大谷翔平(本人インスタグラムより)

「すべてが監督のせいというわけではないし、むしろ自分自身も調子が上がらない、申し訳なさというのはもちろんある。お世話になりましたし、本当に感謝しています」
 
 日本時間6月8日、エンゼルスのジョー・マドン監督が突如としてチームを離れることになった。チームが球団ワーストの12連敗と苦しむ中での解任劇。発表後にメディアの取材に応じた大谷翔平は“恩師”への素直な思いを語ったのだった。

「ショック療法とも言える大きな改革に踏み切ったものの連敗は止まらず、暗く長いトンネルからようやく抜け出すことができたのは6月10日のこと。先発登板した大谷選手が自らの本塁打などで得点し、レッドソックス戦に勝利。連敗は14で止まりました」(スポーツ紙記者)

 マドン監督といえば、大谷の二刀流をサポートしてきた“最大の理解者”。カブスを率いていた2016年にチームをワールドチャンピオンに導き、最優秀監督賞も3回受賞している名将で知られる。

「投手として登板した試合で指名打者(DH)を解除して投打同時出場をかなえ、登板前後の休養日を撤廃。マドン監督なしでは、大谷選手の今の活躍はなかったといってもいいでしょう。常識にとらわれない采配は大谷選手だけにとどまらず、ビハインドで満塁という大ピンチの場面で敬遠をしたり、外野手の4人シフトを敷いたり……。数々の奇策で野球ファンを沸かせてきました」(同・スポーツ紙記者)

 マドン監督の退任後は、3塁コーチを務めていたフィル・ネビン氏が監督代行となって指揮を執っているが、大谷の起用法に影響は出るのだろうか。

二刀流の継続は約束されたが…

「ペリー・ミナシアンGMは“翔平の起用法に変わりはない。ほかの選手にはできないことをやっているから”と二刀流の継続を約束。ネビン氏も“今までと同じだ。変わらないよ”と明言したので、すぐに封印ということはないでしょう。ただ、少し気になるのがマドン監督が発していた言葉です」(現地のスポーツライター)

 解任が告げられた日、マドン監督は複数の米メディアにこう漏らしたという。

「最近は現場がフロントに支配されすぎている」

大谷翔平との交際説が囁かれたカマラニ・ドゥン選手(インスタグラムより)

 この発言は、メジャーリーグでは主流になっている“データ野球”のことを指しているようだ。

 ここ数年、AIなどの発達によりデータ解析が進化し、情報量が急増。選手は自分の長所や弱点などを丸裸にされるようになった。試合中、ベンチでタブレット型端末を使って対戦相手のデータや自分のフォームを見直すのは選手のルーティンになっている。

「データによる分析は、今やメジャーリーグの基本中の基本。もちろんマドン監督はその流れには対応してきました。そのうえで、長年培ってきた自身の観察眼や直感も大事にしたかった。解任直後も米国メディアに“私はアナリティクスが大好きだ。だが、無理強いされるのはごめんだ”とこぼしていましたからね。選手との対話を大事にしてきたベテラン監督だけに、数字ばかりにとらわれ、現場の空気感や感覚がわからないフロント上層部が頭ごなしに指示してくることにウンザリしていたようです」(前出・現地のスポーツライター)

“マドンイズム”は継承されるのか

 ファンたちの知らないところで、修復できないほどの亀裂が入っていたようだ。マドン監督は解任時の会見で「ただ球場に来て、野球を楽しむことができなくなった」とも嘆いていた。

「いくら“マドンイズム”を継承するとはいっても、フロント主導の試合運びとなれば、大谷選手の起用法に暗雲が立ち込める可能性もあると思います。今はネビン氏が監督を代行していますが、次に就任する監督によって大谷選手の今後は大きく変わってくるでしょう。昨年に比べると結果こそ出ていませんが、彼の実力的にはまだまだメジャーで二刀流を続けられると思うので、その思いを汲み取ってくれる監督に来てほしいですね」(前出・スポーツ紙記者)

「彼のことが大好き」と、シンプルな言葉で大谷との信頼関係を築いてきた名将はもういないけれど、これからも二刀流を楽しませてほしい!