渡辺裕之さんと原日出子(2003年)

 またも悲劇が起きてしまった─。5月3日に俳優の渡辺裕之さんが自宅で亡くなっていたのだ。

「死が公表されたのは翌々日の5月5日。妻の原日出子さんがお昼ごはんを作って渡辺さんを呼んでも返事がなく、地下のトレーニングルームに行ったら、そこで首をつって亡くなっていたそうです」(スポーツ紙記者)

 亡くなったとされる地下室は、渡辺さんの趣味が詰まった部屋だったという。

「自宅を建て直したときに、地下室を自分の趣味スペースにしたそうです。そんなに広くはありませんが、トレーニング機材やドラムセットがあり、大画面テレビで映画を見ることができました。渡辺さんは、ここ最近、その部屋にこもっていることが多かったようです」(渡辺さんの友人)

 渡辺さんの自宅は神奈川県の閑静な住宅街にある。

「3日の午後にパトカーが来て、警察官が出入りして不穏な雰囲気でした。泥棒でも入ったのかと思っていましたが、まさか渡辺さんが亡くなっていたとは……」(近所の住民)

 渡辺さんと原が結婚したのは1993年のこと。

「原さんは1981年にNHK朝ドラ『本日も晴天なり』のヒロインでブレイク。人気絶頂の1983年に高校時代の同級生と結婚して1女をもうけるも、1987年に離婚しました。渡辺さんは1982年にデビューし、スポーツで鍛えた身体で肉体派俳優として活躍。『リポビタンD』のCMが有名ですね。ふたりは1990年にドラマで共演して交際が始まりました」(テレビ誌ライター)

近隣住民が目撃した夫婦の姿

 原の娘は当時10歳。子連れ再婚だったが、渡辺さんはわが子のようにかわいがり、後に1男1女が生まれて5人家族となる。

「2001年には『パートナー・オブ・ザ・イヤー』に選ばれました。原さんは2016年に出演した『徹子の部屋』で “キスやハグは当たり前”とアツアツぶりを公言。渡辺さんも折に触れて原さんへの感謝の言葉を述べ、SNSに奥さんの手料理の写真を上げていました」(同・テレビ誌ライター)

 映画でも夫婦役や、一緒にカレールーのCMに出演するなど共演も多数。まさに、おしどり夫婦として有名だったが、近所の人は少し違った印象を抱いていたという。

原さんが近所で買い物をすることはよくありましたが、いつも1人で、夫婦で一緒に歩いているところはあまり見たことがありませんでした」(前出・近所の住民、以下同)

1994年に渡辺裕之さんと再婚した原日出子。ハワイで挙式・披露宴を開いた

 ふたりの生活スタイルは異なっていたようで、

「渡辺さんはお子さんが小さかったころ、庭にプールを作って近所の子どもたちも呼んでくれたり、お祭りに参加して“ファイト一発!”と叫んでくれたりと地元に溶け込んでいました。一方で、原さんは親しい友人とワイン会を開くなどして楽しんでいたようですね」

 渡辺家では、定期的に自宅に友人を呼んでホームパーティーを開いていたのだが、

「朝からテントを張るなどの準備をして夜10時ごろまで行っていたのですが、その常連さんたちが知る限り、積極的に動いていたのは渡辺さんだったようですね」

 おしどり夫婦としてのイメージが先行しがちだが、私生活ではお互いの趣味を尊重し、それぞれで楽しんでいたようだ。

朝5時から1人でゴミ拾い

 渡辺さんは社交的な反面、ストイックな一面もあった。

「子育てに適した環境を求めて都心から自然が多い神奈川の郊外に引っ越したそうですが、近くには車通りの多い幹線道路があって、分離帯へのポイ捨てが横行。それを見かねた渡辺さんは長年朝5時ごろから1人でゴミ拾いをしていました」(別の近所の住民)

 筋肉トレーニングは毎日欠かさず体形をキープ。『リポビタンD』のCMで共演した野村宏伸は、渡辺さんが完璧主義で熱い性格だったと振りかえる。

「海外ロケの撮影はいつもハードでしたが、渡辺さんは撮影スタッフにアイデアを出すなど、リーダーシップを発揮していました。英語も堪能で、身体もガッシリ。そんな頼りがいのある男らしい人だったから、誰にも悩んでいる姿は見せられなかったのかもしれません……」

 渡辺さんと長年交流があったバイク店の店主は、友人の死を悲しみながら普段の人柄を振り返る。

「多趣味で凝り性。カスタムした合計500万円以上のバイクをうちの店内に飾って知人に見せたりしながら、椅子に座って会話を楽しんでいました。僕を含めた知り合いを地方ロケや、テレビ番組の観覧に呼んでくれたり。一度、奥さんをウチの店に連れてきてくれたこともありました」

 最近はコロナ禍の影響で、仕事以外は家にこもりがちだったそう。

「最後に会ったのは去年の10月。コロナで仕事が減ったと愚痴ったら、渡辺さんも仕事が減ってつらいけどお互い頑張ろうと言ってくれたんです。以前、奥さんの話になると“原の話ばっかで俺のファンはいないのか!?”と冗談めかして話していました」(バイク店の店主)

「常に将来の不安があった」

 実際、昨年も渡辺さんの仕事は順調だった。

「ドラマにも定期的に出演していましたし、これから公開されるものを含めて今年は6本の映画に出演。仕事が途切れることはなく、この5月からゴルフ番組でのレギュラー出演が決まっていました」(前出・テレビ誌ライター)

 しかし、以前からお金に関する不安は抱えていたようだ。

「2005年に詐欺事件に巻き込まれ、同時に詐欺をしていた投資会社の広告塔だったと指摘されました。記者会見で事件について質問されると“定収入のない職業で、常に将来の不安があって、その不安がなくなればと思った僕がバカだった”と語っていました」(前出・スポーツ紙記者)

 亡くなる数日前、前出の近所の住民は異変を目撃していた。

自宅の近くで、うつろな目で道端に座り込んでいたり、立ち止まっていたり。今まではそんな姿は見なかったので、様子がおかしいなと思ってました

 誰にも本心を語らず、地下室でひっそりと人生の幕を閉じた渡辺さん。悲しみの声は今も絶えない。


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