「このたびはお騒がせしまして、大変申し訳ありませんでした」
4月27日、桂田精一社長(58)の会見は土下座から始まり、そのあと彼はこの言葉を発したのだ。どこか他人事のような謝罪だった……。
23日、未曾有の海難事故が北海道斜里町の知床半島沖で発生した。第1区海上保安本部に、運航会社『知床遊覧船』の26人乗りの観光船『KAZUI』(カズワン)が「浸水している」という通報が入り、そのまま行方不明に。
乗員・乗客26人のうち、14人の遺体が発見
その後、乗員・乗客26人のうち、14人は遺体で発見された。だが、船長を含む残り12人と船体そのものもいまだに見つかっていない。
なぜ最悪の事態が起きてしまったのか。その説明がまったくなされぬまま4日が経った27日、桂田社長はようやく会見を開いたのだ。
荒れた天候が予想された中で出航を許可した理由について、
「船長と、(天候が)荒れたら引き返す“条件付き”で運行となった。こういうことは、何年も前からやっていた」
と説明。安全管理については、
「慣れてきて、緩むような感覚があったのかもしれない。(事故が起きた)原因は……私の至らなさだと感じています。事故の原因も分からない、ということも含めての至らなさ」
謝罪の言葉は並ぶものの、やはり他人事のように聞こえてしまう。
桂田社長が問われる罪
この事故の責任は一体どこにあるのか、海事法律事務所『田川総合法律事務所』の田川俊一弁護士に聞いた。
「ポイントは浸水の原因だと思います。風や波の影響を受けて岩礁に乗り上げて船体が破損したのか、エンジン等が故障したのか。そもそもこの船が出航前から故障していたのか……。そこは船体が発見されないとわからない」
事故当時、運航会社『知床遊覧船』の無線のアンテナは折れており、自社の船である『KAZUI』と無線連絡ができない状態だったという。さらに船に搭載されていた衛星携帯電話も故障していて、運航会社に大きな責任があるように思えるが、
「確かに通信機器の不備は安全管理体制の杜撰さを表してはいますが、今回の事故とは直接は関係ありません。たとえこれらがしっかり機能していたとしても、事故が起きなかったとは言えない。
とはいえ、社長が船長に“条件付き”で運航を許可したことは責任を問われてしかるべきでしょう」(田川弁護士、以下同)
では、桂田社長は今後、刑事責任を問われることになるのだろうか?
「刑事上の過失を問えるかどうかは、極めて難しいと思います。この悲惨な状況を考えると船長は亡くなっている可能性が高く、船体すらも見つかっていない。目撃者もいないですから、社長の過失を問えるような証言や証拠が出てこない。船長は被疑者死亡で不起訴になることもあるでしょう。もちろん社長は、民事上での損害賠償などの責任が問われることはあるでしょうが……」
桂田社長は27日の会見に先だって開かれた遺族への説明会を行っていた。ところが、彼の発言が遺族の気持ちを逆なでしたのであろうか、
「うわべだけの謝罪に見える」
「顔が笑っている!」
などの怒号が飛び交ったという。
一刻も早い乗員・乗客の捜索と原因究明の捜査が待たれる。