羽生結弦(JMPA代表撮影)

 羽生結弦が出演するアイスショー『Fantasy on Ice』が、後半戦に突入した。

「6月17~19日まで神戸公演が行われました。前半戦から出演者が変更になり、新妻聖子さんやバイオリニストのNAOTOさん、SNSの動画投稿をきっかけに若者から絶大な支持を集めるシンガー・ソングライターの宮川大聖さんなどが出演。会場での観覧のほか、国内の映画館と台湾の映画館でもライブビューイングが行われる盛り上がりとなりました」(スポーツ紙記者)

 前半では、スガシカオとのコラボレーションで『Real Face』を披露した羽生。今回も意外な曲での演技を見せてくれた。

羽生選手は宮川さんと『レゾン』という楽曲でコラボレーションしました。ファンの間では事前にSNSで、どのアーティストと何の曲をやるか、予想合戦が繰り広げられていましたが、この曲を挙げていた人はほとんどいませんでしたね」(同・スポーツ紙記者)

国際スケート連盟が新ルールを可決

 この選曲によって、同世代コラボが実現。

「タイトルの『レゾン』はフランス語で“理性”や“理由”“分別、判断力”といった意味を持ちます。今年4月に発売された宮川さんの最新アルバム『ファンタジア』に収録されていて、“何度も聴きたくなる”と人気の楽曲です。宮川さんは25歳、羽生選手は27歳と年齢が近いので、彼ら自身も楽しめる時間だったのではないでしょうか」(音楽ライター)

 多くのファンが、羽生の迫真の演技に魅了された。しかし、その直前にはある出来事に不満の声が上がっていて……。

「6月6~10日にタイのプーケットで、国際スケート連盟の総会が行われたんです。連盟役員の選挙や、来季以降のルールなどについて話し合われましたが、ルール変更の内容には、賛否両論があるようです」(前出・スポーツ紙記者)

中学1年のあどけない羽生結弦と田中刑事('07年『全日本ノービス選手権』公式パンフレットより)

 複数のルール変更が可決されたが、特に物議を醸しているのは以下だ。

フィギュアスケートの得点はジャンプやステップなどの技を評価する“技術点”と、表現力を評価する“演技構成点”の合計で決まります。この“演技構成点”に含まれる項目を5つから3つに減らすことが決定しました」(スポーツライター)

「これで最高点なの?」という場面も

 どのように変わるのか。

「以前まで評価されていたのは“スケーティング技術”“技と技のつなぎ”“曲の解釈”“構成”“演技力”の5項目でした。ここから、“技と技のつなぎ”“曲の解釈”の2つがなくなります。新たな評価項目は“スケーティング技術”“構成”“プレゼンテーション”の3つとなります」(同・スポーツライター)

 この変更が、羽生を“狙い撃ち”していると言われている。

「ゆづくんは、昨年末の全日本選手権のショートプログラム『序奏とロンド・カプリチオーソ』の“曲の解釈”で満点の評価を得ています。それに、“技と技のつなぎ”となるステップやターンも難易度の高いものを美しくできるのは彼くらい。なので、今回の変更は完全に“ゆづ潰し”にしか思えなくて……」(羽生ファンの女性)

 はたして、ルール変更の目的は何なのか。スポーツジャーナリストの折山淑美さんに聞いた。

「演技構成点は、どの選手も全体的に点数が上がっている傾向にありました。例えば、2006年トリノ五輪の荒川静香さんのころなどは10点満点中9点が出ることはほとんどありませんでしたが、近年では“これで高得点なの?”という場面もありました。このように、審判の採点そのものがやや形骸化してしまっている傾向を改める意味もあるでしょう」

織田信成(写真左)と羽生結弦。リハーサル写真の投稿にはIOC公式も反応(織田のTwitterより)

採点方法の変更で手探りに

 選手たちは、この変更を受けて、戦術を立て直す必要に迫られる。

「それも結局は、どうなるか……。採点の方法が変わると、審判もはじめは手探りですから。なので、選手たちは実際の試合でどういう点が出るかを確認しないといけません。そのため、シーズン前は試合を想定して練習しつつも、10月下旬から始まるグランプリシリーズなどで国際試合での審判の実際の採点を経験しながら、プログラムに修正を加えていくことになります」(折山さん)

 来季以降の出場について羽生はまだ明らかにしていないが、戦いながら“ゆづ潰し”に立ち向かっていくことになる。

「羽生選手はもうベテランですし、十分に対応できると思います。コロナ禍以降、多くの試合を1人で戦ってきて、北京五輪もコーチなしで乗り越えたことで、揺るぎない“レゾン”を手に入れたことでしょう」(前出・スポーツライター)

折山淑美 '90年代初頭からフィギュアスケートを取材し、'10年代からは羽生結弦を丹念に追っている。'21年には羽生との共著『羽生結弦 未来をつくる』(集英社)を刊行