義母の介護について、夫の光に頼むも一向に動かないので、夫の親戚に相談したという光代

 誰もがぶち当たる「親の介護と死」。それは女性有名人たちも同じようだ。病老介護を余儀なくされた堀ちえみ、コロナ禍で思うように看取れなかった阿川佐和子ー。葛藤や後悔を語る彼女たちに共通するのは親への感謝と深い愛。ここで紹介するのは、「爆笑問題」太田光の妻・太田光代社長も直面した実母と義母の“同時介護”。光代社長は、介護に関して頼りにならない夫にも頭を悩ませ……。

実母は在宅、義母は施設で

 複数人の同時介護も悩み多き案件だ。お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光の妻であり、事務所社長を務める太田光代が直面したのは、実母と義母の同時介護だった。

 実母が熱中症で倒れて自宅に呼び寄せた矢先、義母が骨折をしてひとり暮らしが難しくなったのだ。夫婦ともにひとりっ子ゆえ、ほかに介護を頼るきょうだいもいない。であれば、両方の親を同時に在宅介護したい気持ちがあったが、周囲の反対もあり、加えて一緒に住むことになる老親同士のストレスも心配されたために断念した。

 すでに実母の在宅介護が始まっていたなか、夫に義母の意思を聞くよう促す。嫁姑関係は良好だったが、実の息子のほうが介護の希望について本音で話せると思ったのだ。

 しかし、待てど暮らせど夫は動かない。やきもきしていると、義母は自ら施設入所を選択し、“施設選び等のすべてを息子の妻の光代に託す”という意思が、主治医を介して知らされた。ほどなく実母は在宅、義母は施設での同時介護が始まる。

 介護に関して頼りにならない夫に対して光代は、「彼は母の老いと正面から向き合うことが怖いのだ」と語っている。

 義母のいる施設には週2回通ったという太田光代。義母の要望だったとはいえ、無理して施設暮らしをしているのではと悩んだ。一方で、在宅介護中の実母に対しても、自宅を離れて慣れない太田夫妻宅に引っ越させたことがよかったのか、自問自答を繰り返した。留守がちな自宅にいるより、義母のように施設のほうが友達ができてよかったのかもしれないとインタビューで思いを打ち明ける。

 しかし、介護者の支援を行っているNPO法人「UPTREE」代表の阿久津美栄子さんは彼女の選択を肯定する。

「介護される親は、“子どもが面倒を見てくれるだろう”と、介護を“お任せ”にしがちです。でも、親自身が具体的にどこで介護を受けたいか、どこで最期を迎えたいかを決断してくれることで、子どもはスムーズに“親が望んだ介護”を選択でき、後々の後悔を軽減できる。光代さんの場合は、要望をきちんと示した義母が素晴らしい。悔やむ必要はないと思います」

 近年、義親と実親の同時介護は珍しいことではなくなり、光代と同じ悩みを抱える人も多い。今の50~60代は昭和1ケタ生まれのように大家族ではないため、自分の親の介護を人任せにできない世代だ。

「太田夫妻のように夫婦両方の親の介護に関われたのは、お互いにとって後悔がない、よい選択だと思います」