「本日現在、合計で4299万3434円、法的に確保することができました」
24日、花田憲彦阿武町長は会見でそう明らかにした。
山口県阿武町から誤って振り込まれた4630万円の一部から不法に利益を得たとして、24歳の男を逮捕。田口翔容疑者は、同町の新型コロナウイルス給付金について、町から入金された4630万円を、誤った振り込み金と知りつつも、400万円を別の口座に振り替えたとして、電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕された
田口容疑者は、「金はすべてネットカジノに使った」と供述し、3つの決済代行業者にほぼ全額を出金していた。
町側は、全額返還などを求めて田口容疑者を提訴。田口容疑者側は、返還の意思があるとし手続きを取っていた。
これで残りは330万6566円。
今回の事件、誤った振り込みが田口容疑者の口座になされたことに始まった。振り込みがなされたが、それはあくまで“誤った”ものであり、田口容疑者の所有物ではない。今回の事件は町側が誤って振り込んでしまったことに端を発したこともあり、西村博之氏など影響力のある有名人も含め、ネット上では、“容疑者はそこまで悪いのか”という声も出ている。
容疑者はそこまで悪いのか
「田口容疑者は、『電子計算機使用詐欺罪』の疑いとされています。その場合、量刑は10年以下の懲役です。しかし、ネットカジノに使い込んだということが“悪質”だからとして、この罪に無理やりしているのではないかという声も出ています。本来は『占有離脱物横領罪』にあたり、その場合は量刑が軽く、1年以下の懲役となるのが妥当ではないか、ということです」(法律関係者)
一方、とある弁護士の見解は……。
「一時的に振り込まれたお金が、銀行に“占有がある”と考えるかどうかで、どちらの犯罪にあたるかが決まりますが、“銀行に占有がある”と考えるのが現在の判例になるかと思います。容疑者が“悪質だから”無理やりその罪にしているということはないでしょう」
“執行猶予”がつく可能性もあるという。
「返還の意思があり、反省もしているような報道もありました。そもそも一方的にお金振り込まれたことによる誘惑という、かわいそうな面もあります。全額返済なら確実に執行猶予がつくでしょう」(同・弁護士、以下同)
では、町側はどのようにして振り込み額を“確保”したのか。
「町側の弁護士は“示談や交渉でなく、国税徴収法に基づいた決済代行業者3社の口座の差し押さえなどによって、法的に(ご入金された金を)確保した”と述べています。町側は、田口容疑者が振り替えた3社の住所を特定し、19日に債権を差し押さえ、取り立てを通知する書面を各社に渡した。その後、3社から田口容疑者の振り替え分の金額が町の口座に入金されたそうです」(社会部記者)
田口容疑者は返還の意思はあるが、「手元に財産的価値のあるものはなく、現実的に返還が難しい」と説明している。
差し押さえによる返還でも…
「4299万3434円の内訳は、田口容疑者が決済代行会社3社に出金した計4292万4691円と、田口容疑者の口座に残っていた6万8743円の合計だそうです」(前出・社会部記者)
となると……。
「カジノに使ったことが事実であり、たまたま勝った金で返しただとか、彼が返還したのではなく、彼が使った決済代行会社の口座を差し押さえたのであれば、自分から返した場合よりは悪質です。
しかし、それでも結果として“被害”が生じてないのであれば、執行猶予の可能性が高いと思われます」(前出・弁護士)
突然振り込まれた8桁もの金額。使い込んだ容疑者に罪があるのは当然であるが、彼の人生を狂わせたのは、彼の射幸心だけか……。