家事に仕事に、子育てに日々忙しくて、つい自分の健康はおろそかにしがち。そんなオーバー40女性が気をつけたいのはちょっとした身体の不調。実は、深刻な病気が隠れていることも……!意外なサインを医療のプロと読み解きます!
便秘がちになった→パーキンソン病
難病に指定されているパーキンソン病。ロシアのプーチン大統領がかかっているのではないかと疑う報道も。
医学博士・医学ジャーナリストの植田美津恵さんは言う。
「その真偽は定かではありませんが、パーキンソン病は手足に震えが出たり、身体を動かしにくくなったりするのが特徴です。ヒトラーがかかっていたことでもよく知られています」
身体を動かしにくくなるのは、筋肉に指令を出す脳内の神経伝達物質・ドーパミンが減少していくからだ。
「そのため筋肉がこわばり、力が入らない。排便のときにも、いきむことができないので便秘になります。転びやすくなる人も多い。こうした症状はパーキンソン病のごく初期のうちに現れるようになり、進行すると寝たきり状態になります」
と指摘するのは、秋津医院・院長の秋津壽男さん。
残念ながら、病気を根本から治す薬はまだない。
「iPS細胞を使った研究が世界で進められているので、それに期待したいですね」
においがわかりにくい→認知症
「脳の働きが劣化すると、においを判断する機能が弱まります。動物は鼻が利かなかったらエサをとれず、命に関わるように、人間にとってもにおいは脳の最も原始的な機能です。そのためにおいがわからなくなる嗅覚障害は、認知症のごく初期に現れる症状としてよく知られています」
と、秋津さん。料理中に鍋を焦がすようになったり、味つけが下手になったりすることも「認知症あるある」。
「それも、においをかぎ取る脳の機能が衰えたために起こる症状。料理中だったことを忘れたから鍋を焦がすのではなく、焦げているにおいに気づかないんです」(秋津さん、以下同)
認知症を根本から治す薬はまだ開発されていない。
「それでも初期のうちに治療を始めると、進行を抑えることはできます。ほかの病気と同様に早期発見が重要です」
肩や二の腕が痛い→肺がん
ひょっとして四十肩? それとも筋肉痛? 肩や二の腕が痛いとき、そう決めつけるのは、ちょっと待って!
「肺にできたがんがリンパ節に転移していくと、隣にある神経を圧迫することがよくあります。すると肩や二の腕に痛みが出るんです。のどから胸にかけて通っている反回神経が圧迫されると、カラオケで歌いすぎたときのようにしわがれた声になる“声枯れ”が起きることもあります」(秋津さん)
とはいえ肩や二の腕が痛かったら、普通は整形外科を受診するもの。肺がんを見つけることができるのだろうか?
「最初に受診するのが整形外科なのは致しかたありません。ただ、そこで治療しても痛みが治まらなかったら、肺がんの可能性も考えたほうがいいでしょう。肺がんは進行すると咳や微熱などの症状が現れますが、初期には自覚しにくい。意外なサインを見逃さないことが重要です」(植田さん)
おならの回数が減った→大腸がん
できるだけ人前で出すのは避けたいところ。でも、あまりにもおならの回数が少なかったら要注意!
「食事と一緒に取り込まれた空気や消化中に発生したガスは、おならとなって体外に排出されます。プッと出した音を自覚できるものから、そうでないものも含めて、人間は1日平均10~20回、おならをするといわれているんです。
ところが、大腸にがんやポリープができて、それらが大きくなると通過障害を起こして、おならが出にくくなったり便秘がちになったりします」
と、植田さん。
おならの回数が減るだけでなく、おなかが張って苦しかったり、便秘をこじらせたときのような腹痛を伴うケースも多いそう。
「ほかには便秘と下痢を繰り返したりする症状もよく見られます。がんの中でも、大腸がんは女性の死因のトップ。気になる人は消化器内科や消化器外科の受診をおすすめします」
おならの数が増えた→潰瘍性大腸炎
おならの回数が増えた場合も、意外な病魔が潜んでいる。秋津さんによると、
「おならの回数は、前述した大腸がんやポリープで起きる通過障害のほか、腸内環境によっても変わってきます。腸内環境が悪化して起こる病気のひとつに潰瘍性大腸炎があります。腸が炎症を起こして出血し、潰瘍ができたり、ただれて膨れ上がったりする難病です。
この病気になるとにおいの成分である硫化水素が発生しやすくなって、おならの回数が増えたりします。大腸が出血した場合は、より臭くなるなどの変化がみられることもあります」
安倍晋三元首相の持病として知られるようになったこの病気、はっきりとした原因は依然わかっていない。
「ストレスが影響するとみられています。治療は対症療法になりますが、最近は分子標的薬をはじめ薬の開発が進み、症状をかなり抑えられるようになりました」(秋津さん)
EDの症状がある→狭心症
成人男性の4人に1人は発症しているED。男性不妊を対象に、その治療薬が保険適用され話題に。EDは不妊の原因になるだけでなく、命に関わる病気と関係しているおそれも。植田さんによると、
「加齢に伴い血管の壁が硬くなる動脈硬化が進行します。すると血流が末端まで十分に行き渡らなくなって、勃起障害、つまりEDが起きるわけです。ただしEDが狭心症を引き起こすわけではなく、中年以降にEDの症状がある人は動脈硬化のリスクを抱えているケースが多いので、放っておくと狭心症や心筋梗塞になりかねないということ」
EDって、ストレスのせいであっちの元気がなくなるんだとばかり思っていた!
「ストレスでEDになることもありますよ。子どもをつくらなければというプレッシャーや仕事の重圧など、精神的な問題によって起こるものは『心因性ED』と呼ばれています。こちらは若い人に多い傾向がありますね」
虫歯じゃないのに歯が痛い→心筋梗塞
虫歯も、親知らずも見当たらない。なのに歯が痛くてたまらないとき、こんなサインが出されている可能性が。秋津先生が解説する。
「心筋梗塞や狭心症の場合、心臓から遠くにある歯に痛みを感じることがあります。心筋梗塞を起こすと心臓から脳に痛みの指令が伝わるのですが、心臓の痛みを伝える神経は、あごや歯に痛みを感じる神経と近いところにあります。そのため脳が心臓の痛みを歯の痛みと間違えて認識することがあるんです」
ちなみに、心筋梗塞と聞くと心臓のあたりが痛くなるイメージがあるけれど、
「左胸を押さえて“このあたりが痛い。狭心症や心筋梗塞ではないか?”という患者さんがよくいますが、そうではないケースがほとんど。たいていは肋間神経痛や筋肉痛です。本物の狭心症は胸の真ん中あたりが圧迫されるように痛むことが多いもの。この場所とピンポイントで特定できるものではありません」
眉が薄くなった→橋本病
若いころ、安室奈美恵をまねして眉を抜いていたら、ついに生えてこなくなったアラフォーは多いはず。でも急に薄くなったときは「病気の可能性もあります」と秋津さん。
「甲状腺機能が低下して起こる病気のひとつに橋本病があります。身体を外敵から守るはずの免疫が、どういうわけか自分を攻撃するようになり、身体の発育や細胞の成長を促す甲状腺ホルモンが不足するようになるのです。すると新陳代謝が低下し、頭の働きが鈍くなったり、眉や髪の毛が抜けて薄くなるといった症状が現れるようになります」(秋津さん、以下同)
治療法は、不足している甲状腺ホルモンを補充してあげればいい。
「橋本病は30代~40代の女性に多いのが特徴です。遺伝的な影響もみられ、両親や祖父母に橋本病の人がいる家系では発症リスクが高まります。ストレスも原因のひとつといわれているので、ため込まない工夫が必要でしょう」