「内訳を細かく見てみないとなんとも言えませんが、諸経費を含めた弁護士費用が500万円というのはかなり多いと思いますね」
とある弁護士はそう答えた。
4月に山口県阿武町を舞台に起きた、給付金“誤送金”騒動。新型コロナウイルス感染症対策のひとつとして生活困窮者への支援が行われたのだが、
「1世帯につき10万円の補助金が配られるのだが、阿武町役場の職員のミスで1世帯に4630万円を振込んでしまったんです」(全国紙社会部記者、以下同)
4630万円の返還拒否して所在不明に
その1世帯というのが、今世間を騒がせている男性X氏(24)だった。彼は阿武町役場の職員に金の返還をうながされたにも関わらず、拒否したまま町から姿を消す。
「先週末、役場はXに対して金の返還を求めるため、山口地方裁判所萩支部に民事訴訟として提訴。役場のホームページにこの間の経緯の説明とともに、X氏の実名や住所まで晒したんです」
これによって報道は過熱の一途を辿った。町内にあるX氏の自宅ほか、同県内の実家に報道陣が詰めかける事態に。
すると16日、X氏の弁護士が会見を開き、
「彼は所在不明ではない。スマートフォンは現在も警察から返還されていないので、阿武町側が連絡をとれないので誤解したのだろう」
と逃亡を否定。X氏は4月と5月、2度にわたって警察の任意の事情聴取を受けていることも判明した。
この会見で“お金を使い果たしたから返せないのか”という質問に弁護士はこう答えている。
「概ねその理解で正しい。何か財産的価値のあるものが、本人の手元に残っている状態ではないと聞いている」
翌17日には、こんな情報も出てきている。
「関係者の話によると、X氏は複数のネットカジノに注ぎ込んで金をすべて使い切ってしまったようです」(前出・社会部記者)
この真偽はともかく、役場はX氏から金を何とか取り返すために訴訟を起こしている。阿武町役場のHPには、
《1被告は、原告に対し、金5115万9939円及びこれに対する令和4年4月8日から支払済まで年3分の割の金員を支払え》
また欄外には、
《※1項の金額には、4630万円に加え、弁護士費用および交通費等の諸経費を含む》
となっている。これが約500万円上乗せされた経費のざっくりとした内訳なのだが……。
回収できなければ公金の無駄遣い
冒頭の弁護士は、弁護士費用についてこう話す。
「大きく分けて2つあり、裁判の勝ち負けに関係なくかかった時間で計算する“タイムチャージ制”と、以前から行われている“着手金と成功報酬”です」
一般的なのは後者で、ほとんどの弁護士事務所は日弁連などが設けている基準に沿って費用を決めているという。この基準に当てはめてみると……
「着手金の計算式は請求額×3%+69万円。今回の訴訟だと着手金は約208万円となります。交通費などの諸経費はあくまでおまけだと思うので、500万円という設定は明らかに高すぎですね」(同・弁護士、以下同)
通常の場合、請求額には弁護士の成功報酬は入れないようだが、
「成功報酬の計算式は請求額×6%+138万円が大体の目安。今回であれば約416万円で着手金と合わせると624万円。これなら妥当な金額になりますが、もし成功報酬を含んでいないとしたら弁護士にぼったくられていますよ(笑)」
もしX氏が本当にネットカジノで使い果たして回収困難ならば、4630万円だけでなく弁護士費用などの諸経費500万円も公金で支払うことになる。これは、町の金をさらに無駄遣いしたも同然だ。
阿武町役場に連絡して、詳細な内訳を確認しようとしたが、代表番号はずっと話し中。取材や苦情が殺到しているようで、やっと電話がつながったが担当の副町長からは期日までに回答は得られなかった。もし成功報酬が含まれない弁護士費用であるならば、至急見直してほしい。
たかだか4630万円で、X氏は一生を棒に振ることになるとも。
「X氏の顔写真がネットで出回ってしまうのも時間の問題。ここまで有名になってしまうと、二度とまともな職に就けない可能性だってある。まだ24歳だというのに、いったい何を考えているのか……」(前出・弁護士)
この騒動、まだまだ収まりそうにない気配だ。