『相棒』に出演する水谷豊と寺脇康文

 亀山薫が帰ってくる! ファンにとっては、うれしいサプライズとなった。

「水谷豊さんが主演するテレビ朝日系の人気ドラマシリーズ『相棒』シーズン21が10月からスタート。4代目相棒の冠城亘を演じた反町隆史さんが卒業し“新相棒”が誰になるのかが注目されていましたが、初代・相棒の亀山薫を演じた寺脇康文さんが、5代目として復帰とは、さすがに誰も予想していませんでした」(テレビ誌ライター)

“次の相棒探し”が難航していた

 相棒は'00年に単発の刑事ドラマとして始まり、好評を受けて'02年から連続ドラマ化。水谷が演じる警視庁特命係の杉下右京が相棒とともに難事件を解決するというのが基本のストーリーだ。

「亀山薫は'08年のシーズン7で警察官を辞職し、政治腐敗が進む架空の国“サルウィン”に正義の精神を教えるため渡航。かわって及川光博さんが2代目相棒に。続いて3代目は成宮寛貴さん、4代目に反町さんと続いていきました」(同・テレビ誌ライター)

 代替わりすることでマンネリに陥らず、現在ではテレ朝を代表する人気ドラマとなった本作。一度解消した相手と再びタッグを組むのは、今回が初めてとなるが、どうやら深い事情があるようだ。

劇中に登場する木札。また2人の名前が並んだ(公式インスタより)

「実は、反町さんの後の相棒探しが、かなり難航していたんです。相棒役を務めるにはある程度知名度があって、水谷さんが評価する役者さんであることが大前提。最大のネックは、毎年8月ごろから翌年の3月まで、つまり年間の3分の2という長期にわたる撮影期間、スケジュールを空けなければいけないことでした」
(制作会社関係者)

 新たな相棒の候補として、向井理、稲垣吾郎、福士蒼汰など、さまざまな名前が取り沙汰されていた。

以前は、仲間由紀恵さんも女性初の相棒として、候補に挙がったこともありました。しかし、当時彼女が出演していた舞台『放浪記』などもあってスケジュールが合わず。今は内閣情報官として不定期に出演しています。

 六角精児さんも優秀な鑑識官の米沢守として主演映画が作られるほど作品に欠かせない存在でしたが、ほかの作品に出演できないことから、水谷さんに相談のうえ、シーズン14からレギュラーを降板。不定期出演に切り替わりました。人気俳優を相棒として起用するのはハードルが高いんです」(同・制作会社関係者)

「70歳をひとつの節目にする」

 選考が難航したとはいえ、寺脇が復帰するのは難しいと考えられていた。

「シーズン7で寺脇さんが降板したのは、水谷さんとの軋轢が原因だといわれています。演技や見せ方に関して考えが食い違い、水谷さんの不興を買ってしまったそうなのです。寺脇さんは、役のとおりの熱い人ですから、プライベートでも冷静沈着な水谷さんと波長が合わないときもあったんです」(スポーツ紙記者)

 降板後は疎遠になっていたようだ。

「'12年に亀山のライバル的存在の捜査一課員を演じた川原和久さんが結婚した際、披露宴には水谷さんや及川さん、成宮さんなど、過去の相棒が勢ぞろいしましたが、寺脇さんの姿はありませんでした」(同・スポーツ紙記者)

 だが、関係は雪解けムードになっているという。

鈴木砂羽と六角精児

「以前から水谷さんは“70歳をひとつの節目にする”と話していて、幕引きを意識するようになりました。それで、寺脇さんとの“和解”も考えるようになったのでしょう。コロナ禍で寺脇さんの舞台活動が減り、スケジュールが空いていたことも幸いしました」(前出・テレビ誌ライター)

 水谷は寺脇の復帰について、番組の公式ホームページで《亀山くんが帰ってくる。そんな日が来ることを、杉下右京は何度か夢見ていたに違いない。過去に戻るのではなく、新たな未来にまた二人で向かうための再会を、右京は淡々と待っていたに違いない》とコメント。

 寺脇も《役者人生の師匠と言っても過言ではない、水谷豊さん演じる「右京さん」と、また“相棒”として、夢のような時間をともにできることを本当に嬉しく思っております》と喜びの言葉を綴っている。

「現在、相棒として出演回数の最多記録は反町さんが持つ138回。それまでは寺脇さんの124回が最多でしたから、今回の復帰で再び最多記録の座を奪還するでしょうね」(前出・テレビ誌ライター)

『相棒』をこよなく愛するコラムニストのペリー荻野さんは、今回のサプライズ起用に興奮を隠せない。

「2代目以降の相棒は落ち着いた雰囲気でしたが、原点に返るという感じがします。久しぶりにスーツを着ていない相棒で懐かしいし、亀山の熱血ぶりがまた特命係を変えるだろうと思いますね。初期のころは、右京さんの博識と文化的な趣味の世界が事件の解決に関係してくるという展開が多くありました。

 亀山はそういう教養とは無縁のキャラクターなので“右京さん、それ何ですか?”と聞くのですが、そのおかげで視聴者に違和感なく専門知識を伝えることができるという、重要な役割を担っていたんですよ

成宮の役名が劇中に登場!?

 寺脇の復帰は、新たな可能性を示唆しているとも考えられる。

もともと、相棒は面白いゲストがたくさん出ていたので過去に関わってきた人たちがまた出演することも考えられるわけですね。オールドファンはすごく喜ぶと思います。亀山と結婚した鈴木砂羽さんが演じる美和子もその後どうなっているのかは気になりますよね。

 あと、高橋克実さんが奇妙な探偵役として、シリーズ全体で2回だけ登場したんですが、再び見られるんじゃないかとも期待しています。もっと言えば、これまで逮捕された小悪党くらいの人は、出所していてもおかしくないので、そのあたりもドラマとして面白くなるかなと思います」(ペリーさん)

及川光博と成宮寛貴

 もちろん、“あの人”の復帰も待ち望まれるが……。

「3代目の相棒だった成宮さんですよ。'16年に薬物使用疑惑が報じられ芸能界を引退し、現在は平宮博重として商品のプロデュースなどを行っています。近年はキー局のコンプライアンスが厳しいのでカムバックはほぼ不可能でしょうが、役に罪はありませんからね。役名だけでも劇中に出せないかという声もあるといいます」(前出・制作会社関係者)

 せっかく持ち上がった“OB大集合プラン”。右京さんも「おやおや、困りましたねぇ」とは言わないはず!


ペリー荻野 時代劇研究家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー、放送作家。愛知教育大学在学中に中部日本放送でラジオパーソナリティー兼放送作家として活動を開始