西ゆり子 ドラマスタイリストとして活躍するほか、バラエティー・歌番組・CMとジャンルを問わずに活動。個人向けに、理論と実践で「着る力」を学べるスタイリングレッスンも展開。

 年を重ねるにつれて「ファッションが楽しめない」「何を着たらいいのかわからない」と感じる女性が多い。

「そんな大人の女性こそ、服を着ることを楽しんでほしい」とは長年スタイリストとして第一線で活躍する西ゆり子さん。

「おしゃれはとびきりのサプリメント。憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれますよ」と話す。

服には着る人の人生を輝かせるパワーがある

NHK『あさイチ』に登場した際には、真っ赤なカーディガンに花柄のタイトスカート、赤いヒールと、年齢を感じさせない生き生きとしたファッションが大きな話題を呼んだ

 西さんは数々のヒットドラマでヒロインの衣装をスタイリング。45年以上この仕事をしてきて、つくづく感じるのは“服にはパワーが秘められている”ということ。

「女優のオーラと服のパワーがひとつに溶け合ったときは圧巻。それぞれのパワーが倍増し、驚くほど輝きます」(西さん、以下同)

 例えば『セシルのもくろみ』('17年、フジテレビ系)というドラマで、ファッション編集部デスクを演じた板谷由夏さんには、普通の女性では着こなせない柄物トップスに柄物スカートという組み合わせをスタイリングした。

「柄を着こなせる強い女性という思いを託しました。服に負けない存在感ある演技は、見た方ならうなずいていただけるはず」

 また『家売るオンナの逆襲』('19年、日本テレビ系)でヒロインを演じた北川景子さんには、赤のロングコートに黒と黄色のスヌードを合わせ、色鮮やかな衣装に。天才肌で豪快なヒロインとして輝きを放った。

「ファッションは役柄や人間性をわかりやすく表現するもの。それは女優だけでなく、人生というドラマを生きる一般の方も同じ!」

 自分に何が似合うのかわからないという人は“手に取ってワクワクするもの”を、まずは着てみてほしいと西さん。

「赤い服は着たことないけど、このニュアンスの赤はきれいだな……と思ったら、思い切って買っちゃって。自分が惚れ込んだ服を着ていると、『私ってすてき!』とテンションが上がるはず

自分の人生を表現しよう

西ゆり子

 加齢やコロナ禍で気分が落ちている今こそ、服のパワーが必要なのだ。

 「色合わせ、体形とのマッチなどあれこれ悩むことでおしゃれの感覚が鋭くなっていきます。少しずつでもクローゼットに心ときめく服が並び始めたら、見るたびにすごくワクワクします」

 特に年をとってからの服選びは、自分の人生を表現するためのものだ。

「大事なのは未来に向けて、前向きに“着ることを楽しむ”。なんとなくだけじゃつまらない! あなたというヒロインを輝かせる服探しを、ぜひ楽しんでください

人生輝く!西さんのおしゃれ格言12

 自分の個性に合った服を着ると顔つきが明るくなって生き方までもが前向きに。

1. “服”と“心”は密接な関係

 50代のころ、一時、暗い色の服ばかりを着ていたら徐々に気力がダウン……。コレではいけないと、再び元気が出る色やデザインの服を着るように。すると、たちまちパワーがみなぎってきたのです。年齢とともに体力や気力がダウンしていくからこそ、アドレナリンを注入してくれるビビッドカラーの服が必要です。

2. 洋服は“毎日、考えて着る”こと

ピンクのパンツに、赤のニットで一気にテンションアップ!白を差し色にすればスッキリ

 その日に着る服を選ぶことは“今日の自分をプロデュースする”こと。何をするのか、誰と過ごすのか、そのために何を着たら楽しいのか。毎朝考えることで、感性も磨かれます。年をとっても感性だけはシュッととぎすまされていたいものね。

3. 50歳からはおしゃれの第二幕

 家庭や仕事での役割が一段落。自分を見つめる余裕ができ、この先の人生について考え始めるタイミングが“50歳”。これからの人生の主役は私と自分に言い聞かせて、気になっていたブランドの服を手に取ってみたり、新しい小物を身に着けるなどして殻を破って。

4. 似合わないと思っても3回は着てみる

 初めて挑戦した服で、「やっぱり似合わない?」と1回目は違和感を覚えても大丈夫。2回目には抵抗感が薄れて、3回目には「似合ってる?」と前向きに思えることがよくあるからです。見慣れてしまえば「似合わない」なんてないのです。

5. 好きな服は似合う服

「好きな服が自分に似合うとは限らない」と心配される方がいます。でも私の経験からいって、好きな服に、似合う似合わないはありません。「似合う、似合わない」の固定観念は不要で“好きだから着る”でよし!

6. くつろぎ服こそ自分のために

派手なパンツには、トップスも品よく派手に!着回しなんて気にしなくても「好き×好き」で合わせよう

 コロナ禍となってホームウエアを見直しました。おしゃれをして出かけることもできず、ここで手を抜いたら何の楽しみもない。日ごろは着ないような色柄の服など、自分が楽しくなる部屋着を選んでみましょう!

7. 手持ちのアイテムと合うかで、服を選ばない

 便利で着回しがきくというのは、その服が凡庸で無難な証拠。せっかく買うなら着回しよりもトキメキを優先すべし。お金を出して買ったかいがあるというものです。

8. 服にはパワーがある

 素材や縫製の悪い服ではパワーも半減。ファストファッションもいいけれど、服からパワーをもらいたいときは、自分にとって少しだけ背伸びした価格のものをチョイスして。あなたを一段上のステージに引き上げてくれます。

9. 10年後の自分をイメージして服を選ぶ

「まだバリバリ働いている」「のんびり余暇を楽しんでいる」……どんなところでどんな服を着ている姿が浮かびますか? 未来の自分をイメージすれば、今選ぶべき服が見えてくるはず。ちなみに私は80歳になったら、ゆったりとしたワンピースを着ようと思っています。エレガントで仕事場でもなじむと思うから。今からいろいろ目星をつけて、新しい服を着た自分に出会えるのを楽しみにしています。

10. 「これでいい」から、「これがいい」へ

 “好きな服を選べ”と言われても思い浮かばないとき。心躍る服はどれ? 今着たいのはどんな服?と、真剣に考えてみます。すると、さびついていたセンサーが、徐々に機能回復!お店に入った瞬間に好きな服が目に飛び込んでくるように。

11. 白は、大人を輝かせる最強カラー

スポーティーな服も、白で統一するとすごく清潔感とエッジのきいたコーデに変身

 白は無難で簡単だと思っている人が多いけど、白は着た人をセンターに押し出す「勝負な色」でもあるんです。シャキッとしたオーラが出るから、勝負時には白い靴がおすすめ。トップスに白を選べば顔色が明るく見え、パンツに白を選べば背筋がシャキッと伸びる。大人世代を輝かせる色なのです。

12. 今しか着られないと思って“攻め”の服を

 私は「来年は着られないだろう」と、毎年自分的に“攻めてる服”を着るようにしています。ショートパンツもノースリーブも今年が最後と思いつつ、実際は20年くらい着てますが(笑)。現在の自分を思い切り輝かせる服を選んで楽しんで。

お話を伺ったのは「西ゆり子」さん
●テレビ番組におけるスタイリストの草分け的存在で、現在もドラマスタイリストとして活躍するほか、バラエティー・歌番組・CMとジャンルを問わずに活動。個人向けに、理論と実践で「着る力」を学べるスタイリングレッスンも展開。

『服を変えれば、人生が変わる』好評発売中。着ることの楽しさから実践テクまでを網羅。ファッションをもっと楽しみたくなる1冊(主婦と生活社刊)。

<取材・文/樫野早苗>