Netflix『はじめてのおつかい』。英題は『Old Enough!』(Netflixより)

 日本テレビ系の人気番組『はじめてのおつかい』がこのほどNetflixで配信されたところ(英題『Old Enough!』)、「ジャパニーズ・リアリティ・ショーだ」など、各国で高い反応がみられ、再生数がかなりの数となっていることが話題になった。

「多くの国の人からすると、そもそも小さな子供がおつかいをすること、ましてや1人で行ったり、きょうだいで街を歩くということ自体が衝撃のようです。そんな姿を見るのは初めてだということで、新鮮な感動があるのではないでしょうか」

 と、あるウェブメディア関係者は語る。

『はじめてのおつかい』が海外で人気が出た理由

 あらためて説明の必要はないと思うが、『はじめてのおつかい』は、おもに未就学児の小さな子供が、親や近所の大人から、近くのお店で何かを買ってきてほしい、届け物をしてほしいなどと頼まれ、勇気を出して「おつかい」する姿を放送する、ミッションクリア型のバラエティーだ。

「遠くまで歩いたり、あるときは乗り物にに乗ったり。見ている側も親目線になりハラハラしながら成長を見守る感動する番組ですね」(同関係者)

『はじめてのおつかい』が、海外でも人気を得た理由はいったい何なのか。ある放送作家に聞いた。

「子供の映像は、多くの人が自分たちに重ね合わせることができます。子供が1人で行けるかは別として、おつかいという誰もが経験することを見守ることは、言葉や文化の壁を超えて共通するシチュエーション。またリアリティショーとして見た場合にも、コンセプトがしっかりあり、スタッフが作業員や店員に扮して子供の安全を見守りながら撮影するなど、細かなところまで作り込んでいるよさがあるのだと思います」

 前出のウェブメディア関係者は、世界的にヒットにた日本のドラマをと重ね合わせているのではと分析する。

「かつてNHKの朝ドラ『おしん』が、アジア圏を中心に60か国以上で放送され大人気となったことがありました。あれも小林綾子さん演じた少女時代のけなげな姿が、国境を越えて多くの人の胸をうった。それと重ね合わせられるような気もします」

『たけし城』『料理の鉄人』も大人気

 これまでにも日本のテレビ番組が、アニメ以外でも海外で人気となるケースは少なくない。

『風雲たけし城』(TBS系)は世界150か国以上で放送され、複数の国で“現地版”が制作されたほど。また『SASUKE』(TBS系)は世界160か国以上に広がり、『料理の鉄人』(フジテレビ系)はアメリカで英語吹き替えで放送後、『アイアン・シェフ・アメリカ』という番組を立ち上げた。

『風雲!たけし城』は参加者が難関を攻略して、城主・たけしに迫るゲーム型バラエティーだった

 さらに『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)のコーナーで、人間のあるポーズにくり抜かれた迫りくる壁と、同じポーズをしてすり抜けないとプールに落下する『脳カベ』というコーナーが海外で人気になった。日本版が放送されたあと、現地版でリメイクされ人気番組になったという。

「たけし城や脳カベは、ゲーム性があるのでとても単純で見ていてすぐ面白さが伝わる。料理とおつかいは、国など関係なく誰もが通る道なので感情移入しやすい。大きく分けて、この2つのパターンがウケるのではないでしょうか」(前出・放送作家)

 では逆に、海外で苦戦するであろう日本のバラエティーはどのジャンルになるだろうか。前出の放送作家は次のように分析する。

「日本で人気のあるタレントや芸人の特性に任せた番組はまず難しいですね。日本では視聴者がその人を知っている前提で番組を見ているので、そのまま放送したりフォーマットを売り出しても厳しでしょう」

 しかしトークバラエティーでは言葉の壁が大きく立ちふさがるが、共通して好きなものを語る『アメトーーク』はひょっとしたら……と淡い期待を抱いているという。

 何がウケるかわからないが、もしかしたら大きな鉱脈が日本の膨大なテレビ番組のアーカイブに埋まっているかもしれない。『はじめてのおつかい』の成功例で、各局は過去の財産を掘り起こしているに違いない。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉