今年4月、Netflixが発表した第1四半期の決算業績が話題を呼んでいる。
「増加を続けてきた有料会員数が全世界で20万人も減少しています。ロシア、ウクライナ情勢の影響でロシアでのサービスを停止したことが理由の1つですが、それ以外にもアジア圏以外では、家計の見直しで動画配信のサブスクを解約する家庭が増えているという背景もあるようです」(ITライター)
'97年にアメリカで設立されたNetflix。オンラインでのDVDレンタル事業から始まり、'07年にストリーミング配信サービスに移行したことで急成長。'15年に日本版が誕生すると、フジテレビと提携を結び、共同でオリジナルコンテンツを制作することを発表。フジテレビを代表する人気恋愛リアリティーショー『テラスハウス』の配信などで会員数を増やしていった。
「日本版では吉本興業やジャニーズともタッグを組み、'16年にはお笑いコンビ・ピース又吉直樹さんの同名小説をドラマ化した『火花』や、ジャニーズWEST主演の『炎の転校生REBORN』などを制作しましたが、大きな話題にはなりませんでした。日本での会員数が大きく伸びたきっかけは、'19年に配信が開始されたAV監督・村西とおるさんの半生を描いた『全裸監督』のヒットでしょう」(テレビ誌編集者)
サブスクの王様・Netflixの敗北
『全裸監督』で知名度を一気に高めたところ、'20年2月には日本国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大。巣ごもり生活の浸透により動画配信サービスに加入する人が増えたことで、日本でも“動画サブスクの王様”と呼ばれるほど、会員数が急増した。
「実はここにきて、日本国内でもその人気に陰りが出始めているんです。昨年11月にオリコンが発表した『満足度の高い“定額制動画配信”』ランキングでは、ディズニー+(プラス)がNetflixを抑え、初の総合1位に輝きました。特に女性や10~20代からの支持率が高いことが明らかになったんです」(広告代理店関係者)
コロナ禍の影響もあり、需要が高まる動画配信サービス。広告費が大きく減少し、苦戦を強いられているテレビ局も動画配信に活路を見いだすなど、“戦国時代”といえるほどに、競争が激化している。
「ディズニー傘下の会社が運営しているHuluですが、日本では日本テレビに事業承継しています。フジテレビはオリジナルドラマにも力を入れているFOD、テレビ朝日はKDDIと共同でTELASA、TBSとテレビ東京はWOWOWとともにParaviを設立。受信料を徴収しているNHKも有料でNHKオンデマンドを始めるほどです(苦笑)。各局ともオリジナルコンテンツ制作を強化するなど、力を入れています」(前出・テレビ誌編集者)
ほかにもNTTドコモが提供するdTVとアニメに特化したdアニメストア。スポーツ専門のDAZNなど、国内だけでも30サイトほど乱立している状況だ。そこに新たな刺客が……。
HBO 制作の人気ドラマには渡辺謙、山下智久らが出演
「ワーナー・ブラザースが'20年からアメリカでサービスを開始したHBO Maxという動画配信サイトがあるのですが、来年6月をメドに日本版をスタートさせる計画があるんです」(映画配給会社関係者)
HBOは、日本でもブームを巻き起こした『セックス・アンド・ザ・シティ』など、ヒットドラマを制作するアメリカのケーブルテレビ局として知られている。
「巨匠マイケル・マンが監督を務め、渡辺謙さんや山下智久さんらが出演した日本の裏社会を描いた人気ドラマ『TOKYO VICE』もHBOが制作しています。日本でのロケを行うにあたり、WOWOWと共同制作されたことで現在はWOWOWで放送されていますが、HBO Max日本版では、すでに制作が発表されているシーズン2を売りにしていくのでは?と噂されていますよ」(同・映画配給会社関係者)
ワーナー・ブラザースに日本版を開始するのが事実かを問い合わせるも、
「現段階で未定でございますので、取材などはお受けいたしかねます」
とのことだった。
「HBO Max日本版開始のタイミングで、Netflixで配信中のワーナー作品を引き揚げるという計画もあるそうです」(同・映画配給会社関係者)
Netflix離れが進む背景には、これまで作品を提供するだけだった映画会社が自社で動画配信サービスを開始したことも大きいようだ。
「ワーナーに先駆け、ディズニーも他社で配信していた作品を自社サイトにすべて移行。さらにNetflixのオリジナルシリーズとして制作された『デアデビル』など6作品もNetflixでの配信を終了させ、新たにディズニー+で配信を始めるなど、“ネトフリ潰し”ともいえる行動に出ています」(前出・ITライター)
ディズニー作品やマーベル作品を見たいなら
エンタメ事情に詳しいフリーライターの大塚ナギサさんに、ディズニー+が急成長している理由を聞いた。
「“安心・安全”のディズニーアニメだけでなく、マーベル作品や『スター・ウォーズ』シリーズのほか、傘下の20世紀スタジオ製作の作品や日本のドラマまで視聴できるため、家族みんなで楽しめるのが最大の強みです。ディズニー作品やマーベル作品を見たいなら、ディズニー+に加入するしかない状況になっています」
有料会員の減少もあり、社員450人の解雇を発表するなど、暗いニュースが続くNetflix。大塚さんは、動画サブスク戦国時代で生き残れる会社の特徴をこのように分析する。
「強力な武器がある会社以外は、なかなか勝てない時代になりました。アダルト作品が見放題のU-NEXT、『Amazon』のサービスの一環としてお得感のあるAmazonプライムビデオあたりは会員数をキープできるのでは。Netflixは拡大路線を続けてきたから失速しているように見えますが、ほかで見られないハイレベルなオリジナル作品を多数制作しているのは大きな強み。
今は何か1つは動画サブスクに加入していないとエンタメを楽しめない時代になっています。より多くの人に加入したいと思わせる“売り”となる作品を提供し続けられるかが、Netflixの今後を握る鍵になりそうです」
競争の激化でサービスが強化されるなら、視聴者としては大歓迎かも!