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 女優の新山千春(41)が14歳年下の男性との交際を公表。2人の出会いがマッチングアプリだったことが話題を呼んだ。

「40歳を過ぎているのに、ひとまわり以上年下の男性に選ばれた新山さん。そのことに希望を感じた女性は多いようです。同時に“芸能人と出会えるかもしれない”という期待を持った男性も」(スポーツ紙記者)

 この記事を見て、早速マッチングアプリに登録しようとしたアラフォーの方々は多いかもしれない。しかし、幸せな恋愛を実現させる人がいる一方で、マッチングアプリは犯罪の温床とも言われており、芸能人と偽った詐欺は以前から存在する。そのため、芸能人とのマッチング可能性を過度に期待すると思わぬ事態に陥ることも。

ホテルに入るといきなり殴られて

 市場調査会社のMMD研究所が'21年に20〜49歳の独身男女10000人を対象に、出会いに関する統計を行った。それによると、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言のあった3月以前に恋人探しをした男女は33%。同年4月以降は21.7%だった。宣言以前は「職場や学校での出会い」が40.1%で最多。しかし、宣言後は「マッチングアプリ」が42.6%と最多となった。オンラインの出会いの需要の高まりがわかる。

 ただし、女性の場合、性被害を含めた犯罪に遭うことがあり、注意すべきではある。今年に入ってからも、京都市在住の34歳女性が東京都在住の男(34)から1億5千万円をだましとられたとして、京都府警が2月9日男を逮捕した。同様の事件が後をたたない。

 ここで1つの事例を紹介しよう。20代半ばの女性・ミサキさん(仮名)は、20代後半の男・コウジさん(仮名)と知り合った。アプリでのやりとりを経て数週間後、会うことになり、その日のうちに性的な関係となった。

「お互い、真剣交際よりは、遊びの関係でいたかったんだと思います。そのため、肉体関係を結ぶことはスムーズでした」(ミサキさん)

 数か月間、性的な行為を伴う関係が続く。そのうち、コウジさんは「本当にしたいことがある」と言ってきた。

「変わったプレイをしたいのかな?と思った程度でした。ホテルに入ると、コウジは豹変し、いきなり顔やお腹を殴られました。想定外でした。そんな暴力的な性行為をするとは思ってもみなかったんです。やめてもらおうとしたんですが、『やめ…』と最後までいう前に、全体重を乗せるかのようにお腹に乗っかってきて、声を出せませんでした」(ミサキさん)

 次第にミサキさんは抵抗する気力をなくした。

「性的関係自体は私が望んだことなので、誰かに相談することができませんでした。それに、コウジは隠し撮りをしていると言っていたので、その動画を消してもらいたいため、もう一度会いました」

 数週間後、ミサキさんはコウジさんと会った。このときも暴力的な行為をされた。次第にミサキさんは抵抗する気力がなくなった。すると、室内に隠れていたもう1人の男が、暴力的な性行為に加わってきたのだ。

「このときは死ぬかと思いました。ようやく自分がされていることがレイプだと気付いたんです。それまでは恋愛の延長線上だと思おうとしていて、レイプされていると思いたくなかったのかもしれません。その場でコウジに文句を言おうとしたんです。でも、『もし、誰かに言ったら、隠し撮りをした動画をネット上で流す』と言われてしまい。私は何も言うことができませんでした」

総額100万円以上の商品を“自称女優”に

 その後ミサキさんは警察に被害届を提出したが、捜査の進展はないという。一方、男性も被害に遭うことはある。芸能人を装ったオンライン上の人物に騙されて、貢いだユーザーがいる。30代の男性、ツヨシさん(仮名)のケースを紹介しよう。

 ツヨシさんは、遊ぶ相手としての女性との接点は多かったものの、結婚を考えるきっかけまでは至らなかった。結婚を考えたツヨシさんは、マッチングアプリに登録した。それなりの人数の女性とマッチし、デートの回数も二桁になった。ただ、結婚の話をすると、うまくいかずに悩んでいた。20代のナオさん(仮名)とのマッチングしたのはそんな時だった。

「僕は映画が好きなので、最近見た映画や、気になっている作品の話をしたんです。そしたら、ナオさんは映画に出演したことがあると言ってきたんです。実は、僕も、ある映画で、エキストラをしたことがあって。同じエキストラ経験者かと思って、話が盛り上がったんですよ」

 ツヨシさんはナオさんとデートの約束をした。すると、ナオさんは、ある女優の名前をあげた。それが自分だと言い、気軽には会えないと伝えてきた。

新山千春

「出演した作品とか、最近のスケジュールなども教えてくれたんです。仕事を続けるかどうかも悩んでいると言ってきました。その数日後、ブログで同じ悩み事の話が書かれていたので、信じきってしまい……

 そのうち、ナオさんから「生活が困っている」との連絡があった。ツヨシさんは「会うための投資」と思い。ナオさんのSNSに掲載された「ほしいものリスト」を見て、商品を購入しプレゼントした。するとお礼のメッセージが届き、出会える期待感が高まった。デートの約束の日、しかし、ナオさんは現れない。会おうかどうしようか迷っている素振りをし、結局、ツヨシさんの前に現れなかった。

総額で100万円以上の商品を贈ったと思います。応援の気持ちと出会える期待がありました。会おうとしてくれたのは本当の気持ちだと思ってしまっていたので。注ぎ込んだ金額を取り返したいという気持ちにもなりました」

 そのうち、メッセージが途絶えた。仮にナオさんが本物だとしたら女優名を言ってしまっていることや、中途半端にメッセージを途絶えさせたことは、評判に関わるリスクだ。そんなことをするだろうか。ツヨシさんは今では偽物ではないかと疑っている。

 紹介したケースは氷山の一角だ。マッチングアプリは前述のように性犯罪者や詐欺師、最悪の場合は殺人犯とマッチングしてしまうこともあるのだーー。


取材・文/渋井哲也
ジャーナリスト、ノンフィクション作家。インターネット、サブカルチャー、援助交際、自殺、生きづらさなどをテーマに取材、執筆を行うほか、大学でも教える