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 生徒や保護者にとって、新学期の大イベントといえば「クラス替え」。しかし、それらに頭を悩ます先生も多いよう。いったい、どのようにクラスは決められているのか? 先生たちの本音はーー。ノンフィクションライター・大塚玲子さんが先生たちに取材しました。

 今月は我が子のクラス替えがあり、子どもといっしょにドキドキした保護者も多かったかもしれません。

 クラス替えは子どもや親にとって「運任せ」のビッグイベントですが、一方、先生たちにとっては真逆です。多くの学校では先生たちが秋頃から準備を始め、「ああでもない、こうでもない」とさんざん頭を悩ませて、クラス編成をしているのだとか。

 先生たちは一体どんなふうに、子どもたちのクラスを決めているのか? 今回、神奈川県と長野県の小・中学校に勤務する3人の先生に、「クラス編成・ウラ話」を教えてもらいました。

学力、運動能力が偏らないように

 クラス編成には、大きく分けると2つの段階があるといいます。まずは「子どもたちの成績(学力)が平均的に散らばるように、おおまかにクラス分けをする」と話すのは、神奈川県の小学校に勤めるN先生(50代)です。その次に、子ども同士の相性など細かい要素を考えながら、パズルのように組み替えて細かい調整をしていくのが恒例だそう。

「運動能力」についても、バランスを考慮しています。H先生(20代・長野県)が勤務する中学校は「1学年2クラス」なので、特に注意が必要だとのこと。力が偏ると、クラス対抗で競技をしたときに「毎回どちらかのクラスばかりが勝つ」ことになりかねません。それでは子どもたちがやる気をなくしてしまうので、避けたいところです。

 さらに、合唱祭の伴奏などを想定して「ピアノを弾ける子」が各クラスに散らばるようにする、というのも、先生たちが共通して口にしたポイントでした。

 なお、N先生の小学校(神奈川県)は毎年クラス替えをしていますが、H先生が勤務する中学校(長野県)は、3年間クラス替えがないのだそう。そのため、入学時のクラス編成に「子どもたちの3年間の学校生活がのしかかる」ことになり、担当の先生たちの「プレッシャーが大きい」ということです。

 毎年クラス替えをするのも手間が増えて大変そうですが、N先生は「子ども同士の相性や、子どもと担任の相性もあるので、単年度のほうがいいと思う」とのこと。

 確かに、なじまないクラスに当たってしまう可能性を考えると、子どもや親にとっても、毎年クラスが替わるほうがよさそうです。どのやり方にも、一長一短があるのでしょう。

保護者の「希望」を先に聞くスタイル

 クラス替えの際、成績等の次に考慮されるのは「子ども同士の相性」です。先生たちとしても、クラスで「いじめ」が起きるのは、最も避けたいこと。「この子とこの子は喧嘩しちゃうから、別のクラスにしよう」といったことを考えながら、仮組みしたクラス編成に手を入れていくのだそうです。

 最近は、親が「うちの子を、あの子と同じクラスにしないでほしい」などと要望するケースもあると聞きますが、実際にはどうなのか尋ねてみたところ、やはり「ある」とのこと。N先生の学校では、先生のほうから「言ってください」と伝えているといいます。

「クラス替えに配慮事項がある方は、面談の際に言ってください、とあらかじめ伝えています。希望通りにできるかどうかはわかりませんが、参考にさせてもらいます、ということで。そうするとやはり、希望をいただく親御さんはいますが、『必ずこうしてほしい』と強く要望してくる方は、全体の1割もいません」

 親の要望をクラス編成に反映させるのも手間でしょうが、クラス替えをしてから子ども同士のトラブルが起きたら大変ですし、保護者も納得しないでしょう。それならむしろ先に情報を得て、手を打っておくほうが、あとあとスムーズかもしれません。

 ほかにも、考慮すべきポイントはいろいろとあるようです。神奈川県の中学校教員・G先生によると、年度や担当の先生によっても、こだわりポイントや度合いは異なるのだそう。

「たとえば『去年1組だった子が、このクラスには何人いる』というふうに、前クラスからの生徒数の数合わせをすることもありますし、『各クラスから〇〇委員が出るように』といったことまで先読みして、クラスの割り振りをしている年もあります」

 なお、クラス替えをどの先生が担当するかは、学校や地域によって異なるようです。たとえばH先生が勤務する長野県の中学校では、1年生のクラス編成は、1学年上の先生たちが担当するのが慣例だそう。前年の秋頃から小学校の先生たちとやりとりをして、入学予定の子どもたちに関する情報を集め、翌年度のクラス編成を始めるのだということです。

「地方ならでは」の注意点も…

 もう一つ、クラス替えのときに先生たちが頭を悩ませるポイントがあります。それは「保護者と担任」や「保護者同士の相性」です。

 保護者としても、相性の良くない先生が子どもの担任になることは避けたいも
のですが、先生も人間ですから、同様に感じるのは不思議ではありません。なかには、いくら頑張ってもその努力が通じない保護者もいるので、クラス替えは先生にとっても大ごとのようです。

 さらに「地方の学校ならではの悩みもある」と話すのは、長野県のH先生です。

「この辺りだと、イトコやハトコなど親せき同士が同学年にいることが多いのですが、これも同じクラスにならないように調整します。田舎になるほど、親せきやご近所などの人間関係も濃密になるので、いろいろと気を付けることが出てくるんです(苦笑)」

 なるほど。先生たちはこんなふうに、我々の想像以上に多くの要素を考えあわせて、子どもたちのクラス編成を考えてくれているのでした。「先生たち、大変だね……」というのが、筆者の率直な感想です。

 でも、だからといって「保護者は先生の手間を増やさないように、クラス替えの要望があっても黙っているべき」とも思いません。子どもから先生に言えない事情がある場合は、やはり保護者が代わりに伝える必要があるのではないかな、と思います。

 先生も保護者も、お互いに「言われなければ気が付かないこと」はあるでしょう。できるだけ風通しよく、前向きな情報共有をしていきたいものです。

大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)、『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

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