「部屋干し特有のにおいには、汚れと菌が関係しています」と話すのは、ライオンのお洗濯マイスター・大貫和泉さん。
「洗濯で落としきれなかった汚れがエサとなり菌が増殖し、排出する代謝物のフンのようなものがにおいの原因となるのです」(大貫さん、以下同)
きれいに洗えているように思えても実は汚れが残っていたのだ。さらに、
「菌は水分があると増殖しやすいので、梅雨の時季はにおいのリスクがより高くなります」
8時間着用した靴下を、湿ったタオルと一緒に洗濯カゴに入れて、室温25度で18時間放置した場合、菌の数はなんと100倍近くに膨れ上がるという。菌が多くなれば、そのぶん悪臭のリスクも高くなる。
「悪臭を防ぐためには、衣類の汚れをしっかり落として菌のエサを減らすことと、早く乾かして菌の増殖を防ぐことが必須です」
洗濯は菌の増殖をいかに抑えるかがカギ
汚れ物を洗濯槽にどんどんつっこんでためてしまうのは、よくやりがちなNG行為。汗や皮脂、泥汚れなどから出るさまざまな菌が湿度の高い洗濯槽の中で増えてしまうのだ。菌対策は、洗濯前の衣類の保管からスタートしている。
「縦型の洗濯機では、汚れやにおいの気になる衣類を洗濯槽のどの位置に入れるのかも、汚れ落ちに大いに関係するポイントであることが最新の調査でわかっています」と大貫さん。
できるだけ早く乾かすには干し方にもコツがある。やりがちなのが、ピンチハンガーにつるしてカーテンレールにかけるというスタイルだが、これは悪臭を招く典型的なスタイル。
「窓を閉めていれば風は通りにくく、カーテンのホコリが洗濯物に付着してしまいます。部屋の中央や鴨居などの風の通り道に干したり、洗濯物同士の間にこぶし大の間隔を空けるなどするのが効果的です。ピンチハンガー自体も、何をどこにつるすかで乾く時間がかなり違ってきます」
知っていると知らないとでは大きな差がつく梅雨の洗濯術。さっそく試して、スッキリ快適に!
“洗濯前”のポイント
汚れた洗濯物は菌の大好物。菌を増やさないよう湿気を避けるなどの工夫が必須。
菌を増やさない、持ち込まない
洗濯物は通気性よく保管する
汚れ物は洗濯機へポイポイ…は、避けたい行為。洗濯槽は通気性が悪く、洗濯槽の下には実は常に水がたまっていて湿度も高いので、菌が増殖しやすい環境。衣類は通気性のよい洗濯カゴに入れ、洗濯するときに洗濯槽へ入れるのがベスト。濡れたタオル類は、カゴの上にかけるなどして乾かしておく。湿ったまま、ほかの洗濯物と一緒に入れるのは避けること。
洗濯槽は清潔に
洗濯槽自体がカビなどで汚れていると、イヤなにおいを放つ原因になってしまう。梅雨どきは特にこまめに、洗濯槽クリーナーを使ってキレイにしておきたい。また縦型洗濯機なら、フタは開けておき洗濯槽の湿度の上昇を抑えて。ドラム式の場合、扉にタオルなどを挟んで隙間をつくるとよい(小さな子どもがいる家庭では、事故のおそれがあるので行わないこと)。
頻繁に洗濯しないならプレ洗剤
汚れ物を放置すれば菌も増えるので、洗濯はこまめにするのが理想だが、数日分をまとめて洗うこともある。その場合は洗濯物にかけて放置できる専用のプレ洗剤を使用して。洗濯物にかけておけば、ウイルス除去・除菌効果を発揮し、1週間ほど放置しても効果が持続。子どもの食べこぼしで汚れた服をすぐに洗えないときなどにも便利。
目立つ汚れには前処理を
洗濯機だけでは落ちにくい汚れは前処理が必須。襟・袖汚れや泥はねなどの泥汚れは、液体洗剤を塗っておいて。
このとき、泥汚れは先に水で洗わないよう注意を。繊維の中に泥が入り込み、余計に落としにくくなる。逆に血液汚れはまず水で洗い、液体の酸素系漂白剤をつけて洗濯槽へ。血液はタンパク質でできているのでお湯で洗うと固まり、落ちにくくなってしまう。40度以下の水ですすぎ、その後に液体洗剤や液体酸素系漂白剤を塗布。
“洗濯”のポイント
裏返しにしたり、洗濯槽の下に入れたり……意外なテクで汚れ落ちがアップ!
1.「除菌」や「抗菌」洗剤と柔軟剤を併用
菌が増殖しやすい梅雨は、除菌や抗菌効果のある洗剤をチョイス。柔軟剤は脱水後のタオルの水分量を減らし、より早く乾かす働きもあるので、ぜひ取り入れたい。抗菌効果のあるものなら、より安心だ。さらに洗濯時に、粉末タイプの酸素系漂白剤を一緒に入れるのもおすすめ。高い除菌効果が期待できるうえ、黄ばみなどの解消にも効果あり。
2. 7~8割でスムーズ洗い
外干しができないと、つい洗濯物をため込んでしまいがちだが、詰め込み洗いは悪臭の元凶に。容量いっぱいまで詰め込むと、洗浄力は格段にダウンし、汚れは1/3程度しか落ちないこともある。洗濯物は、洗濯機の容量の7~8割程度に収めるのがベスト。縦型洗濯機でいえば、洗濯槽が5cm程度見えるまでにとどめよう。
洗濯物の量で汚れ落ちに差が
衣類を洗濯槽のいちばん上、真ん中、いちばん下に入れたときの洗浄力を調べた。容量の7割なら、どこに入れても洗浄力に変化はないが、詰め込み洗いをすると、いちばん上に入れた衣類の汚れ落ちは1/3に。
適切な量の目安
OKパターン
NGパターン
3. 汚れを落としやすくするテクを実践
・においの気になる肌着や靴下は“裏返し”
肌着や靴下などは、皮膚と接触している面に汚れが多く付着しているので、裏返しのまま洗って。洗濯機の水流やほかの衣類とこすれるなどして、洗濯機の機械力が直接作用するので、汚れ落ちがアップする。子どもの靴下などの泥汚れや黒ずみ汚れなら、表に返して洗濯を。汚れがあるほうを表にして洗うのがポイント。
・汚れやにおいの気になる衣類は“洗濯槽の下”へ
縦型洗濯機の場合、洗濯機の下のほうにパルセーターといわれる回転羽根がある。これが回転することで、渦巻きのような水流を起こし、水中で衣類が舞うように動いて汚れが落ちる。パルセーターに近いほど水流は強く、汚れをはがす機械力がパワフルなので、においが気になる靴下、肌着、タオルなどは洗濯槽の下に入れて洗濯を。汚れやにおいの除去力がアップする。
4. つけおきでしつこいにおいを完全オフ
頑固なにおいは、酸素系漂白剤を使ったつけおき洗いで撃退。粉末タイプなら、40度程度のぬるま湯5lに適量を溶かし、衣類を30分から2時間程度つけておく。液体タイプなら、ぬるま湯5lに、洗剤を水30l分の使用量を入れ、液体酸素系漂白剤を適量入れて、同様につけおきを。その後は、液体タイプなら洗濯液ごと洗濯槽に入れて、スイッチオン。粉末タイプならつけおき液ごと入れ、洗剤を加えて洗濯を。
“干す”ポイント
湿っている時間が長いほど菌が増える。最初の5時間が勝負!
1. 洗い終わり“5時間”が勝負!
菌自体ににおいはないものの、水分や皮脂の汚れを食べながら増殖し、においの原因となる物質を発生させる。「5時間以内」に洗濯物を乾かすことができれば、生乾きのにおいは発生しにくいというデータもある。洗濯槽に入れっぱなしで干すのを忘れていた……なんていうのはご法度。洗ったらすぐに干して、早く乾かす、を心がけて。
2. 乾かす時間を徹底時短!
・速乾効果のある柔軟剤を使う
「ふんわり仕上がる」「いい香りがする」などの目的で使われる柔軟剤だが、「洗濯後にタオルに含まれる水分を少なくする」という効果も。特に乾きにくいバスタオルは、柔軟剤未使用よりも8%も水分が減り、乾燥時間が1時間も短縮したという結果も。消臭・防臭効果のある柔軟剤であれば、さらに効果的。
・脱水時間を一段階長くする
脱水時間を長くすることも、早く乾かすための手助けに。通常6分なら9分にするなど、いつもより3分ほど長く設定を。水分が多く抜ければ、乾く時間を短縮することにつながる。ただし脱水が長いぶんシワになりやすいので、アイロンがけが必要な衣類はいつもどおりの脱水時間で。
・洗濯後に振りさばく
タオルは洗濯後に、4~5回ほどバサバサと振りさばいてから干して。パイルが立ち上がって早く乾きやすくなるからだ。大判のバスタオルは、乾きにくく、干すスペースも取るので特に試してみてほしい。形が整うので干しやすくなり、乾いた後にふっくらするという利点も。
3. 室内干しは壁際を避けて
壁際は風が通りにくく、ピンチハンガーなどをつるしても、斜めになって洗濯物が重なるなどして乾きにくい。カーテンレールであれば、カーテンの汚れが洗濯物に付着することも。部屋の中央にある鴨居につるしたり、パイプハンガーを使うなどして、風通しのいいところで干すようにして。
OK. 部屋と部屋を仕切る鴨居があるなら、風通しもよく、干すのに最適
NG. 風が通らない場所は不向き。カーテンの汚れにも注意
4. 干し方は“アーチ”に
洗濯物は上から乾くので、長いものほど乾きにくい。ピンチハンガーにつるすなら、空気や風に当たる外側にタオルなどの長いものをつるし、内側に短いものをつるすアーチ干しがおすすめ。間に空洞ができるので、内側も風が通り、効率よく乾かすことができる。また乾きにくい綿素材も外側がベスト。内側には乾きやすい化学繊維の服をつるして。ただし浴室乾燥機を使う場合はこの逆。温風の吹き出し口に近い中央に、乾きにくいものをつるそう。
乾きにくい 3大アイテムジーンズ、タオル、パーカの干し方のコツ
<取材・文/樫野早苗>