毎日目にする多くのCM。そんな中でも強烈な印象を残すものがある。『家庭教師のトライ』のアルプスの少女ハイジのCMもそのうちの一つだろう。放映当初は、国民的アニメをコミカルに編成した内容に驚きの声も上がったが、今ではすっかりおなじみのものとなった。実はあのハイジシリーズ、放映が開始されて今年で10年目という。しかも、その10年で作られたCMは240本以上!
なぜハイジなのか? どのように作られているのか? 気になる著作権問題はーー。人気CMに仲間入りするまでの裏側を聞いた。
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賛否両論、さまざまな反応
まず気になるのが、なぜハイジなのかということ。
「はじめはハイジ以外のアニメも、候補にあがっていたんです」
そう話すのはトライ宣伝部の担当者。その中で、『教えて!トライさん』シリーズにハイジを起用したのにはこんな理由があるという。
「ハイジが大自然の中でおんじに多くのことを教わりながら成長していくという点で、教育との親和性が高いことから『アルプスの少女ハイジ』を選びました。また、トライをご利用いただくお子さまの世代から親御さんまで、幅広い世代に親しまれるアニメで、放送を開始した2012年当時は『親が子どもに見せたいアニメランキング』でNo.1であったこともハイジに決めた理由の1つです」
毎回、ユニークな設定と構成で楽しませてくれるが、世代を越えて人気の国民的アニメなだけに、10年前の放送当時は視聴者から戸惑いの声も上がった。
「『教えて!トライさん』シリーズは10年目に突入しました。開始当初は賛否両論さまざまでしたが、現在では新作の度に大きな反響をいただいています。原作を起用した時点で、それ自体がNGという方も一定数いらっしゃるものだと思いますが、作品に必ずリスペクトの気持ちを持ちながら広告表現を考えるようにしています」
「著作権」について疑問に思う声も多いが、そのあたりについてはどうなっているのだろう。
「権利元の瑞鷹さんとライセンス契約を結んでおり、『教えて!トライさん』シリーズは毎回、瑞鷹さんの許諾を事前に得てから放映しています。瑞鷹さんと一緒に、ハイジの世界観を大切にしながら、CMに限らずLINEスタンプやグッズなどを共同で製作していく中で、一緒にキャラクターの新境地を見つけていけるようになりました」
そのような理解と協力もあり、10年続く長寿CMに。実は、CMを作る上で毎回このように真剣な議論が交わされているとか。
「その時々の親御さんや子どもたちが、どんな学習の悩みを持っていて、いま何を必要としているのか。それに対してトライがどのようなメッセージを届けるべきか、毎回CMのクリエイティブチームと議論して進めています。
その中で意識しているのがトレンドです。飽きられることのないよう旬なトレンドを意識した新しい演出にも挑戦しています」
この春にはハイジのキャラクター・おんじが歌う姿が反響を呼んだ。“うますぎる”歌声に、SNSでは誰が歌っているのか話題に。
「歌っていたのは、シンガーソングライターの松室政哉さんになります。松室さんファンの方々からも大きな反響がありました。新型コロナウイルスの影響で子どもたちにとって厳しい学習環境が続く中、この春のCMを通じて少しでも前向きに頑張ろうと思っていただけることを願いながら、メロディーにもこだわりぬいて作り上げました」
と担当者。ここのところ、トライのCMでは主人公・ハイジよりも“おんじ”やクララの父親である“ゼーゼマン”がメインのキャラクターになりつつあるように思うが、これにもワケが……?
懐かしさ+トレンド
「おんじやゼーゼマンといったキャラクターありきでCMを作るのではなく、まずは私たちがCMで一番伝えたいメッセージや訴求内容と親和性の高いキャラクターは何かということを、新作を作る度に一から検討しています。
『教えて!トライさん』シリーズ開始当初は、親御さん世代に懐かしさを感じていただくために作品の世界観を重視し、ハイジやクララなどのメインキャラクターを中心にCMを制作してきました。
ですがトライのサービスが多様化する中で、メッセージを伝える対象が親御さんだけではなく中高生にも広がっていきました。そのため、その時々のトレンドを取り入れた“目新しい演出”を用いることで子どもから親御さんまで幅広い年代にメッセージが届くよう工夫を凝らしているんです。
最近では、YouTuberのフォーマットを活用したり、お笑い芸人『ミルクボーイ』さんとのコラボなどを取り入れたりしたことでティーン層にも大きな関心をもっていただけたと思います」
ちなみにCM内にはメガネをかけたオリジナルキャラクター「トライさん」も登場する。「トライさん」は学習をサポートする“教育のプロ”としての役割を担う「教育プランナー」がモデルとなっているとのこと。
“ただ面白い”だけじゃない、そこには計算し尽くされた制作側の思いが込められていた。そんな苦労も重ねつつ、こうして10年かけて続けてきたCMは今や“誰もが一度は見たことのある”おなじみのものである。昨年は、なんと『CM好感度ランキング』で第1位に!
「おかげさまで7月、10月、12月に『CM好感度ランキング』のマスコミ・教育部門において第1位に選ばれました。また、今年の3月には全銘柄2,067本のCMの中でTOP10入りも果たしたんです。
長年にわたって『アルプスの少女ハイジ』を起用し続けたことで、CMを見た瞬間に“トライのCMだ!”と認知していただけるようになりました。こうしてシリーズが長く続いているのも、親御さんや子どもたちの悩みに寄り添うことにこだわって、新しい演出にも挑戦しながらCMを制作してきたからこそだと思っています」
今後、どのような新作が待ち受けているのかーー。この先、11年、12年目と続いてほしいものだ。