「みなさま、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。おかげをもちまして、もう、すっかりのども回復し、元気になりました!」と開口一番。笑顔が戻った氷川にエネルギーが満ちあふれる。歌手活動、そしてステージへの思い……。
声帯のポリープとその出血のため、コンサートツアー2公演の中止を発表したのは3月4日のことだった。コロナの影響を除けば、予定公演の取りやめは約20年ぶり。
「自分の中で違和感を感じていたので、診断には“やっぱり”という感じでした。おととしからコロナの影響でコンサートの延期・中止があった中、やっと開催できるようになり、楽しみに待っていてくださったファンのみなさまに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。また、6月からは4劇場(明治座・新歌舞伎座・博多座・御園座)を巡る公演が控えているので、それまでに治さなければという気持ちが先に立ちました」
無理をせず、治療を優先。その決断は勇気がいったのでは?
「7年前くらいにもポリープ切除の手術をしていて。2度目だったので、すぐに決断できました。ただ、手術できる状態まで患部のコンディションをもっていくのに少し日にちがかかって。術後、復帰するまでの期間を考えると“一刻も早く歌いたい!”という気持ちでいっぱいでした」
全身麻酔は怖かったが、過去の経験から勝手がわかっていたため、なんとか頑張れたと振り返る。
「術後はしゃべらず無理をせず、回復を待つしかなくて……もどかしかったです。たくさんの励ましの手紙やメッセージをいただき、本当にありがたかったです。みなさまに感謝し、それが早い回復の原動力になりました」
待望のカムバックは4月22日、奈良県橿原市で。
「復帰公演はすごく待ち遠しかったです。大勢のお客様がお越しになって、“待ってたよ”と言わんばかりのすごい拍手を送ってくださって。本当にうれしく、ありがたく、感謝の気持ちでいっぱいでした」
これからは軽やかで優しい歌い方も
「やっぱり何でも治していくのが大事ですね。今は“よくなった”という実感と安心感がすごくあります。万全な状態でステージに立てることがすごくうれしいし、ストレスがまったくなくて。心身、晴れ晴れしています。歌っていても、すごく抜けがいいです。歌い手はやっぱり声がよくないとね♪」
ただ、これからは少し歌い方を変えていこうと考えている。
「手術はなるべくしたくないので。若いころはどうしても“声を出るだけ出す”みたいな、常に全力で歌っていました。年齢も重ねましたし、これからは軽やかで優しい歌い方もしていきたいですね。普段から、しゃべり方も上品に(笑)」
歌えない時間を経験したことで歌える喜び、そして使命感はより強く。
「まさに“歌は我が命”です。自分の思いを歌うことで、みなさまに元気や勇気、明日への希望を持ってもらえたら。改めて、これからも歌でメッセージを伝えていける歌手でありたいです」
いよいよ、明治座での座長公演が6月3日よりスタート!
第一部のお芝居は、『ケイト・シモンの舞踏会 ~時間旅行でボンジュール~』。そのビジュアルは超・斬新!
「ね、自分でもびっくりしました(笑)」
『ベルサイユのばら』のオスカル・フランソワを彷彿とさせる、この豪華絢爛さが似合うのは、氷川と宝塚トップだけ!
「ヒット曲が股旅演歌だったこともあり、25歳からずっと劇場公演のお芝居は時代劇をやってきました。でも、今回はきれいに見えるものをやりたいなと思って」
主人公・子門慧音(氷川きよし)は母親を病気で亡くす。“時を戻せたらどんなにいいか”と、形見のフランス製の砂時計をひっくり返してみると……なんと、18世紀のフランスにタイムスリップ!
「初の洋装劇。未知ではありますが、すごく楽しみながらやれるお芝居です。ジャンヌ・ダルクに、アルセーヌ・ルパン……まさか5変化するとは思ってなかったですけど(笑)。いいとこ取りでしょ? 詳しくは見てのお楽しみなんですが、すごく面白くて、いいものになる予感がしています。
やっぱり1か月と長丁場ですから“どれだけ楽しんでやれるか”はすごく大事かなと思っていて」
過去に戻りたいとは思わない
もし、タイムスリップできるならどの時代に行ってみたい?
「今、自分が生きていて、過去に戻りたいっていう気持ちはないですけど。うーん。縄文時代とか? 縄文土器とか土偶なんかを作ったり(笑)」
フランスを訪れたことはまだないが、いつか行ってみたいと目を輝かせる。
「やっぱりパリは憧れますね。どこを切っても絵になる、というか。
そして公演を目前にした今、いかに自分は人に愛を伝えられるかだと思っていて。改めて今回の公演で、そういうものも表現できたらいいなと思っています。
またコロナ禍になってから、いろんな状況が変わり、孤独を感じる時代になっているとも思っていて。そんな寂しさを少しでも和らげるお役に立てたら。心の栄養というか。そういった空間を、この公演で作り上げたいです!」
口頭より、 歌で伝えていくことが大事
2月に発売したシングル『群青の弦(いと)』。『春の海』の作曲で知られる盲目の箏曲師・宮城道雄を題材にしたこの曲は、12年5か月ぶりにオリコン週間シングルランキング1位に輝くなど、氷川演歌の神髄との呼び声も。
そして、6月14日には新装盤が発売に。Dタイプのカップリングは『歌は我が命』。昨年末の『NHK紅白歌合戦』での熱唱は話題となった。NHKから“この曲で”と依頼された際には、すごくいいタイミングで歌えると感じたそう。
「ひばりさんはコロムビアレコードの伝説の先輩。やっぱり、ひばりさんの歩んできた人生は歌とともにあって。ご自身の思いを重ね合わせながら歌われていたんだろうな、とすごく感じます」
何より、この歌には歌い手じゃないとわからない思いがあるという。
「やはり自分は歌い手ですから、いろいろ口頭で伝えるよりも、やっぱり歌で伝えることが大事なのかなと感じています」
ひばりさんにお会いできたら絶対に……
もしひばりさんが存命であれば、今年で85歳。
「年齢差としては可能性はあったのかな、と思うんですが……お会いしたかったですね。トーク映像を見たり、息子さんの話を聞いたりしていると、すごくさっぱりした女性ですよね。女性っぽい女性ではないというか。だから、お会いできたら絶対楽しかっただろうなぁ」
Eタイプのカップリングは『恋と薔薇の日々』。
「オリジナルのシャンソンで、相手に対して思いが深い女性像を歌ってみたくて。シャンソンって、年を重ねても美しく見えるんですよね。そしてFタイプ収録の『カモメの純情』は新境地というよりは、王道演歌。1曲1曲すごく思い入れがあって、愛を込めた作品となっています!」
最近のガーデニング&お料理事情
「今は、ミョウガタケを植えていて。マヨネーズともろみで食べるとすごくおいしいですよ♪ あと、最近は『チャンネル銀河』さんの番組で、フランス料理を作りました。劇場公演のお芝居が、18世紀のフランスにタイムスリップする、ということで。ブイヤベース、クスクスのタブレ、キャロットラペ、クレームブリュレ……。身近な料理が実はフランス料理だったり、意外と簡単に作れるものがあったり。みなさんも、ぜひ挑戦してみていただきたいです!」
朝活、してます!
「そうそう、最近は朝活をしていて。ヨガやピラティスをやっています」
この日は7時に起床、7時半からヨガのレッスンをしたうえで、週刊女性の撮影へ。
「鼻から吸って口から吐き出す腹式呼吸、やっぱりいいですね。全然、気持ちが違う! 1日がモチベーション高く、有効活用できています。明治座での座長公演に備えて? そうですね。基本、趣味が料理&食べることだから、気を抜くと……ね(笑)。理想体重でいられると、やっぱり自信が湧いてきます」
『氷川きよし特別公演』
東京・明治座 6月3日(金)~7月4日(月)
【第一部】ケイト・シモンの舞踏会
~時間旅行でボンジュール~
【第二部】氷川きよしコンサート
2022 in明治座
ヘアメイク/遠山雄也(RELAXX)