ベッキー('16年)

 4月4日、「日本経済新聞」の朝刊に掲載された、マンガ『月曜日のたわわ』(講談社「ヤングマガジン」/以下、『たわわ』)の全面広告をめぐって、現在SNS上で激しい論争が巻き起こっている。“女子高生を性的に眼差す”という内容のマンガの広告が、新聞に載ったことへの批判が飛び交う中、かつて同紙に掲載されたベッキーの“ヌード広告”が引き合いに出され、「たわわがダメなら、ベッキーの広告もダメなのでは?」と話題になっているというが……。

「たわわ」広告は、同作第4巻の発売をPRするもので、登場人物である女子高生「アイちゃん」のイラストに、「今週も、素敵な一週間になりますように。」という一文が添えられている。

ステレオタイプ助長の危険性

「ヤングマガジン」編集部は、広告掲載意図について、ウェブメディア「コミックナタリー」に、「4月4日は今年の新入社員が最初に迎える月曜日です。不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました」とコメントを寄せていた。

「そもそも同作における『アイちゃん』は、主人公である男性サラリーマンが通勤電車の中で出会った少女で、≪憂鬱な月曜日の朝に無くてはならない癒し≫という存在なのですが、その“癒し”は、彼女の豊満なバストによってもたらされているという描かれ方をしています。

 そんな『たわわ』の広告が新聞に掲載されたことについては、さまざまな観点から批判されており、その主たるものは、男性が未成年女性を性的に眼差し、元気をもらうことを、公共性の高い新聞というメディアが、ある意味“肯定”したという構図への批判です」(ウェブメディア関係者)

「日経新聞」に対しては、UN Women(国連女性機関)の本部が4月11日、抗議を行ったことも明らかに。ウェブメディア「ハフポスト」の取材に応じた日本事務所の石川雅恵所長は、≪「明らかに未成年の女性を男性の性的な対象として描いた漫画の広告を掲載することで、女性にこうした役割を押し付けるステレオタイプの助長につながる危険があります」≫とも述べている。

宝島社が日本経済新聞内の全面広告で出したベッキーの“上裸写真”(ベッキーのインスタグラムより)

「たわわ」広告批判者に対する抗議

「一方で、こうした抗議は、表現の自由を脅かすものだと批判する声も根強い。女性を中心とする一部の人間が自身の“不快感”だけを理由に、表現の自由を規制しようとしていると、警鐘を鳴らしているのです」(同・前)

 そんな『たわわ』広告論争の中、2016年9月29日付の同紙朝刊に掲載された宝島社の広告が、にわかに注目を浴びているという。

上半身裸で、背中をあらわにしたタレント・ベッキーの写真に、『あたらしい服を、さがそう。』というコピーが添えられた広告です。当時、ゲスの極み乙女。のボーカル・川谷絵音との不倫スキャンダルで大バッシングを浴び、活動休止に追い込まれたベッキーが、心機一転、再出発するという意味合いのものでした。

 しかし、医師であり、小説家の知念実希人氏が今になって、この画像と共に、『これ、宝島社が日本経済新聞に出した全面広告なんですけど、現在騒いでいる方々は、このときは何していたんですか?』と、『たわわ』広告の批判者を挑発するようなツイートを投稿したんです。

 これはつまり『たわわ』広告が問題なら、ベッキー広告も問題ではないかという指摘であるとともに、“女性表象の炎上は、いわゆる男性向けマンガやアニメという一部の限られたものばかりだ”という意味合いが含まれるものとみられます。

 知念氏は過去に≪表現規制って、最初はほぼ確実に性的表現を標的にするんですよね。≫とツイートしていることからも、“『たわわ』広告の批判者はきわめて個人的な不快感を規制につなげようとしている”と抗議したのでは」(芸能ライター)

『たわわ』広告を問題視した人たちは、知念氏のツイートにすぐさま反応を示した。

4月4日、日本経済新聞に掲載された『月曜日のたわわ』の全面広告

“禊ヌード”は「ジェンダー不均衡」か

『たわわ』広告が炎上したのは、『性的に強調した未成年女性キャラクターによって、男性が励まされる』といった構図が物議を醸したのであって、ベッキーの広告にはそういった問題点はまったくないといえる。SNS上では、

≪デザインやメッセージ性を読み取らず(読み取れず)肌の露出だけで『何でこれは良くてあれは駄目なの』と≫
≪本当に写真や広告ごとの意図やら読み取れないの?≫
≪問題提起していることをもう一度見直してください≫

 など、知念氏の見識を疑う声が噴出。一方でベッキーの広告に対しては、かつて“禊ヌード”といわれたことを踏まえ、また別の角度から問題点を指摘する声も出ているという。

「女性タレントが何か問題を起こした際、脱ぐ仕事で再出発を図るのは、業界内では、過去の遺物としてとらえられています。しかしベッキーをはじめ、“タピオカ騒動”で世間を騒がせた木下優樹菜が、写真集『CORRECT』(双葉社)で手ブラヌードを披露するなど、今でも“あるにはある”ことですし、世間的には、ヌードになるのは“スキャンダルを起こした罰”と見る向きも強いのではないでしょうか。つまり、現在もジェンダー不均衡の流れはあるのではないかということです」(芸能ジャーナリスト)

 SNSではベッキーの広告に関して、その点への批判が散見され、例えば、

≪不倫した女は罰として脱がされるのか、痛々しい、禊とは?と批判は上がっていたと思う≫
≪これ自体にも当時ヌードの必要性について議論されてたけどな≫

 といった声が上がっている。

「ベッキーは、川谷とは比較にならないほどの制裁を受けたうえでヌードになったということも、ジェンダー不均衡と指摘されていました。『たわわ』広告論争を発端に、過去の広告の問題点が、あらためて議論される流れができつつあるのかもしれません」(同・前)

 昨今、実にさまざまな広告が女性の描き方をめぐって物議を醸しているが、「一過性の炎上にしてはいけないという風潮がある」(同・前)という。『たわわ』広告論争も、継続した議論になっていけばいいのだが……。