木下ほうか

《私の軽率な行動の結果、女性の方々が心に深い傷を負ったことに間違いはございませんので、深くお詫び申し上げます》

 3月28日、自身のツイッターに謝罪文を掲載した俳優の木下ほうか。

「3月23日、『文春オンライン』で複数の若手女優に性行為を強要していた過去が報じられました。木下さんは報道について《概ね間違っておりません》としながらも“記憶にない”という表現を連発。芸能活動は無期限休止するとしていますが、ネット上では批判が殺到しています」(スポーツ紙記者)

DMで《オヒサ!》《飲むかぁ~久々に》

 映画監督の榊英雄による“性加害”が報じられ、続けざまに明るみになった木下の蛮行。しかし、映画界に蔓延(はびこ)る闇はそれだけではなく、『週刊女性』4月19日号では世界的な映画監督の園子温による卑劣な行為を報じている。

 そんな悪しき風習が次々と白日の下に晒(さら)される中、『週刊女性』編集部に、ある女性からの新たな告発が届いた。

「忘れることはできません。木下は7年前、抵抗する私を無理やり犯したんです……」

 被害を訴えるのは、当時20代前半で芸能活動を行っていた女性・Sさん。現在も被害の記憶に苦しむ彼女は、『週刊女性』編集部が直接の取材を申し込むと、女性記者と自身の夫を同伴する形でなら、という条件付きで取材に応じ、小さく震えながらその口を開いた。

「木下と知り合ったのは、'13年のこと。彼が出演する作品での共演がきっかけでした。スタッフさんも交えて何度か食事に行ったんですが、木下は明らかに私を異性として見ているような態度をとってきて……。以降も食事に誘われたんですが、断るようにしていました」

 その後連絡は途絶えたが、2年後の'15年7月、木下からメッセージが。

「ツイッターのDMで《オヒサ!》《飲むかぁ~久々に》と連絡が来ました。2人で会うことは避けていたんですが、私はそのころタレントとしての方向性や将来に悩んでいて……。誘いを断るなど、失礼な態度をとってしまっていたという思いもあり、3か月後の10月14日、相談に乗ってもらおうと今度は私から連絡しました」(Sさん、以下同)

 木下からはすぐに返信があり、翌15日の夜、食事を共にすることとなった。

木下ほうかとSさんのLINEでのやりとり

「食事の際、芸能活動について相談したら“事務所を紹介してあげる”“俺がキャスティングして売れた子もいる”と。そのときは、相談してよかったと思っていました」

 数々の作品に出演する木下を信頼したSさん。この時点では“優しい先輩”だった。

「午後11時ごろ、食事を終えて私が帰ろうとすると“飲み足りないからもう1軒、居酒屋かバーに行こう。帰りの足は気にしなくていいから”と。相談に乗ってくれていたし“タクシーで送ってくれるなら”と思い、もう1杯だけ付き合うことにしたんです」

木下の出した酒を飲むと急に身体に異変が

 タクシーに乗り込んだ2人だったが、ここから木下の様子がおかしくなった。

「運転手さんに“〇〇へ”と地名を告げたので、行きつけの店があるのかなと思ったんです。ところが、木下はコンビニの前でタクシーを停めて……。私が不思議そうにしていると“近くに稽古場があるから、そこで飲みなおそう”と。戸惑っていると、“稽古場を紹介したい”“稽古場もバーも変わらない”と言ってきて……。最初から、お店に行かないことは決まっていたような振る舞いでした」

 Sさんは動揺したが“もしかすると、今後その稽古場で演技を指導してくれるのかもしれない。そのための紹介だったら、不信感を抱いて断るのは失礼になってしまう”と考え、木下の稽古場に向かうことを受け入れたという。

「“じゃあ、お茶を飲んですぐに帰ります”と伝えて、コンビニの棚からジャスミンティーを手に取りました。しかし、木下はワインを手に取り、私にもお酒やおつまみを選ぶよう指示してきて……。断ることができず、“一杯だけ飲んだら帰ります”と伝えて、アルコール度数の低いカクテル1本とおつまみを選びました。過去の経験から、その程度のお酒なら、人前で酩酊するようなことはないという確信もありました」

 その後、待たせていたタクシーに再度乗車すると、1分も経たないうちに“稽古場”に到着した。しかし、そこはSさんの想像とは大きく異なり……。

「着いたのは、ただの古いアパートの一室のような場所でした。中に入ると“そこに座ってなよ”と部屋の隅にあるソファベッドに案内されました。木下は購入したお酒を取り出し、キッチンで私に背を向ける形で見えないようにコップに注いで……。なぜか時間がかかっていて、一瞬不思議に思いました。そもそも私が買ったカクテルは、ボトルから直接飲めるものですし……」

 違和感を感じたSさんだったが、早くその場を出ようと考え、「これを飲んだら帰ります」と念押ししたうえで木下が用意した酒を口に運んだ。身体に異変が生じたのは、その5分ほど後だったという。

「突然、平衡感覚を失ったような感覚に陥り、吐き気を催して身体が鉛のように重くなりました。木下はそんな私を見ても慌てる様子なく、私を横になるよう促してソファベッドを広げました」

 Sさんが言われるがまま横になっていると、木下は驚きの行動に出た。

「急に抱きつかれ、強引にキスをされました。ショックのあまり泣いて抵抗しましたが、木下は“キス、へたくそか?”と面白がるような態度で……。私は逃げるような思いでトイレに駆け込み、体調の悪さから嘔吐してしまいました。

 少し状態が落ち着いてから、早く部屋を出ようとトイレのドアを開けると、電気が消えていて……。待ち受けていた木下は、私のズボンを脱がせてきました。必死に抵抗したんですが、力づくで下着ごと脱がされ……。ベッドの上に私を押し倒すと、馬乗りになって抵抗できない状態にしたうえで、陰部に指を入れたり舐めたりしてきたんです」

 メディアに出演する俳優として、にわかには信じがたい行為。Sさんが抵抗を続けても、態度は変わらず……。

「泣き叫びながら抵抗しましたが、木下は“泣かないでよ。泣くと萎(な)えちゃうじゃない”などと言いながら、性器を挿入しようとしてきて……。止めるよう懇願すると“射精しないから大丈夫”と。できるだけの抵抗を続けると“分かった、着けるよ”と言い、馬乗りのままゴソゴソと何かを取り出しました。このとき避妊具を着用したのでしょうが、私は避妊すれば挿入していいと認めたわけではありません……」

 その後木下は挿入を続けたが、Sさんの必死の抵抗を受けて、最終的には性交を中断したという。

「あまりに暴れて抵抗したからか“俺も萎えちゃった”と言って途中で止めました。私は急いで服を着ましたが、体調が悪く、倒れ込むように眠ってしまって……。目を覚ましたのは、翌日の朝のことでした」

法的措置に対して木下は……

 すぐにでもその場を離れたかったが、正確な場所が分からなかったSさんは木下の言葉に従いタクシーに同乗し、駅から電車で帰宅したという。

「正直、精神的なショックや怒り、不信感でいっぱいでした。でも、そういう感情を露(あら)わにした連絡を送ってしまうと、木下は返事をしないだろうと思ったんです。まずはそれまで通り調子のいい雰囲気で連絡を取り、徐々に被害内容に話題を移せば、木下も事実を認めて誠意ある対応をしてくれるんじゃないかと」

 食事を共にしたことへの挨拶から始まり、だんだんと当日の行為に話を移した。しかし、木下の対応は誠意あるというにはほど遠いものだった。

「後で病院に通って“膣炎”と判明したんですが、膀胱炎のような症状があったから木下に伝えたんです。そのうえで《なんで抵抗したのにむりやりエッチしたんですか》と尋ねると《…めっちゃ嫌われたの?》と。罪の意識のかけらもないんだなと、呆れました……」

 その後も、妊娠への不安を示すSさんに対し《着けてる》《ゴミは今朝処分した》などと取り合う姿勢を全く見せなかった木下。しかし、Sさんが知人に相談することを告げると、態度が一変した。

「以前交際していた男性が芸能活動をしていたので、相談しようと思ったんです。そのことを告げると、突然《今回は、本当にごめんなさい》《明日にでも謝罪させてくれませんか?》《お願いしますどこでも行きます!!》と……。ただ、私はその時点で木下に対して強い不信感を抱いていたので、弁護士に相談の上、過去の事例に基づく金額の慰謝料を算出してもらい、同年の10月28日、木下が所属していた事務所宛で損害賠償を請求しました」

精神科医によるSさんの“外傷後ストレス障害”(PTSD)の診断書

 自身が受けた被害内容に基づき、法的な措置に出たSさん。しかし、木下側の対応は予想に反するもので……。

「11月10日、木下の代理人を通して返答の通知書が届きました。内容は《性行為は、両名間の合意のもとに行なわれた》《損害賠償(慰謝料)請求には応じられません》というもの。言葉も出ませんでした……」

 『週刊女性』編集部が確認した内容によると、たしかに木下側は《雑談を交わしているうちに、互いに顔を寄せ合ってキスを交わし、自然の流れで、性行為に至りました》と合意の上での性行為だったと主張している。

「あり得ません。馬乗りになって、私が泣いて抵抗しているのに行為に至ったんですよ? それでも木下側はいっさい主張を変えなかったので、11月26日、強姦罪での刑事告訴に踏み切ったんです」

 事実に基づく対話が叶わないことを鑑(かんが)みて、弁護士と共に告訴状を作成。警察に向かったが、Sさんを待ち受けていたのは非情な対応だった。

「聞き取り調査に応じたんですが“身体に傷がない”“犯行現場の正確な情報がない”といった理由から、証拠不十分であるとして告訴状は受理されず、捜査してもらうことすら叶いませんでした。以降、告訴状は取り下げていないものの、ずっと泣き寝入りの状態で……。そんな中、今回の報道があって。同じ被害にあった方々の勇気ある告白を目にして、私も真実を明かすことにしました」

 Sさんは、心配そうに見守る夫の隣でときおり涙を浮かべながら、辛い胸の内を明かした。彼女は当時の記憶が原因で精神科から“外傷後ストレス障害”と診断され、現在も苦しみ続けている。

被害者はほかにもたくさんいる

 Sさんの言葉が事実なら、木下の行いはれっきとした犯罪にあたる。通知書でのやり取りについて、木下が当時所属していた事務所に問い合わせると、代表を務める男性が取材に応じた。

「通知書が弊社に届いたのは事実です。木下からは、通知書が届く前から相談を受けておりました。“顔見知りの女性で何度か食事をすることがあり、食事の後にそういった行為に至りましたが、《薬物を使用した》《無理矢理に行為に至った》という事実はありません”とのことでした。

 私としましては、彼の言葉を最大限信じて、弁護士を紹介したという流れです。この取材を受ける前に木下本人に連絡をしたところ“ご迷惑をおかけします”との返答はありました」

 木下の現状については、言葉を詰まらせながらこう語る。

「本当に、悲しいです。いろんな人から“大丈夫ですか?”と聞かれますが、7年か8年は一緒に苦労してきましたので……複雑でございます。すみません、こんなことくらいしか、私からはお答えできないのですが……」(木下が所属していた事務所の代表)

 かつての恩師も胸を痛める、木下の性加害トラブルを巡った報道。Sさんの言葉について、木下本人はどう考えているのか。4月上旬、木下に電話で事実確認の取材を申し込んだところ、代理人を通じて書面での回答があった。

Sさんが弁護士とともに作成した告訴状。木下ほうかの罪名には“強姦”の文字があるが、証拠不十分で受理されず警察も動かなかった

 返答としては、あくまで木下の認識では、Sさんの主張が事実と反するという考えに変わりはない。しかしながら、彼女が当時の記憶により現在も苦しみ続けていることに関しては、

《結果として被害女性を傷つけてしまったことに対しましては深く反省しております》

 との回答だった。

「結局、強姦の事実を認めず、すべて私のせいにして逃げ切った。当時と何も変わらないと思います。でも当時と違うのは、この事実が記事として掲載していただけること。泣き寝入りの日々だったので、本当にありがたく思います」(Sさん、以下同)

 木下が発表した謝罪文については、こう語る。

「ほかの被害者の方々に対しても、中途半端な謝罪だけして、芯の部分は認めていない。本当に不誠実な対応だと思いました。同意の上だったことにし、うまく逃げようとしていて不快極まりないです。メディアでは、もう二度と顔も名前も見たくない。怖くてテレビも観られなくなったし、この7年間フラッシュバックでどれほど苦しんでいたか……。“魂の殺人”という言葉通りで、今もまだその苦しみは続いています

 被害当時、Sさんはこんな話も聞いていた。

「きっとまだ、名乗り出ていない被害者の方はたくさんいるはず。当時、ほかにも被害者がいないか調べてくれと弁護士から言われた際、関係者に聞いて回ったところ“いますぐ結託するのは難しいが、被害者はほかにもたくさんいる”という情報を耳にしました。いったい、何人の魂を殺してきたのか……。

 罪の意識がまるで感じられませんが、これは犯罪です。繰り返される前に、警察に捕まってほしい。私が被害にあった当時の衣類は、すべて警察に提出してあります。時間は、止まったままです」(Sさん)

 被害者による告発が相次ぐ性加害トラブル。事実として、何年経とうと癒えない心の傷に現在も悩む人がいる。またSさんのように、当事者だけでなく、その周りにいる人たちまでもが苦しめられているケースも多い。“認識の違い”では済まされない行為は、加害者がその“認識”を改めない限りなくならないだろう。