セルフレジがもたらす未来と問題は?(※画像はイメージです)

 スーパーやコンビニを中心に小売店で導入が急速に広まっている『セルフレジ』。近年多くの人に身近な存在となっている。その背景は─。

いちばんは効率と利便性です。スーパーなどでは人によって買い物量が大きく異なり、それらの客が限られた同じレーンに並ぶことで、会計までにかかる時間が人によって大きく異なる。店舗レイアウト上、レーンを増やすのには限界があるため、新たな解決策としてセルフレジが考案されました

 そう話すのは、ITジャーナリストでモバイル決済に詳しい鈴木淳也さん。

「日本ではスキャン処理にいちばん時間がかかることを考慮して、スキャンは店側、支払いがセルフと分離された“セミセルフ”の導入が、通常の有人レーンでも増えています。

 欧米などではカード決済比率が高いため個別の支払いにかかる時間はそれほど多くないのですが、日本では現金比率が高めなのと、決済手段が多様でやはり支払いに時間がかかるという理由もあり、諸外国ではあまりみられない『現金自動支払機つきセミセルフレジ』が導入されています」(鈴木さん、以下同)

コンビニでもセルフレジを見かけるが……。

日本は現金決済や支払い手段の多様さで欧米より時間がかかりがち(※画像はイメージです)

「コンビニの窓口業務が複雑でセルフレジで対応できる範囲が限られる、セキュリティーで問題があるなどの理由からセルフレジを導入したくないコンビニオーナーもいます。しかし、設置の拒否はできないので、導入されたものの、常に利用停止されているケースもあります」

 コンビニのセルフレジの仕様は各社さまざま。大手3社を比較すると……。

「使い勝手でいえばセブン-イレブンがいちばんだと個人的には考えます。ただ同社はセルフレジを一部店舗限定で展開を始めたばかりです。セブンの難点は現金自動支払機がセットで、高価かつ設置場所を選ぶということで、広く展開するのは時間がかかる、あるいは難しいと判断します」

 ほかの2社は。

「ファミリーマートのセルフレジは有人レジとも異なる独自デザイン、ローソンは通常のレジと共通になります。使い勝手は両者似ており、ポイントカードの併用もできます。ローソンに関して1つ優れているのは、実はリバーシブル構造になっており、時間帯によってカウンター越しに会計を行える有人レジにし、それ以外の時間帯はセルフレジにできるため、設置に無駄がないという点が特徴です」

 街の利用者にも話を聞いた。

「感覚ではありますが、セブンはほかのコンビニと比較してICカードやスマホでの決済の際のスピードがめちゃくちゃ速い。ほかはカードをかざしてひと呼吸置いて“ピッ”って反応するけど、セブンのレジは読み取り機とかなり離れた状況でも即反応してくれる。ただ、無人のセルフレジが少なくて店員とのやりとりが生まれるのが面倒」(30代・男性)

「ファミマは無人のセルフレジで、店員さんとやりとりをせず、イヤホンをしたままとかで会計できるのがすごく楽。レジ袋もバーコードを読むだけ。“レジ袋いりますか?”“何枚?”とかタッチパネルでいちいち選ばせる店もあるので。あとレジが小型なためか複数台置いてあるのも良いと思う」(20代・女性)

「ローソンは酒やタバコ、からあげとかの惣菜がセルフレジで買えるのがすごく良い。けど、最初の画面でポイントカードの有無を選択させたり、レジ袋の有無、会計方法の選択とか、ほかと比較して余計な画面が多いので時間がかかる気がする」(40代・男性)

セルフレジで増加!万引きへの対策は

セルフレジ(※画像はイメージです)

 便利なセルフレジだが、課題も。アメリカの調査になるが、買い物客の5人に1人が“セルフレジの小売店で何らかの商品を盗んだことがある”と答えている。また、日本では'22年1月に奈良市内のスーパーのセルフレジにて、一部の商品の代金を支払わなかった女性が窃盗罪に問われたが、奈良地裁は「ほかの商品の精算に気を取られて、精算を忘れても不自然ではない」として無罪を言い渡した。

 “万引きをしても無罪”とあっては店側としてはたまったものではないだろう。このような課題や“未来”について、セルフレジの開発側にも話を聞いた。セキュリティー面の課題は……。

「消費者の“行動”に対し、不正的な行動をした場合、AIでそれを検知できるようにするという研究と製品化を進めているところです。現状、リアルタイムに不正行為を検知するのはスキャン前と後の商品の重量差を認識した場合、エラーとなる機能です。それをAIによってリアルタイムに検知できるように進めております」

 そう話すのはセルフレジを製造・販売する『東芝テック株式会社』リテール・ソリューション事業本部の開発担当者。

 セルフレジにおいては、《子どものセルフレジって、ありなし?》という点も時おり話題となる。親が“お手伝い”として商品スキャンを子どもにさせることによって混雑が発生してしまうケースだ。

「お子様でも使いやすいよう、商品バーコードをより高い精度で読み込むレジというものを開発していかなければならないと考えております。また、お刺身などスキャンする際に傾けづらい商品も簡単にスキャンできるよう、さまざまな角度からスキャンが可能なレジも開発しております」(『東芝テック』開発担当者、以下同)

セルフレジの“お得さ”

 今後はより客側の作業の“省力化”だけでなく、“お得さ”も加わる。

「カートにPOS機能の付いたタブレットを載せ、お客様に商品をその場でスキャンしていただくことで、レジに並ぶ必要もなくスムーズなお会計を実現しています。たとえばある商品をスキャンすると、それに関連するお得なクーポンがお買い物中に発行されるなどの機能も搭載しています。また、お客様自身のスマホで商品の登録をしていただく形のものと両方開発を進めています

(完全)セルフレジの“難点”としては、消費者自身が商品のバーコードをスキャンし登録する“手間”が生まれたことだ。有人であれば商品スキャンは店員がやってくれた。この部分の進化は─。

「商品にタグを付けて一括でスキャンする方法もありますが、1点1点商品に直接タグを付けなければならないこと、またタグ自体が高価でありコストがかかってしまうのが現状といえます。弊社ではバーコードを読み取るのではなく、商品の“画像”を認識して登録処理する技術の開発を進めています」

 この技術の向上により、野菜や果物といった“ハダカ売り”の商品も判別・読み取りが可能となる。

「今年の展示会で、“画像認識のみ”で商品を判別、読み取るカートを出展しました。商品をカートに入れた際に商品を特定する技術です」

 レジが発明されたのは1879年のこと。それから140余年。次なる進化は─。