知らないと恥をかく葬式マナー。コロナ禍を経て何がどう変わった?話題の「オンライン葬」から通夜や告別式を一切しない「直葬」、増加中の「遺体ホテル」まで最新のお見送り情報をQ&Aで!
コロナで変わった“古いしきたり”
高齢者への配慮などから、参列者を招くことを控えることが多かったコロナ禍での葬儀。以前から都心部では、家族を中心に故人と特別に親しかった少人数だけが集まる「家族葬」が浸透していたが、最近は全国的にも規模を縮小した葬儀が一般化しつつある。
通夜はひと晩じゅうにぎやかに過ごすなどのしきたりがこれまで受け継がれてきた地方でも、通夜や葬儀を簡略化し、ひっそりお別れをする形が多くなっていると葬儀コンサルタントの吉川美津子さんは言う。
「コロナ禍で葬儀の簡素化が地方でも一気に進みました。いったん変わってしまうと、コロナが落ち着いてもこの流れが変わることはないでしょう。また、できるだけ密を避けるため、前日に行う通夜を省き、儀式は葬儀・告別式を1日で済ます「1日葬」というものが、このコロナ禍で増えた印象があります」
「葬儀後の食事」も大きく変化
葬儀の規模が小さくなっている中で食事のスタイルも大きく変化。
以前は火葬場や葬儀場で仕出しをふるまうのが一般的だったが、最近は食事の席を省いた葬儀が多くなり、食事をするにしても会場をレストランなどの個室にして内輪だけで済ませるケースが増えているという。
令和の時代になってますますお金をかけないスタイルに移行している最近の葬儀。いざというときのために遺族側や参列する側が知っておきたい最新の葬儀マナーについて、専門家にQ&A形式で質問をぶつけてみた。
Q.少し落ち着いたけどコロナが心配。オンライン葬があると聞いたけど?
A.直接、顔が見えないオンラインは葬儀になじまないようです
「新しい葬儀スタイルとして、葬儀をインターネットで配信してリモート参列できる『オンライン葬』が一部で話題になりましたが、不特定多数の方が参列する100名規模の葬儀では、私が知る限り一般化しているとはいえません。
葬儀はやはり故人を偲ぶ特別な場所。私も1度オンライン葬に参加したことがありますが、その場の空気を共有できないオンラインの世界は、葬儀になじまないのでしょうね。
ただ、香典が電子決済できたり、記帳がデジタル化したりすることは今後急速に普及するかもしれません」(吉川さん、以下同)
Q.親族とはLINEでやりとり。SNSで訃報を伝えるのはNG?
A.普段からSNSでやりとりをしている相手なら問題ありません
「訃報の連絡は、これまでは電話が主流でしたが、普段からメールやLINEなどで連絡を取り合っている相手なら、それらの通信手段を使ってもかまいません。葬儀をする場合に大切なのは、どんな通信手段を使うかではなく、日時と場所を正確にお伝えすること。FAXを利用するのも問題ありません。
家族葬などの理由で参列を遠慮してもらいたい場合は、葬儀の日時と場所を伝えずに、訃報だけをお伝えするといいでしょう」
Q.諸事情で葬式を安く済ませたいが?
A.儀式の類を一切省いた「直葬」だと費用は抑えられます
「お葬式をもっとも安く済ませるには、どんな方法があるかと聞かれることもあります。費用をなるべく抑えたいのなら、『直葬』というスタイルもあります。
直葬とは、火葬式とも呼ばれていて、通夜や告別式などの儀式を省略し、ご自宅や病院、高齢者施設などお亡くなりになった場所から葬儀場などにご遺体を運んで一定時間(24時間以上)安置して、火葬だけで弔うお葬式のこと。
家族や親戚などごく親しい人だけで執り行われることが多く、出棺や火葬のときに僧侶にお経をあげてもらうケースもあります」
直葬の流れ
(1)病院、自宅、高齢 者施設など
(2)火葬場
一般的な葬儀の流れ
(1)病院、自宅、高齢者施設など
(2)葬儀社や斎場の安置所、自宅などに安置
(3)通夜、葬儀、告別式
(4)火葬場
Q.コロナで十分な看取りができず…心残りのない葬儀ってある?
A.「遺体ホテル」のような安置施設を利用する方法があります
「コロナ禍では、ご家族が病院や施設で、十分な時間を持てないままお別れを迎えるケースが多くありました。どんなに覚悟ができていても、看取りができないのは遺族にとって心残りです。
そんな場合は、ご臨終からお通夜(葬儀なしで済ませる場合は火葬)までの間、葬儀社の式場に併設されている安置室の利用をおすすめします。最近は通称「遺体ホテル」と呼ばれている遺体の安置を専門とする施設もあります。
安置室では故人とゆっくり過ごすことができます。仮眠や軽食をとることができる施設もあり、また、僧侶を呼んでお経を上げてもらったり、ご家族が集まって棺にお花を入れたりすることもできます」
Q.葬儀への参列は遠慮するけど、香典は渡したい。失礼のないお悔やみの仕方は?
A.喪主のご自宅に宛てて現金書留で送りましょう
「コロナ禍ではやむをえず葬儀に参列できず、香典だけを渡したい場合もあったと思います。香典は必ず不祝儀袋に入れて、郵便局の現金書留で送ること。お悔やみと参列できなかったお詫びの手紙を添えると、より丁寧です。
現金書留は日付指定で送ることができません。香典の到着が葬儀に間に合わない場合は、葬儀の2~3日後から1週間を目安に、喪主のご自宅に送るといいでしょう」
Q.老親の知り合いから葬儀の案内状が届いた。親に代わってうまく断る方法を教えて?
A.親の代わりに弔電を送るのがいいでしょう
「長く交流が途絶えている親の知り合いなどから、突然訃報の連絡を受けることもあります。香典をお渡しするほどの間柄ではない場合は、お返しが不要な供物を送るか、弔電を打ってお悔やみと、高齢のため葬儀に出席できないというお詫びの気持ちを親に代わって伝えるといいでしょう。
かつて弔電には、取り急ぎお悔やみの気持ちを伝えるという形式的な意味がありましたが、最近は丁寧なお悔やみツールとして利用されるようになっています。文例も豊富で、お線香やお花とセットになった手頃な価格の弔電も用意されているので積極的に活用しましょう」
老親の代わりに送る弔電の文例
ご逝去の報に接し、母も私も
深い悲しみに暮れています。
本来ならば母が拝眉の上、
お悔やみ申し上げるべきところでございますが、
母も高齢のため、お伺いできないことを
どうぞお許しください。
心からご冥福をお祈りいたします。
Q.葬儀をしないことに。どのタイミングで周りに知らせるべき?
A.四十九日などの法要を済ませてからお知らせするのも手です
「葬儀をしなかったり、家族葬などで簡単に葬儀を済ませ、そのあとで通知状を出して逝去を知人に知らせるという方法があります。
通知状を出すタイミングに決まりはありませんが、家族葬などが終わった直後は役所や銀行への届け出や片づけなどであわただしく、通知状の準備どころではなくなってしまうことも。四十九日の法要や納骨を済ませてから、ご連絡するのもひとつの方法です。
最近は、葬儀を身内だけで済ませ、四十九日法要の代わりに偲ぶ会やお別れ会が開かれることもあります」
Q.一人暮らしだからもしもの時が心配。葬儀社って生前に予約可能?
A.本人が葬儀の手配を済ませておく、生前予約を検討する方が増えています
「離れて暮らす家族や親戚に、いざというときに迷惑をかけたくないからと、生前に自分の葬儀の予約をしようと考える人もいます。生前予約のメリットは、斎場、参列者、遺影の写真、演出、会葬礼状の文面、食事や返礼品の内容などを自分で決められること。葬儀費用の一部を掛け金として払い込んでおく互助会を利用する人もいます。
葬儀の事前相談は無料の場合が多いので、いくつかの葬儀社に相談をして見積もりをとり、検討するといいでしょう」
〈取材・文/村瀬航太〉