6月6日、修学旅行中の新潟市の中学生が十日町市にある越後妻有里山現代美術館『MonET(モネ)』に展示されていた『越後妻有 大地の芸術祭2022」』の作品2点を破損させたと十日町市が発表した。展示は4月29日〜11月13日までの145日間なされる予定だったが、生徒が壊したのは4月21日のことだった。
同芸術祭の実行委員長を務める関口芳史・十日町市長は定例記者会見で「大変残念な出来事でショックを受けている」とし、監視カメラの増設による対策強化の意向を示している。
破損したのは「LOST#6」(クワクボリョウタ作)と「Wellenwanne LFO」(カールステン・ニコライ作)の2点。
再公開については作者と相談中
『大地の芸術祭』のホームページには《急きょ非公開となった作品》として、『LOST#6』を挙げ、「来場者のマナー違反による接触などにより作品が破損した」として説明している。同作品の説明がHP上に記載されている。
《ゆっくりと動く光源が床に置かれた様々なモノの影を大きく壁に投影しながら移ろい、まるでこの地域を旅する車窓からの風景をみるような、あるいは映画をみるような魅惑的な世界が表される》
“様々なモノ”というのは十日町の織物機具の一部や農機具、この地域で使用されてきた用具などだ──。大地の芸術祭の事務局に今回の事件について問い合わせた。
──作品の現在の状況は?
「カールステン・ニコライさんの作品については4月28日には仮復旧をしている状態です。クワクボさんの作品については破損の状況がかなり大きいので、すぐに復旧というのは難しいといった判断がなされています。復旧になるのか、別のかたちで作品が公開するのかについては現在、ご本人とディレクターさんと相談中です」(担当者・以下同)
『MonET』展示室内には柵が設けられており、飛び越えなければ作品に近づけないようなつくりになっている。なぜこのようなことが起きてしまったのだろう。
「両作品とも2021年にPRしてから、展示の方法を変えていませんので、作品に近づきやすいといった状況はなかったと我々は認識しております」
作品に近づきやすい状況ではなかったが…
作品の破損についてはいつ発覚したのか。また、このようなタイミングで発表がなされたことについては、
「一部の生徒さんから先生のほうにお申し出があって、それから我々のほうに伝えていただいたというかたちです。発表については記者会見での市長の関口の言葉でお伝えすると“発表させていただく環境が整ったため”といったかたちです。新潟市さんや教育委員会さんと情報交換をしながら進めていくなかで、環境が整ったタイミングだったと」
──被害届を出した理由については?
「こういった事実があったということ、そしてどのような経緯で起こってしまったかを明らかにするために被害届を出すというかたちになりました。我々も状況を掴みきれていないところがありまして、いろいろなところを公正に調べる必要があると判断いたしました」
──被害額はいくらか?
「そちらについてはコメントを差し控えさせていただいております」
この『MonET(モネ)』は、修学旅行生などをよく受けれていれていた施設なのだという。
「近年のコロナもあり県外にあまり出掛けらられない状況のなかで、教育旅行の立ち寄り先として県内の小中学校、高校さま含め非常に人気をいただいており、利用が増えていました」
そんななかで起こってしまった今回の事件。改めて現在の心境について聞くと、
「4月29日に開幕した矢先のことでしたので非常に残念な出来事だったと思います。また、非常に人気のある作品でございましたので、美術館にお越しいただいたお客様に対して一部作品が鑑賞できなくなったことを改めてお詫びしたいです」
当日、生徒はどのようにして作品を破損させたのか。新潟市教育員会に問いあわせたが、
「当日の様子などついては現在捜査を行なっている段階でして、こちらのほうからお話することができない状況です」
十日町市は壊された作品の損害賠償を新潟市に求めているという。