≪いらつく≫≪はっきりいって面白くない≫
作家の林真理子が3週間前に発売された『週刊文春』(6月9日号)の連載エッセイにこう書いて、現在放送中のNHK朝ドラ『ちむどんどん』を批判した。
≪朝ドラのヒロインは、私らオバさんに好かれるかどうかが生命線だと思うのだが、かなりいけすかないコになってしまっている。可愛気がないのだ≫(林真理子の連載エッセイ「夜ふけのなわとび」1747回より)
もともと朝ドラ好きの林。とくに『ちむどんどん』の前作『カムカムエヴリバディ』は「最近これほどはまった朝ドラはない」というほど好きで、自分の新刊を『カムカムマリコ』というタイトルにしたほど。そんな林が「いらつく」とまで言ってこき下ろしのだから、出来にかなり不満があったのだろう。
しかし一転、面白くなっている…?
たしかに、視聴率も15%前後といまひとつふるわない『ちむどんどん』。毎朝の放送後にはSNS上に「#ちむどんどん反省会」「#ちむどんどん離脱」といった、ネガティブなタグがついたツイートで盛り上がるという状況だ。
ところが、である。23日発売の『週刊文春』(6月30日号)を読んでみると、林の『ちむどんどん』に対する印象がガラッと変わっているのだ。
≪この頃『ちむどんどん』は、徐々に面白くなっている≫(連載エッセイ「夜ふけのなわとび」1750回より)
たった3週間で何が……。『ちむどんどん』のストーリーが劇的に変わったのか?
「先月下旬の放送回からずっと、上京したヒロインがレストランで働く様子が描かれています。ストーリーに特に大きな変化はありません」(テレビ誌ライター)
実は、大きな変化があったのは林のほうなのだ。脱税事件で前理事長が辞任したことを受け、林は母校である日本大学の次期理事長に就任することが内定。そのことが決まったのが、ちょうど3週間前。時系列で追うと、冒頭で引用した3週間前の『週刊文春』の原稿が書かれたのは、理事長就任が決定する前、ということになる。
脚本家の羽原大介氏は“日本大学の卒業生”
先々週発売の『週刊文春』(6月16日号)では理事長就任の話を書いているので、23日発売の原稿は間違いなく、就任決定後に書かれたもの。日本大学の理事長になることが正式に決まったとたんに『ちむどんどん』への印象が大きく変わったのだ。なぜなのか?
「『ちむどんどん』の脚本家の羽原大介氏が日本大学の卒業生だと知ったからでしょうね(笑)。そのことについても連載エッセイ中で≪だからと言うわけではないが≫と関連を否定していますが、急にほめ出した理由はそう推測するのが自然です。ちなみに、中退ですが、『ちむどんどん』のヒロインの黒島結菜さんも日本大学です」(前出、テレビ誌ライター)
日本大学出身者は、近年、アメリカンフットボール部の危険なタックル問題や前理事長の脱税事件などがあり、肩身の狭い思いをしてきただろう。そんな“同志”を母校愛の強い林は守りたいと思ったのかもしれない。
ただ、一部の人間だけが長年にわたって利権を得ていた、旧態依然とした体質の日本大学の改革は、切るべきものは切る非情な決断が迫られることもあるだろう。「私はしがらみが何もない」と林真理子は言うが、本当にしがらみなく改革できるか。その言葉を信じ、手腕に期待したい。