「新型コロナウイルス感染防止による自粛期間を経験して改めて舞台に立てる幸せを身に染みて感じています」
片岡愛之助が主演舞台『奇人たちの晩餐会』で5年ぶりの現代劇に挑む。
「この企画はコロナ禍で延期になっていたので、公演が決まったときは“やったー!”という感じでした」
仕事直前のルーティン
作品は『 Mr.レディ Mr.マダム』『ファーザーズ・デイ』などフランス喜劇を代表する脚本家、フランシス・ヴェベールが手がけ舞台、映画ともにフランスで大ヒットした翻訳劇。アメリカでも映画化され人気を呼んだ。
ちょっと変わった人間を集めて晩餐会を開催し、いちばんの奇人を決めるという悪趣味な編集者が、たまたま出会った変わり者に振り回されるシチュエーションコメディー。愛之助は編集者のピエール(戸次重幸)を振り回すフランソワを演じる。
「他人の家をのぞいている感じの舞台です。フランソワはまじめだけど空気が読めず気が利かない。おせっかいをすればするほど逆効果になってピエールが翻弄される。ほかの登場人物が出てくるたびにフランソワがかき回すのでややこしくなるけど、それが盛り上がりを生み、お客様は退屈しないと思います」
戸次とは人気ドラマ『半沢直樹』ですれ違う程度の共演だった。今回がっぷり四つに組むが「化学反応が楽しみ」と言う。歌舞伎と並行してテレビや映画などの映像作品の出演も多い。忙しいスケジュールにもかかわらず仕事開始の2時間前には必ず劇場や現場近くの喫茶店でひとり過ごすのが常だ
「リセットするために必要な自由時間です。台本を読んだり、ときにはゲームをしたり、いろんなことを考えたりしています。地方公演で劇場近くのホテルに宿泊しても2時間前には部屋を出て劇場近くの喫茶店にいます。
劇場入りしたら公演終了まで建物から出られません。よくも悪くも限られた環境に閉じこもってしまう。そのため世間の風を浴びたい、世の中を感じたいと思う。誰とも話しもしないですし、気づかれることもないですよ」
上方歌舞伎の火を灯し続けるため
上方歌舞伎の担い手として注目され、花形役者のひとりとして活躍。今年、50歳になった。
「びっくりしました。50歳はもっと大人のイメージだったので大丈夫かなと思う(笑)。歌舞伎の世界では四十、五十ははなたれ小僧、ひよっこです。ようやく、はなたれ小僧になったかなという感じです」
昨年、養父の二代目片岡秀太郎さん(享年79)を亡くした。
「父はじめ天国にいった知り合いの役者さんが多くなりました。コロナや戦争でも多くの人が亡くなっているのをみていると、人の出会いや日々を大事にして悔いなくきちんと生きていかなければと思います。
映像や歌舞伎以外の舞台に出演するのは、自分を通じてひとりでも多くの方に歌舞伎を知ってもらいたい。さらには上方歌舞伎を盛り上げたいからです。もともとは京都で生まれた歌舞伎ですが、すっかり東京のイメージが強くなりました。
歌舞伎にはご縁のなかった一般家庭に生まれた私をこれまで育ててくれた亡父や先輩方に少しでも恩返しができるよう、そして上方歌舞伎の火を灯し続けるためにも、このスタンスを貫いていきたいです」
さまざまなジャンルに挑戦する姿勢には“上方”を牽引する自負がにじむ。
おうち時間で大型免許取得
昨年、コロナ禍による自粛期間中に大型バイクの免許を取得した。「いろんな資格を取っている人をテレビで見て影響され、中型バイクの免許を持っていたこともあり挑戦しました。大型バイクに乗る役もできるようになりましたし、プライベートでは愛車のハーレーで北海道をツーリングしてみたいです」
舞台『奇人たちの晩餐会』
6月7日(火)~19日(日)東京・世田谷パブリックシアター、同25日(土)~27日(月)大阪・森ノ宮ピロティホール、29日(水)長野・まつもと市民芸術館主ホール、7月2日(土)、3日(日)愛知・東海市芸術劇場大ホール、同9日(土)、10日(日)福岡・博多座