「みんな、元気だったでしょうか?」
6月3日、3年ぶりとなる全国ツアー『こんど、君と』が福島県からスタート。小田和正が優しく呼びかけると、客席を埋め尽くしたファンから大きな拍手が沸き起こった。
声が出ない困難に直面
「前回のツアーの最後、小田さんは“また逢おう!”と約束していましたが、コロナ禍でコンサートは開催不可能に。積み重ねたいろいろな感情があふれたのか、どの会場でも涙ぐむ姿を見せています。74歳8か月での全国アリーナツアーは、矢沢永吉さんを抜いて男性ソロアーティストとしては史上最年長です」(音楽ライター)
15日には8年ぶりのオリジナルアルバム『early summer 2022』を発売。11月の横浜アリーナ公演まで、全国16か所で34公演を予定しているが、ツアー中の9月に小田は75歳になる。
「小田さんの持ち味はハイトーンボイス。澄んだ声で高音のメロディーを歌います。若いころと同じように声を出すのは簡単ではないはずですが、小田さんは衰え知らず。
ただ、昨年末のウェブメディアのインタビューで、《72から73になる時に、ああ、声がちょっと出にくいなっていう感じがあった》と語っているように、“声が出ない”という困難に直面していたそうです。ちょうどコロナ禍が始まったタイミングで、歌う機会がなくなっていたことが影響したのかもしれません」(同・音楽ライター)
リハーサルは最後まで残って練習
歌わないことで本当に声は出づらくなってしまうのか、朴澤耳鼻咽喉科の朴澤孝治院長に話を聞いた。
「声帯は、粘膜と筋肉でできていますが、加齢が進むと声帯の粘膜のハリがなくなり、筋力も落ちてきます。その結果、声がかすれやすくなり、高い声が出にくくなってしまうんです」
しかし会場に訪れたファンは、“以前と同じような伸びやかな美声だった”などと、変わらぬ歌声だったことをSNSで報告。小田はどのようにして、歌唱力を取り戻したのだろう。
「筋肉は使わないと劣化しますが、意識的にトレーニングに取り組むことで改善できます。小田さんは、高い声を出す曲を長年歌われてきましたから、同世代のほかの方よりも声帯が鍛えられているでしょう。それでも、ステージに立てるようになるまでには、筋トレやランニングなど、相当なトレーニングを積まれたのだと思います」(朴澤院長)
小田の音楽に対する真摯な姿勢は、業界内でも評判だ。
「毎年12月に放送されるTBS系の『クリスマスの約束』では、ゲストの方の歌を演奏するということもあり、リハーサル期間はいつも最後まで残って練習していました。それだけ努力されているので、声が出なくなったとご本人は思っていても、周りはほとんど気づいていなかったと思います」(TBS関係者)
“声が出ない”という試練を乗り越えて再びステージに立った小田。その瞳は“キラキラ”と輝いていた。
朴澤孝治(ほうざわ・こうじ)
朴澤耳鼻咽喉科院長。米国ハーバード大学留学、東北大学病院助教授、仙台社会保険病院院長補佐など臨床経験をもとに広く耳鼻咽喉科一般の診療を行う。米国ベストドクターズ社の「Best Doctors in Japan」“めまいの名医50人”に選出