SNS運用のコンサルタント事業を行う株式会社withera。'20年に設立、ものの2年で年商1億円に急成長した企業だ。社長を務めるのはあいめこさん(30)。
会う前までは『バリキャリの女性』を想像していたのだが、記者の前に現れた彼女はふわふわのワンピース、厚底サンダル、ネイル……“可愛らしい”という言葉がよく似合い、一般的な女社長のイメージとは異なっていた。
その見た目とは裏腹に内面は「努力と根性」の塊。しかし、その成功の裏には挫折と苦しみが隠されていて……。その軌跡を聞いた。
本社を滋賀県に置く理由とは
あいめこさんは“日本初のオンラインキャバクラ”の第一人者でもある。オンラインキャバクラとは、スマホやパソコンによるリモートで女性従業員との会話を楽しむことができるシステム。新型コロナウイルス感染拡大により、外出自粛が続いたことで飲みに行けなくなった顧客と飲食店の女性従業員をマッチングさせようとしたことに始まる。
あいめこさんはこの仕組みにいち早く目をつけ、'20年4月にマッチングのシステムを立ち上げたのだ。
「メディアで『初』と取り上げてくださったり、社会的にも意義があることだと言ってくださったのがうれしかったし、自分に自信がついて、これをきっかけに会社を立ち上げました」(あいめこさん、以下同)
コロナ禍でのつらさをむしろ逆手にとって誰よりも早く行動したことが成功への第一歩となった。特に決断力とスピードがないとSNSの波には乗れなかったと語る。
「誰もやっていない突拍子もないことをして突き抜けないと、人の興味を引くことはできません。特にネットの世界は思い立ったらすぐ行動するのが鉄則です」
現在はSNSの運用代行や商品の開発、販売・促進などの事業コンサルを手がけている。得意なのは商品をバズらせること。無印良品の『アロマオイルミスト』や小林製薬の『命の母ホワイト』などの商品をSNSで拡散するとユーザーがそれに食いついた。商品は店頭で品薄になるなどし、話題になったこともある。
本社を地元の滋賀県に置いているのもあいめこ流。リモート時代の強みを生かし、同社ではどこに住んでいても仕事ができるような仕組みを作った。SNSの運営代行を行う所属メンバーも日本全国に散らばり、在宅で自由な時間に働いている。育児をしながら仕事をするシングルマザーも少なくない。
最先端の事業を行うあいめこさんだが、5年前まではパソコンを持っていなかった。
SNSビジネスの世界に入ったきっかけは25歳のとき。大学を中退後、キャバクラのキャストや塾講師など職を転々としたのち、結婚。だが、幼いころから両親が不仲で、大人の顔色ばかり見ていたあいめこさんは、夫に対しても気持ちをうまく表現することができないまま過ごしていたという。
夫に生活費を増やしてほしいことも言えず、親に子育てを頼むこともできず、どんどん孤立していった。一念発起して塾の仕事を再開したものの、育児のストレスと過剰な仕事で体調を崩して入院。
母親としての葛藤
でも、そんなとき病室で思いついたのが、ネットでお金を稼ぐことだった。育児に興味を示さない夫とも離婚を決意。シングルマザーとなり、2人の子どもを1人で育てるために在宅でできる仕事を考え、まずはパソコンを購入。'18年、アフィリエイト(成果報酬型)ライターになり、一介の元主婦は『あいめこ』としての第一歩を踏み出した。
子どもを寝かしつけた後、ほぼ寝ずに原稿を書き続けるも最初のころは結果が出せず、1年で7000円しか稼げなかった。
「それでも頑張ってこられたのは、人とのご縁のおかげです。あのときは人生のどん底でした。でも、くじけかけると誰かが仕事やなんらかのヒントをくれるので、見てくれてる人がいると思って踏ん張ることができました。あとは、“自分は絶対に成功する、私は大丈夫!”という自信があったんです」
その後もつらい冬の時代は続いていた。
「まず、最後までやり切ることを徹底したんです。自分の実力を100%出しきれなかった仕事は“お金はいらないからもう一度やらせてください”と何度も頭を下げました。そういうことを続けていたら次第にすべてがうまくいくようになったんです」
徐々に仕事は増えていき、前述のオンラインキャバクラの成功もあり、起業へとつながった。アフィリエイターを始めて3年、今から2年前のことだった。とはいっても、すべてが順風満帆というわけではない。仕事がうまくいけばいくほど『母親』として向き合わなければいけない問題と直面する。
子どもたちの年齢は現在5歳と3歳。社長として仕事をバリバリとこなす自分と、母親として子どもたちを最優先してあげたい自分とがせめぎ合い、苦しんだ。
「私は一家の大黒柱として仕事をしており、100%子どもに目を向けられないのも事実でした……」
悩むあいめこさんの背中を押したのは母親のひと言だった。
「もともと私の母は人材派遣会社の社長をしていてバリバリのキャリアウーマンでした。私の小さいころも仕事人間だった母が、“子ども(孫)の面倒は私がしっかり見るから仕事を頑張って”と言ってくれたんです」
SNSとの付き合い方
それで仕事に集中する覚悟が決まった。
さらにあいめこ流のモットーは、「人生の主役は自分であり、自分を幸せにしてくれるのも自分自身。今の自分にもまだ満足していないので、今日頑張るし、明日頑張るしという感じです」
そして、「今が一番幸せ」だと笑顔で続ける。
「目の前に頑張ることがある人生ってめちゃくちゃ幸せですよ。お仕事があって人に期待されて、子どもたちがいるおかげで、頑張らせてもらえてる、こんな使命をいただけている今が一番ハッピーです」
そんなあいめこさんがなりたい将来の自分は「圧倒的な女性経営者」だと明かす。
「目標は『日本で一番のSNSのマーケット会社になること』。具体的な数字で言うと、年商10億円です」そして「昔と今の私を比べたとき、決定的な違いは“人を守れるようになったこと”」と胸を張る。
「私がアフィリエイターを始めた、『あいめこ』になった初期は、たくさんの人に守ってもらっていました。だからこれからは、私から『恩送り』をしたいと思ってるんです。今までいただいた恩や愛や応援、励ましを当時の私のように困っている次の方に送りたいんです」
近々の目標は、シングルマザーや外へ働きに出ていきにくい人、障がい者ら社会的弱者と呼ばれる人々に対して雇用を生み出すこと、だという。
最後に危険性や問題点ばかりが強調される今のSNSの風潮について聞いてみた。
「SNSで見えてるものがすべてだと思ってしまうのが怖いですね。自我を傷つけてまでやるものじゃないと思います。SNSはあくまで娯楽。上手に付き合うことができれば、世界はもっと広がっていきます」
あいめこの軌跡と仕事が一冊に!
書籍『パソコンも持ってなかった私がTwitterで年商1億円稼ぐ理由。』
6月17日発売(主婦と生活社)定価:1540円
自身初の著書となる書籍を発売。予約段階からAmazonで話題になっている。本の内容はあいめこさん自身の生い立ちや『あいめこ』になるまでのストーリー。そして数々の失敗や挫折も綴られている。
注目したいのは、すぐにでも実践できそうなSNSのビジネス展開についてだ。「Twitterを伸ばす方法やバズりたい人が参考にできるハウツーも紹介しています。SNSで成功するノウハウとエッセイを組み合わせたものは、本のなかでも初だと思います」
原稿はすべて自分で書き、この半年間はパソコンに向かう日々だったとか……。「改めて自分のコンプレックスがわかったり、心のなかを掘り下げていく作業は精神的に重かったです(笑)。Twitterでは140字のなかで伝えたいことを簡潔に書くので、みなさんの反応は想像がつくんですけど、書籍の場合はわからない。なので、感想をお待ちしています(笑)」
あいめこさん 株式会社withera、株式会社sizuru wiz代表取締役。Twitter個人アカウント「時代と寝る女 あいめこ」はhttps://twitter.com/zidaitoneruonna
6月24日にTSUTAYA BOOKSTORE 渋谷スクランブルスクエアで出版を記念した初のセミナーを開催(オンラインでも配信)。https://store.tsite.jp/tbs-shibuya-scs眞/
取材・文/花村扶美