大阪府は新型コロナ第6波がまだ収まらぬ4月22日現在も、感染者数は東京に次いで2位、死亡者数は全国ワーストと依然として深刻な状態が続いている。病床使用率は2月9日には81%に達したものの、4月11日には26%と多少の落ち着きを見せている。
そんな中、苦難にあえいでいるのが、大阪府内の飲食店だ。度重なる緊急事態宣言、まん延防止等重点措置による時短営業と酒類提供の自粛要請、そして会食の人数制限……。まん延防止等重点措置は解除されたとはいえ、この記事が公開される22日はいまだ「集中警戒期間」であり、会食時間は2時間程度まで、感染対策を認証した飲食店では「同一テーブル4人以内」での利用が求められている。
いま、大阪の飲食店はどうなっているのだろうか。火鍋でおなじみの『小肥羊(シャオフェイヤン)』を全国20店舗、大阪府内で2店舗運営する株式会社小肥羊ジャパンの人事広報部吉田さん、そして『屋台居酒屋 大阪 満マル』を全国59店舗、大阪府内で36店舗運営する株式会社イートファクトリーホールディングス 山口功社長、そして大阪市浪速区内で小さな居酒屋を営む萩原さん(仮名)が取材に応じてくれた。
飲食店に続く打撃、そんな中で条例による「原則禁煙」努力義務が
「この第6波での1月2月は、2019年比では5割から6割減、2020年比では4割から5割減少しています。以前と比べて団体様の来店が激減しており、全体的にも1組当たりの人数が減少しております」(小肥羊ジャパン 吉田さん)
「『まん防』が解かれてから期待をしていたのですが、予想より戻りが遅い気がします。人手不足なのでフル営業ができていないのも直接の原因かなと思います」(イートファクトリーホールディングス山口社長)
「時短協力金と昔からの馴染みのお客様のおかげでなんとか持っている状態です。人の出がかなり減っているのでふらっと入るお客さんはほとんどいないですね。周りの店もどんどん廃業してしまってね」(居酒屋を営む萩原さん)
長い間の時短生活に慣れて「長居」をあまりしなくなった人々。さらに飲み会の人数制限などもあり、飲食店を取り巻く環境はさらに厳しくなっているようだ。
そんな中、この4月1日より、大阪府受動喫煙防止条例の「従業員を雇用する飲食店への原則屋内禁煙(努力義務)」が始まった。この条例は2019年3月に制定されたもので、2022年4月1日より、従業員を雇用する飲食店への原則屋内禁煙(努力義務)が適用され、2025年4月1日より、客席面積が 30 ㎡を超える飲食店は、原則屋内禁煙(罰則適用)となる。
こちらの措置への対応はどうなのだろうか。
「2020年の4月より当社の店舗は全面禁煙にしておりました。同時に店内に喫煙所を設ける事もして参りましたのでこの4月から特に取った措置はありません」(イートファクトリーホールディングス山口社長)
「2020年4月より大阪含め、全店舗禁煙としているため、今回は特に変更や対策はしておりません。梅田、天満橋の店舗は商業施設に入っているため施設に喫煙所が設けられています」(小肥羊ジャパン 吉田さん)
2年前の2020年4月に受動喫煙の防止を目的とした「改正健康増進法」が全面施行されており、大手の飲食チェーンはその時点で店内を全面禁煙にしたり、喫煙室を設けるなどの手を打っているという状況がある。しかし、中小はそうも行かない。
「ウチは法律で決められていた資本金5000万以上、客席面積も100平方メートル以上もないので、2020年の時点では禁煙にしなくても良かった。だから厚生労働省が決めた標識を付けて喫煙可にしていました。スモーカーもノンスモーカーもワイワイやる店だったからね。でもこの4月からはさすがに全面禁煙にしましたよ。狭い店ですし、ただでさえコロナで打撃を受けているので喫煙所を作る予算はありませんからね」(居酒屋を営む萩原さん)
「喫煙客の常連は離れた」
飲食店への禁煙の流れでお客の入り、売上に影響はあったのだろうか。
「施行初期はたばこが吸えないと帰るお客様も多かったし、クレームもかなり上がってきていました。しかし、今はゼロです。社会的な流れとしては当然の話かなと思います。新しい客層を取り込むこともできるのではと考えています」(イートファクトリーホールディングス山口社長)
「2020年4月より禁煙いたしましたが、当初は禁煙であるならば行かないなど、予約時にお断りをされることが多かったです。現在は禁煙ということを認知されているので、お客様の入りに変動はないかと見立てております」(小肥羊ジャパン 吉田さん)
大手飲食店の経営に携わるお二人は受動喫煙防止の流れに前向きであったり、世間への浸透を感じているようだが、個人店を営む萩原さんはそうではないようだ。
「せっかく来てくれたお客さんもたばこ吸えないってわかると入ってこないし、常連さんも一部離れて行きました。ウチみたいな小さい店は、酒も飲んでもらってたばこも吸ってもらってで商売やってきたんですよ。ただでさえコロナで厳しいので少しは行政も考えてもらいたいですね」(居酒屋を営む萩原さん)
萩原さんによると、改正健康増進法の全面施行とコロナ禍が重なった2020年4月以降は路上飲みと路上喫煙、またその両方も増え、たばこのポイ捨ても目立つようになったという。
大阪では、松井市長により、市内全域を路上喫煙禁止地区とする方針も明らかになり、大阪は受動喫煙防止への動きを一層強めている。これは2025年の大阪万博を見据えての措置といわれている。
「規制を受ける一方」飲食店・スモーカーへの配慮は十分か
飲食店への禁煙の流れは、コロナ禍など気配もなかったころに決められたもの。難しい問題ではあるが、萩原さんのような中小の業者やその店を“宿り木”のように使っていたスモーカーへの配慮も求められるところではある。“締め出す”一方では、路上喫煙やポイ捨てなど街の景観が損なわれる部分もある。
受動喫煙防止条例議決時にも「規制対象となる飲食店に十分な財政的・技術的支援を行う」「公衆喫煙所や屋外喫煙場所等の整備を積極的に行う」といった“受け皿”的な措置である附帯決議があったが、これは府条例による影響を危惧した府民等からの声に後押しされて決議された側面が大きい。
また、国と大阪府独自の飲食店の分煙助成金(最大300万円の工事費用総額の3/4にあたる額)もあるが、自己負担が生じる以上、萩原さんのように綱渡りで経営している個人店には十分かどうかはわからないものだ。
「なんにもないよりはマシですが、ウチみたいな小さい店に喫煙所を作るったってね、席をつぶさないと作れないんですよ。つまり、収入がそのまま減っちゃうわけ。それに、助成金ったって全額が出るわけじゃない。家族を養えるほどの金が飛んでいくんです」(居酒屋を営む萩原さん)
大手飲食店では、受動喫煙防止条例はファミリー層などの取り込みなど、明るいきっかけになるという期待も含まれているが、街の文化を彩ってきた小さな個人店はさらに大きな打撃を受けることになる。
この数年間の新型コロナウイルスという健康問題で、飲食店は危機にさらされ続けてきた。第7波の兆候があるともいわれているが、コロナ蔓延から既に2年以上が経過し、「自粛、自粛一辺倒では世の中持たない」という声も多い。withコロナ時代、つまりうまく経済を回しながらコロナをコントロールしていくことが求められている。
大阪は日本第二の都市で、“天下の台所”といわれてきた場所。喫煙であれば、吸う人・吸わない人の共存できる道を模索し、またwithコロナであれば、飲食店の灯りを消さないように健康問題と経済のバランスをとった実効性ある施策、大規模自治体としてのモデルケース作りも求められているといえよう。
屋台居酒屋 大阪 満マル
めざすのは、大衆酒場の風情を残す ザ・居酒屋ですが、お出しする料理は、職人がひとつひとつ手間ひまかけて調理しています。あらゆる客層のニーズに応える200品に及ぶ商品をラインナップし中心価格帯は100円〜390円に設定しています。また、終日の通し営業を採用。「フラっと立ち寄り、サクっと飲み食い、ゴッツー美味いのに、メッチャ安い!」そんな声がどこからともなく聞こえて来る店作りを進めてまいります。
URL:https://www.eat-factory.com/
中国火鍋専門店 小肥羊(しゃおふぇいやん)
小肥羊の火鍋スープは数十種類の漢方食材から醸し出される豊かな香りと旨味が特徴です。この火鍋スープを作れるのは、「鍋師」の称号を与えられた者だけ。門外不出、秘伝のレシピで作られた火鍋スープは、肉類をよりジューシーに、海鮮はより味わい深く仕上げます。ぜひ一度、痺れる辛さの麻辣(マーラー)と、まろやかな白湯(パイタン)の2色のスープをお楽しみください。全国20店舗、お近くの小肥羊へお越しください。
URL:https://hinabe.net/