単品だと税込み1320円と安い。だが、愛用者が2本セット税込み2640円購入してメルカリ出品価格4200円(送料無料)で販売すると、手数料、送料の負担が半分になり、利益がふくらんだ。100円ショップの商品もそうだが、「単価の低いものはまとめ売り」が鉄則のようだ。

愛用カラーがなくなったショックに追い打ちをかける、ハイエナのような転売ヤーの買い占め作戦

その転売、儲かりまっか?【3】
老舗の銘菓も転売のえじきに!
「銀座 『空也』のもなか 10個入り(自宅用・箱入り)」

 銀座名物としても名高いもなかだが、なんと大手通販サイトの某ショップではおよそ6倍もの高値で売られていた。通常、このもなかの日持ちは1週間。通販はされていない。店舗販売も予約が原則で、当日店頭販売は繁忙期には行われない、なかなかの入手困難商品。『メルカリ』でも2千円台で何点かソールドアウトとなっていたものの、メルカリ側の取り分が10%と送料込み価格であることを考えるとうまみは少なそうだ。また、落札までの期間が長い『ヤフオク』には、賞味期限が短いため不向き。電話で店側に「通販サイトでもなかを見た」旨を伝えたところ「もなかの通販は行っていない。転売商品なので絶対買わないで。製造日の偽装などもある可能性がある」との回答があった。

「銀座 『空也』のもなか10個入り(自宅用・箱入り)」
取材・文/ガンガーラ田津美