女優でモデル、歌も歌うし、ジュエリーのデザインも。もうすぐ70歳になる夏樹陽子は今もマルチに活躍している。
「還暦のときにたくさんバラエティー番組の仕事がきたんですよ。やっと落ち着いたら、もう70歳でしょ。でも、今が楽しいんですよね。ディナーショーやライブを毎年10か所くらいやっていたんですが、コロナ禍でキャンセル。そういうときもあるって考え直して、ワンコと遊ぶために『アルファード』買いました!」
1人で乗るのは鮮やかなイエローの『フェラーリ』。デビューのころと変わらないスタイルだからサマになる。
女優デビューは千葉真一の相手役
「スリーサイズは上から85、65、90。昔の衣装はまだ着られますね。学生のときにスカウトされてモデルに。男女雇用機会均等法ができる前は男性のように稼げなかったそうですが、モデル業は男女差がなかったんです。5年やってトップまでいったときに、モデルはおばあさんになったらできないけれど、女優ならばできるかなと思って転身しました」
デビュー作は'77年の映画『空手バカ一代』。千葉真一さんの相手役だった。
「空手ブームだったんですよね。初めてで自信なかったんですが、千葉さんから“初めてにしては、よくやってるよ”と言っていただき、ホッとして涙が出ました。モデルあがりなんて1年もたないだろうと言われていましたが、3年、5年と頑張って。結婚したときに仕事をやめてもいいかなって思ったけど、やっぱり女優をしているときがいちばん、心が安らぐことに気づきました」
同じ年に公開の映画『トラック野郎・度胸一番星』では、菅原文太さんと共演した。
「撮影は朝9時からですが、主役の文太さんは、お昼になっても現場に来ない。夕方になって現れて“オッ”と手を上げて撮影所に入ってくる。“待たせて悪かった”とかはなし。『トラック野郎』は当時“ドル箱”だったから、主役やっている人はこんな感じなんだなって」
大御所俳優との思い出
2年目からは大人気ドラマ『暴れん坊将軍』に出演。
「4年間、出させていただきましたが、私の役は1回の放送で6~7人殺すんです。1年で何人殺しているのか計算しちゃいました(笑)。主演の松平健さんは1つ年下ですが、私たちは2人ともデビューしたばかり。勝新太郎さんがよくご飯に連れていってくださって。ディスコで踊ったりして遊びましたよ」
'80年から始まったドラマ『ザ・ハングマン』で共演した植木等さんにも、可愛がってもらった思い出がある。
「植木さんは大正15年生まれで、私の父と同じ年でしたから、父親のようで。伊勢市出身の同郷でもありました。“陽子ちゃん、どんなに忙しくても自分が女であることを忘れたらダメだよ”って。仕事ばかりではなくて、ちゃんと恋もしなさいってことだったんでしょうね」
大御所俳優の三國連太郎さんや森繁久彌さんにも目をかけてもらった。
「森繁さんとは家が近所だったので、いろんな席に誘われました。私がフェラーリで遊びに行くと目を丸くして“みんな、陽子がフェラーリでやってきたぞ!”って。車好きでしたね。腕を組んで一緒に花見も行きました。帰ると“陽子、今から風呂に入るけど一緒に入らないか”って(笑)。“今日は遠慮しときます”って断ると“入ろ、入ろ”って腕を引っ張ってきたり(笑)」
森繁さんに誘われてクレー射撃が趣味に。5年前から女性として初の『日本クレー射撃協会』理事を務めている。
「三國さんとは、沼津の家に泊まりで遊びに行かせてもらったり、お買い物に同行したり。役者としては、あるときは農家のおじいさん、あるときは頭の切れるお医者様になり切る。お百姓さんのときは足の裏まで真っ黒にして、爪の間に土を入れます。役のためなら歯を抜いちゃうような人ですから。
森繁さんはどの役でも森繁さん。全然タイプが違いますけれども、このおふたりから“一流の役者”としての生き方を学びました」
梅宮辰夫さんとはマンションが隣同士で交流があった。
「あるとき梅宮さんから“陽子、今は家に帰ってこないほうがいい。陽子を狙ってマスコミがいっぱい集まっている”という電話が。おかしいな、騒がれるようなことはしてないのにって思ったら、また電話があって“陽子、違った。ウチのアンナだった”って(笑)。アンナちゃんが羽賀研二さんとのことで騒がれているときでした」
後輩ではジャニーズとの共演も多い。郷ひろみとはモデル時代にロッテのCMで共演。
サーキットで近藤真彦が運転する車の助手席に座ったことも。16歳当時の岡本健一とも共演したが、寝てばかりなのに台本を完璧に覚えていて驚いた。少年隊とも深い縁が。
「今年2月にやった『TARKIE THE STORY』というミュージカルは、カッちゃん(植草克秀)が演出をしていたんです。“お久しぶりですね”って挨拶に来てくれました。雑誌の取材でニッキ(錦織一清)の車について、私がインタビューしたことがあって、それから何度も少年隊のコンサートを見に行ってるんです。ヒガシくん(東山紀之)は京都での撮影のとき、着流しで歩いていく後ろ姿がカッコよくて。お尻がピッと上がっていてね」
SMAPのメンバーが次々と私の部屋に来て
SMAPとはデビュー2年目の森且行と共演。
「私が森くんのお母さん役でした。撮影現場に赤のフェラーリで行っていたら、森くんが“すっげえなー”ってずっと見ていたんです。次の現場まで乗ってく?って聞いたら、“乗りたい”って言うので短い距離でしたが、彼を乗せて走ったんです。すごく喜んで、取材で来ていた雑誌のカメラマンに記念写真も撮ってもらっていました」
それがきっかけで、SMAPのコンサートに招待されるように。
「控室も用意してくださって、メンバーが全員、順番に挨拶に来ましたよ。木村くんや中居くんも“森がお世話になってます”って。礼儀正しいのよね。ジャニーさんがきっちり指導していたんじゃないかしら。それから4年くらいして、森くんはジャニーズを辞めました。彼にはやっぱり夢があったんだなって」
バラエティー番組に出演しながら、ドラマでも欠かせない存在に。
「2時間ドラマは制覇しました(笑)。月曜ドラマランド、火曜サスペンス、水曜ドラマ、木曜ゴールデンドラマ、金曜サスペンス、土曜ワイド劇場すべて出ました。いい役、悪い役、殺される役、全部やっています」
最近はYouTubeチャンネルで動画の配信も。
「最初は化粧法などをやっていたんですが、あるとき車で走っている動画をアップしたら、バズりました。近いうちにサーキットで“私と一緒に走ろう”みたいなイベントもしたいと思います」
10月24日にはデビュー45周年のディナーショーを都内で開催予定。
「これからの夢は、ずっと若いって言われて、私のフェラーリの隣にイケメンくんを乗せることかな(笑)」
ますます意気盛んだ。