コンビニ大手『ローソン』公式HPにて、『ストリートファイターキャンペーン』企画の予告が発表された。なんでも7月12日から7月25日までの期間で、対象商品を購入するとオリジナルステッカーがもらえるというもので、他にもコラボグッズの販売や、“引用ツイート”によるプレゼント企画も開催される模様。
1987年に誕生した『カプコン』の人気ゲーム『ストリートファイター』35周年を記念したアニバーサリー企画でもある同キャンペーンで、景品ステッカーのモデルに起用されるのは、1991年にアーケードゲームで登場した『ストリートファイター2』。略して“スト2”の登場キャラクターたち。
当時はプレイするためにゲームセンターに長蛇の列を作り、家庭用ゲーム機に移植されると後の“格ゲー(格闘ゲーム)”ブームの火付け役にもなったスト2。新作シリーズの『ストリートファイター5』が世界各国の『eスポーツ』大会で起用されるなど、現在もその人気は高い。
そんな“初代”スト2に登場する、世界各国の個性的なキャラクターは12人。キャンペーン用に制作されたオリジナルステッカーも全6種類で、ちょうど12人が対戦する画面を再現したデザインのようだ。公式HPを確認すると、「波動拳」「昇竜拳」と必殺技音声が聞こえてきそうな躍動感と懐かしさが込み上げる。
対戦するのは【リュウVSケン】【春麗VSダルシム】【エドモンド本田VSブランカ】【マイク・バイソンVSバルログ】【サガットVSベガ】。そして【ガイルVSガイル】……、あれっ? 11人しかいない!?
スト2に詳しい世代ならすぐに気づくであろう、本来ならばこの流れで「ガイル」と対戦するのは「ザンギエフ」。“彼”だけがゲーム画面に確認できずに、ガイル同士で対戦するという違和感を覚えずにはいられない構図に。
大きな身体とパワーを誇る一方で、移動速度が遅くジャンプ力も低いプロレスラーのザンギエフ。操作が難しい玄人向けキャラとも言えるが、破壊力抜群の必殺技「スクリューパイルドライバー」を決めれば友達から尊敬されたものだ。
「ロシア出身」のキャラクターだった
最新版のスト5にももちろん登場する、他11人と同様にストリートファイターシリーズを代表するキャラなのだが、なぜザンギエフだけシール化されなかったのか。ネット上でもこのラインナップに戸惑いの声が上がっている。
《ザンギエフハブられてるの流石に笑…えない》
《ステッカーにザンギエフがないんですが》
《ちょっと待って何この露骨なロシア外しは…ザンギエフ悪くないよ》
そう、このザンギエフはスト2登場時は「ソビエト連邦」出身で、ゲームクリア後のエンディングではミハイル・ゴルバチョフ元大統領を思わせるキャラクターとコサックダンスをする演出もあったキャラ。ソ連崩壊後の新作シリーズ以降は、現実同様に出身地も「ロシア」に変更されている。
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、4か月以上経った現在も続いている。その間に日本も含めた世界各国の企業による“ロシア離れ”が加速し、ウクライナ支援を呼びかける声が高まると同時に、一部で反ロシア感情も高まっている。
日本国内でも、ロシア料理店に対するネット上での嫌がらせや中傷が相次ぐなど、在住ロシア人への差別的なヘイトスピーチが横行。4月には、乗客からのクレームを受けて、JR恵比寿駅にあったロシア語の案内表記を覆い隠していたことも発覚した。
架空の人物とはいえ、ザンギエフがキャンペーンから外されたのも、ロシア侵攻に影響されてのことなのだろうか。ローソン広報部に理由を聞くとーー。
「権利元より提示されたキャラクターを起用しています」と、一言のみの回答があった。権利元であるカプコンによる判断ということか。(※『株式会社カプコン』に見解を問い合わせ中。回答があり次第追記します)
少数のクレームを聞き入れた結果
ネットトラブルに詳しいITライターは「過剰配慮しすぎた結果かもしれません」と、今回のキャンペーン対応の苦作に同情する。
「ザンギエフ除外に制作側の差別的な意図は全くないでしょう。現在のロシアに対してあまり良い印象を持っていない論調が少なからずあるのは事実で、ウクライナ情勢を顧みて配慮したものと考えられます。とはいえ、実際に“ロシアだ”と声高に叫ぶ人はごくわずかで、そのクレームにも近い少数意見を聞き入れた結果、それが逆に“差別”に受け止められて大きな批判を招くリスクもあるのです」
恵比寿駅の件でも、すぐさまJR東日本の深谷光浩東京支社長が「差別との誤解を招く行為で不適切だった。深くおわびしたい」と謝罪し、ロシア語の案内表記は元通りに掲示された。過剰な配慮と自主規制は、時に裏目に出ることもあるようだ。
「仮にザンギエフを起用したとしたら、たしかにクレームを入れるネットユーザーが出たとも考えられますが、実際のところは一般消費者は気にもしませんよ。むしろ除外したことで逆に違和感をもたれ、それこそ出身国に関係なくゲームファンに長年愛されるキャラだっただけに騒がれてしまったのでは?」(前出・ITライター)
配慮しすぎるのも、かえって騒動を大きくするというわけか。