これまでにも数々の名シーンや個性的なキャラクターが登場し話題となってきた『鎌倉殿の13人』。そこには脚本を手がける三谷幸喜さんのどういう思いが込められてきたのか。物語後半戦の見どころを合わせ、制作ウラ話を直撃!
<ツボ1>まさに太鼓判! 小栗旬の演技力
「以前、小栗さんには僕の映画に出ていただいたんですが、短い撮影期間でしたが、やってほしいことを的確に演じてくださいました。相性というのかな、小栗さんとは共通言語を持っているとそのときに感じました。
今回もやはり小栗さんのお芝居を見ていると、僕がこうセリフを言ってほしいとか、演じてほしいと思うことをきちんと受け取ってくださってる。これは勝手な思いですが、僕の脚本は小栗さんに合っていると思います。
前半も素晴らしいですが、年齢を重ねてからの義時もそれに増して素晴らしい。まだ映像を見ていないんですが、そのはずです! わかります」
義時の変化にも注目!
<ツボ2>頼朝の最期の日へのこだわり
第25回(6月26日放送)で落馬をし、第26回で最期を迎えた頼朝(大泉洋)。彼の死の描き方についてこんなこだわりが。
「脚本家としてこれだけ長い時間、頼朝と寄り添ってきたので、彼のつらさや孤独感は十分感じてきました。だから、ちゃんと静かに死なせてあげたかった。一体、彼の人生とはなんだったのか、頼朝ほど寂しい男はいなかったんじゃないかと。
第25回は頼朝の最期の日を丁寧に描くことで、その答えが浮かび上がってくるよう心がけたつもりです。厳かな1日をイメージし、大泉さんもそれを酌み取って一生懸命演じてくれたと思います」
<ツボ3>大泉洋から怒りの返事が
仲のいい三谷&大泉だからこそのほっこりエピソードも。
「頼朝を演じることで日本中に嫌われていると大泉さんが思っていると耳にしたので、“日本中に嫌われても僕は君のことが好きだよ”と連絡しました。そうしたら、“全部おまえのせいだ”という返事がありました」
<ツボ4>これ以上ない幕引きに!
数々の名場面が生まれてきたが、三谷が手応えをいちばん感じたシーンがコレ!
「義経(菅田将暉)の最期は書いていて面白かったですね。今回の義経像は、菅田さんが演じることを前提に描いていったんです。その義経が最期を迎えるときに、自ら命を絶つ瞬間を僕は見たくなかった。できれば最期のシーンは笑っていてほしかった。僕のイメージする義経の、これ以上ない幕の引き方だったと思います」
<ツボ5>三谷“大河”の常連がラスボス!?
『新選組!』では土方歳三、『真田丸』では石田三成と三谷“大河”の常連、山本耕史が演じる三浦義村がラスボスに?
「三浦義村って不思議で、どの局面でも何を考えているのかわからないんです。そんな三浦義村は、歴史を知っている方ならご存じかと思いますが今後暗躍します。
そしてせっかく山本さんに演じてもらうのだから、最後の最後に義村の最大の見せ場を用意するつもりです。まだ言えませんが、物語の終盤、ラスボス的な存在で主人公にたちはだかるのはこの男かもしれません」
<ツボ6>尼将軍が悲劇の主人公に
尼将軍と恐れられたとされている政子(小池栄子)だが、はたして、本作ではこの先、どのように描かれていくのか……。
「例えば、信長だったらわかるんですが、政子が何をしたかって言われたら、悪女と言われるまでの悪事はしていないんですよね。物語を書いていて思ったのは、彼女は妻として母としてやるべきことをやってきただけであり、でも事態がどんどん悪くなっていく悲劇の主人公のような気がしていて。とても真摯なひとりの女性だと思うし、そういう政子の生涯を描けることに、すごく喜びを感じています」
<ツボ7>まさかの化けたキャラクターたち
三谷の想像以上に成長したキャラクターが2人いた。
「善児(梶原善)が注目されるのは計算のうちでしたが、ここまで成長するとは思っていませんでした。みんなに愛され……いや嫌われてるかもしれないけど(笑)、すごく心に残るキャラになって、これは梶原さんと演出の力だと思います。
そんな善児の幕引きは、どうすればみなさんに満足していただけるのか。それも踏まえて退場シーンは描きました。実衣(宮澤エマ)もそうで、最初は政子の話し相手くらいのつもりでいたんですが、描き始めて調べてみると、それだけじゃもったいないなって思うように。頼朝の死後が実衣の本番。権力欲に取りつかれていったりと面白くなっていくと思います」
<ツボ8>三谷が目指す理想の最終回
頼朝が亡くなり物語もいよいよ後半戦。気になるラストのヒントを教えて!
「僕は大河ドラマを3本書かせていただいていますが、自分の中で決めているのは、主人公の人生が終わるときが最終回だと思っています。
主人公が息を引き取った瞬間にドラマが終わるのが理想の大河ドラマ。実際いままでの2つはそうなっていました。今回はその理想にたどりつけるかどうかわかりませんが……いま言えるのはそれくらいです」
今後も注目! 鎌倉殿を支える13人の宿老たち
タイトルの元にもなっている、源頼朝の死後に発足した集団指導体制である「十三人の合議制」を構成した宿老たち。後半戦に向けてしっかりとおさらいしよう!
※宿老とは……古参の重臣や家老など重要な地位に就く者の称
<1>北条時政(坂東彌十郎)
義時の父。頼朝の死後、頼家(金子大地)が次の鎌倉殿になることに反対する
<2>北条義時(小栗旬)
頼家が鎌倉殿になることに尽力し、支える。のちに鎌倉幕府二代執権となる
<3>比企能員(佐藤二朗)
頼朝の死後、北条と火花散らす権力闘争を起こすことに
<4>和田義盛(横田栄司)
豪快さと勇猛さを兼ね備えた義澄の甥。北条家とともに幕府内の地位を高める
<5>梶原景時(中村獅童)
和歌を好むなど教養も高い。頼家の信任を得る一方で、御家人からは反感も
<6>足立遠元(大野泰広)
文武の才にたけ、文官として活躍してきた。頼家にも重用される存在に
<7>三浦義澄(佐藤B作)
時政とは昔からの悪友同士。宿老の一員となると、頼家を支えていく
<8>八田知家(市原隼人)
北関東をおさめていた御家人。北条にとって敵か味方かわからない未知の存在
<9>安達盛長(野添義弘)
頼朝が心許した数少ない男。頼家が鎌倉殿になると献身的に尽くす
京からやってきた文官たち
<10>大江広元(栗原英雄)
頭の切れる有能な官僚。いつも冷静で幕府の政を取り仕切る
<11>三善康信(小林隆)
都から鎌倉にくだり、幕府の問注所を率いるように。頼朝の死後も行政をつかさどる
<12>中原親能(川島潤哉)
外交官。朝廷との交渉役として鎌倉と京都を往復し活動
<13>二階堂行政(野仲イサオ)
財務官僚のキャリアを生かすべく京都から鎌倉へ。文官として頼朝を支えた
一体どうなる!? 次回(7月17放送)のストーリーは?
土御門通親(関智一)から源頼朝(大泉洋)の死を知らされ、思案する後鳥羽上皇(尾上松也)。鎌倉では宿老たちが居並ぶ中、新たに鎌倉殿となった源頼家(金子大地)が自身の方針を表明。
これに北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)は共に困惑し、梶原景時(中村獅童)は賛辞を送る。その様子を政子(小池栄子)に報告した義時(小栗旬)は、弟・北条時連(瀬戸康史)と愛息・頼時(坂口健太郎)を頼家のもとへ送り出し……。(7月10日は放送休止)