食パンランキング 撮影/山田智絵

 暮らしに不可欠な食品や日用品の値上げが相次いでいる。朝食の定番にしている人も多い食パンもそのひとつだ。今年4月に輸入小麦の価格が17%引き上げられ、食パンの主原料である小麦粉も値上がりした。

 副材料や物流費も高騰し、山崎製パンや敷島製パンなどの大手製パン会社は、7月から食パンや菓子パンを最大で9%ほど値上げすると発表。

 そんなインフレのあおりか、生でもおいしいと話題になった“高級食パン”のブーム終焉が噂されている。一時は朝イチで予約しないと入手困難な専門店もあったが、今や閉店した店も多い。そこで改めて注目したいのが、スーパーやコンビニで買える“普通の食パン”だ。

身近で買える『食パンランキング』

「高級食パンブームの陰で、従来の製パン会社は、求めやすい価格でおいしい商品を提供する企業努力を地道に続けていたと思います」と、パンを使った料理教室も開催しているベテラン料理研究家の林幸子さん(以下「H」)。

 前身の『ためしてガッテン』から23年間、番組の料理チームを率いたNHK『ガッテン!』の元スタッフの石川範子さん(以下「I」)も「時代の流れに合わせ、生のおいしさも追求したプライベートブランド(PB)商品を開発するなど、コンビニの進出も目覚ましいですよね」と話す。

 今回は、おふたりに1斤200円以下の家計にやさしい食パン20種類を実食してもらった。「生のまま」「トースト」「コストパフォーマンス」の3項目で評価し、★1つにつき1点で合計点を出したランキング結果をご紹介。

第1位/FAMIMA BAKERY『小麦香る食パン』(神戸屋 118円)

「余計なものを使わずに作られたと感じる、シンプルで雑味のない味。トーストはさっくりとした食感で、毎日食べる食パンとしておすすめ。これがコンビニで118円で買えるとは驚き」(H)、「生で食べるとほんのりとした甘みがある。焼くと心地のよい軽い食感になり、いい意味で強い個性がなく、バターやジャムなど何にでも合いそう。コンビニPBのポテンシャルを感じる」(I)

FAMIMABAKERY『小麦香る食パン』(神戸屋118円) 撮影/山田智絵

第2位/SEVEN PREMIUM『低温長時間発酵 しっとり食パン』(武蔵野フーズ 127円)

「選外になったもうひとつのセブンイレブンのPBは焼くとかたさを感じたが、こちらはカリッとしておいしく、トーストにするのがおすすめ」(H)、「発酵特有の酸っぱい香りと酸味があり、天然酵母のパンが好きな人は生で食べるのもいいかも」(I)

SEVENPREMIUM『低温長時間発酵しっとり食パン』(武蔵野フーズ127円) 撮影/山田智絵

第3位/LAWSON『香り豊かなふっくら食パン』(山崎製パン 160円)

「生地の気泡が小さくてキメが細かく、生で食べるとしっとり感ともっちり感が両方あっておいしい」(H)、「同じローソンPBでも、選外の商品には使われていない『バター入り小麦粉調製品』のおかげか、バランスがいい」(I)

LAWSON『香り豊かなふっくら食パン』(山崎製パン160円) 撮影/山田智絵

第4位/Pasco『超熟(R)』(敷島製パン 178円)

「生で食べると耳まで甘く均一な味で、いい意味であまり特徴がない。焼いても甘みは残り、生で食べたときと印象は大きく変わらなかった」(H)、「ふんわりとした生地で、かむほどにいい甘みを感じる。トーストすると、カリッとしながらもっちりとした食感もあり無難なおいしさ」(I)

Pasco『超熟(R)』(敷島製パン178円) 撮影/山田智絵 ※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。

第5位/ヤマザキ『ふんわり食パン』(山崎製パン 167円)

「生地は水分が多すぎるような食感で甘みも強い。焼くとさらに甘くなり、食パンではなく菓子パンを食べている印象」(H)、「生のままのおいしさを味わえる新しい試みの食パンで、耳までやわらかく食べやすいので子どもにも人気。フルーツサンドに合いそう」(I)

ヤマザキ『ふんわり食パン』(山崎製パン167円) 撮影/山田智絵 ※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。

第6位/ヤマザキ『スイートブレッド』(山崎製パン 116円)

「そのまま食べると最初に甘みを感じる。トーストすると香ばしさよりミルクの香りが立ち、かむとすぐにつぶれるせいか、かたさを感じた」(H)、「生はマーガリンの香りと甘みがあり、ねっちりとした食感。焼くとその特徴がなくなり、軽さだけが印象に」(I)

ヤマザキ『スイートブレッド』(山崎製パン116円) 撮影/山田智絵

第7位/フジパン『本仕込(R)』(フジパン 149円)

「生の生地はミルキーな甘さと塩けがあり、かたさを感じる。焼くと味のバランス良好になり、歯切れもよい」(H)、「耳特有の存在感に食パンらしさを感じるが、あっさりしていて香りもなく、際立った特徴はない。トーストはかみごたえのあるしっかり食感」(I)

フジパン『本仕込(R)』(フジパン149円) 撮影/山田智絵

第8位/ヤマザキ『くらし良好 味わい食パン』(山崎製パン 95円)

「もっちりとした生地と、特有のかたさのある耳のコントラストが印象的」(H)、「あっさりとしているが耳は存在感があり、焼くとカリッと香ばしい」(I)

ヤマザキ『くらし良好味わい食パン』(山崎製パン95円) 撮影/山田智絵

第9位/TOPVALU BESTPRICE『朝の定番 食パン』(第一屋製パン 105円)

「生で食べると生地が口の中ですぐにぺちゃんとつぶれてしまい、トーストしてもかたさが気になった」(H)、「生で食べた第一印象は軽い食感。かんでいると甘みが出てくるが、全体的に平板な印象。105円と値段はお手頃だが買わないかも」(I)

TOPVALUBESTPRICE『朝の定番食パン』(第一屋製パン105円) 撮影/山田智絵

第10位/しっとりやわらか『もちふわ』(神戸屋 149円)

「ちょっと行きすぎたぜいたくな感じ。トーストするとより際立ち、クドく感じた」(H)、「“もちふわ”という生のおいしさは評価したいが、焼くとその特徴がなくなり、落差を感じた」(I)

※商品の価格(税込み)は編集部調べ(2022年5月現在)

お話を伺ったのは……

石川範子さん●テレビや雑誌などで食まわりの仕事を長年務めているフードオリジネーター。一流の料理人や調理科学の研究者などとともにおいしさを日々探求している。NHK『ガッテン!』の食専門のディレクターを23年務めた。

林 幸子さん●テレビや雑誌、メーカーの商品開発などで大活躍の料理研究家。豊富なアイデアと確かな技術で魅力的なレシピを生み出す。主宰する料理教室「アトリエ・グー」も大人気。
料理研究家・林幸子さんと石川範子さん

(取材・文/草柳麻子)