佐々木朗希(本人のインスタグラムより)

「別に話すことはないです。一切コメントしないです」

 4月24日、プロ野球のオリックス対ロッテ戦後、球審を務めた白井一行審判員は厳しい口調で言い放った。この試合は、思わぬ形で注目を浴びることとなる─。

「ロッテの先発投手は、4月10日、プロ野球史上16人目となる完全試合を達成、5月20日の登板で無傷の5連勝を飾った佐々木朗希選手。しかし、この日は白井審判員から受けた“ボール”の判定に不服そうな態度をとってしまい、警告を受けました。ただ、このシーンでの白井審判員が高圧的に見えたことで、各方面で物議を醸す事態に……」(スポーツ紙記者)

白井審判員は「ルールを守っていた」

 一件を受け、日本野球機構は「注意の仕方に別の方法があった」と発表したが、著名人たちも私見を述べた。

「タレントのマツコ・デラックスさんはテレビで“(白井審判員が)マウント取りにいったんでしょう”と辛辣なコメント。一方、メジャーで活躍するダルビッシュ有選手はツイッターで《審判にも態度出させてあげてください》と擁護する姿勢を見せました」(同・スポーツ紙記者)

 5月15日には、同じくロッテのレアード選手に退場宣告をした白井審判員。賛否両論が飛び交っているが、専門家の目にはどう映ったのか。審判員として29年間で1軍公式戦1451試合に出場し、その後、審判技術指導員を8年間務めた山崎夏生さん(66)に話を聞いた。

「佐々木選手はそれまで再三にわたって、不満げな態度を見せていました。ルールブックには“不満の意を表してマウンドを降りたら警告を発せられる”とあるので、逆に警告を発しなければ、審判のルール違反になる。白井審判員は、ルールを守って注意したわけです」

白井審判員の人柄とは

 あくまでルールに則った対応だというが、その姿勢には問題もあったようで……。

「白井審判員自身も、映像を見て“自分はこんな感じだったんだ”と反省しているかも。もうひとつ反省すべきは、取材に対し“話すことはない”という対応をしてしまったこと。“ルールに則った行動です”と説明すれば、大きな問題にはならなかったんじゃないかな」(山崎さん)

 そんな白井審判員は、野球ファンの間では有名な存在。

「甲高く大きい声でのストライクコールが彼の代名詞。そのとき、手をK(三振の意味)の形にするのですが、AKB48のダンスを参考にしたそうです。過去10年間で7度の退場を宣告していて、これは最多記録なんです」(前出・スポーツ紙記者)

Kのポーズ(写真上、NHKBS1『球辞苑』より)

「退場宣告が多い審判」となるとトラブルメーカーのように思えてしまうが、前出の山崎さんはこう語る。

「ネットでは叩かれてますけど、26年で1500試合以上、日本シリーズにも4回出場している。『審判員奨励賞』を2回もらっていて、むしろトップクラスの審判員です。毅然とした顔つきで怒っているように見えるかもしれないけど、試合中だから当然です。

 退場宣告が多いのも、彼がきちんとルールを守る証拠。然るべきときに退場させないのは、審判としてルール違反ですから。酒も飲まず、まじめでいいやつ。気さくで、若手からの人望もある人なんです

 意図せぬ形で話題を呼んだ、プロ野球に欠かせぬ“裏方”。決してブレない判断があるからこそ、選手たちは安心してプレーできる。


山崎夏生 元NPB審判員。29年間で1軍公式戦1451試合に出場。現在は「審判応援団長」の肩書で講演や執筆を行っている。著書に『プロ野球審判ジャッジの舞台裏』などがある