《こういう人のせいで野球ファン全体が変な目で見られるんだよ》
SNS上で厳しい意見が出たのは、6月5日に起こった事件に対してだ。
「甲子園球場で行われた阪神タイガース対日本ハムファイターズの試合を観戦していた男性が、警備員に暴行を加えた疑いで現行犯逮捕されました。阪神ファンが陣取る一塁側で観戦していたことから、SNSでは《また阪神ファンか》というような声もありました」(スポーツ紙記者)
味方も敵も、両方いい気はしない
熱狂的として知られる阪神ファン。数々の“逸話”が野球関係者の間では有名だ。
「相手投手が打ち込まれて降板するとき、応援団が太鼓やトランペットで『蛍の光』を演奏していました。以前は、ライバルである巨人のマスコット・ジャビットのぬいぐるみを鎖でつなぎ、球場内を引きずって歩くファンも。ほかにも下品なヤジや、相手チームの応援歌を過激な言葉を使った替え歌にして歌うこともあります」(同・スポーツ紙記者)
だが、ファン全員がこの状況を容認しているわけではない。都内にある阪神ファンが集う居酒屋に通う男性は「良くも悪くも阪神ファンは熱い人が多い。でも、問題を起こす人と一緒にはしてほしくない」と“身内”からも待ったの声。さらに、選手からもこんな意見が……。
「阪神に所属していた能見篤史投手は別のチームへの移籍が決まった後、出演した関西ローカルのテレビ番組で“(マナーの悪い観客は)何回も見たことがある。『蛍の光』とか改善してほしい。味方も敵も、両方いい気はしない”と苦言を呈して、物議を醸しました。また、同じく阪神の藤浪晋太郎投手はテレビで、本拠地の甲子園で聞こえる、ののしるようなヤジに“ホームのようでアウェーのような(感じ)”と過去に明かしていました」(前出・スポーツ紙記者)
あの王貞治さんも人種差別を
野球だけではない。サッカー・Jリーグの横浜FCは5月3日に、禁止行為であるスタジアムでの大声やヤジ、選手への侮辱的な発言、行為があるとして、公式サイトで注意喚起。ガンバ大阪では5月21日に行われた試合で威嚇行為や侮辱的行為、試合運営妨害があったグループのメンバー全員を無期限入場禁止とした。
一方、海外でも許しがたいシーンが。
「日本時間3月13日に行われた、テニスのBNPパリバ・オープンの女子シングルス2回戦で大坂なおみ選手が敗退。その試合中、観客席から“ナオミ、最低”というヤジが飛びました。これに大坂選手は動揺。主審に“試合を止めて、観客を外へ出して”と訴えましたが、試合は続行され、ベンチで涙を拭う場面も」(同・スポーツ紙記者)
度を越したファンのマナー問題に、スポーツライターの梅田香子さんはこう話す。
「あの王貞治さんも人種差別を含んだヤジに対して怒ったことがありましたが、差別的なものは、絶対にやめるべきです。プロ野球では、誹謗中傷をなくそうという時代の流れと、女性客を取り込もうという球団の戦略もあり、下品なヤジや行為をなくして、球場の雰囲気を良くしようと努力していると思います」
かつて「ヤジはプロ野球の華」という言葉もあったが、誰もが安心して観戦できるように、“やらかし”は退場してほしい。
梅田香子 '86年、『勝利投手』で第23回文藝賞佳作を受賞。その後はスポーツライターとして、MLB、NBA、フィギュアスケートなど幅広く取材活動を行っている。'09年から在米