サザンオールスターズ・桑田佳祐

 サザンオールスターズのデビュー日である6月25日、桑田佳祐がソロ活動35周年の特設サイト『SKGs』を開設した。

「持続可能な開発目標SDGsをもじっていて、持続可能な桑田佳祐という意味(笑)。サイト内で“生涯現役の音楽人”を目指すと宣言しています。5月に出した『時代遅れのRock'n'Roll Band』も話題ですね。“同級生”である佐野元春、世良公則、Char、野口五郎と一緒に出した楽曲ですが、年齢を重ねても、みなさん衰え知らずです」(音楽ライター)

 年齢を重ねてなお勢いを感じさせる桑田だが、ファンもデビュー記念日には盛り上がりを見せる。サザンゆかりの地である茅ケ崎にファンが集結。サザン通り商店街は“聖地巡礼”に訪れた人々でにぎわった

「桑田さんゆかりの洋菓子店やブティックなどに人がたくさん来ていましたね。でも、もっと大変なことになっていたのが『雄三通り』にあるパン屋さん。夜中に行列ができていますよ」(近所の住民)

 それが、1958年創業の老舗『清月』。桑田が通い詰めたことで知られており、本人公認の『サザン佳祐ドッグ』というパンも売られている。

7月15日に閉店で押し寄せるファン

「昔から人気でしたが、今年1月に“7月15日に閉店します”という告知がされてからは、連日ファンが押し寄せるように。グルメサイトには朝6時に開店とありますが、深夜の3時くらいから人が集まります」(サザンのファン)

茅ケ崎市にあるパン屋『清月』。『サザン佳祐ドッグ』を目当てに、夜明け前から長蛇の列

 7月初旬の夜中、店に行ってみた。2時45分、最初の客が到着。3時15分には長い列ができていた。

「最後の思い出として親子3人で来ました。休みなのは私だけなので、妻と子は寝ないで仕事に行きます(笑)」(都内から車で来た親子)

 地元の人も並んでいる。

「私は55年通っています。長くお世話になったおばちゃんに別れを言いに来ました」(自転車で来た70代男性)

 予定を早めて3時45分に開店すると、1人に1点と決められた佳祐ドッグが4時15分にソールドアウト。すべてのパンが売り切れて、いま何時?と思って時間を見れば、まだ朝の5時だった……。

「サザン佳祐ドッグ」は、桑田佳祐がツナ子さんに頼んで作ってもらった“まかない”から生まれた

 店主の高橋ツナ子さんに昔の桑田について聞いた。

「当時はよく店の前で“ローハイド”を歌っていました。道に座って“ローレン、ローレン、ローレン”って。まさか歌手になるとは思いませんでした。テレビに出ているのを見てビックリしましたよ。特別顔がいいわけじゃないから(笑)」

「なんか作って」からファンの聖地に

 桑田との信頼関係は厚く、4年前に店が創業60周年を迎えた際はビデオメッセージが届いたという。

茅ヶ崎市の『清月』店主の高橋ツナ子さん。「今は夜の9時から支度してます。7時に寝てるので、睡眠時間は2時間だけです」

「佳祐は中学時代の3年間、毎日通っていたんですよ。ある日、全部のパンが売り切れだったことがあって。けど佳祐が“お腹減ったからなんか作って”と言うんです。それで、レタス、魚肉ソーセージ、トマトを挟んだものを作ったら、ペロッと3つも食べちゃった。“食った食った”ってお腹をさすっていたのをハッキリ覚えています」

 ただ、ツナ子さんはサザンのファンを相手に“商売”するつもりはなかった。

「うちは加山さんの雄三通りにある店だし、あとから出た佳祐ばかりを応援するわけには……。佳祐は“コンサートのチケット送るよ”と言ってくれますが、自分で買うようにしています」

 だが“思い出のパン”を食べたいというファンは後を絶たず、ツナ子さんはそれに応えてきた。

「仕込みは夜11時からやっていたんだけれど、今は9時からやっています。“辞めないで”ってみんなに言われるけど、もう身体がキツイんです。64年間やって、思い残すことはないですね

 腹ペコで食べたパンの滋味は、桑田もきっと忘れないはずだ。