安倍晋三元首相が、参院選で応援演説に訪れていた奈良市で銃撃され負傷。心肺停止で病院に緊急搬送されたが、死亡したと発表された。享年67歳。
現行犯逮捕されたのは奈良県在住の山上徹也容疑者(41)。殺人未遂容疑で現行犯逮捕された。2002〜2005年に海上自衛隊に所属していたという。山上容疑者が犯行に使った銃器は既製品でなく手製のものと思しき散弾銃のような形状をしており、安倍元首相に後ろから静かに近づき、3〜5メートルの間で2発発砲した。
「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)に出演したデーブスペクターは「元総理につくSPは優秀ですから」としたうえで、「それでも(銃撃)できたのは何があったのか。これからの検証で分析すると思います」とコメントした。このような事件が起こってしまった背景に何があったのか──。
元徳島県警捜査一課警部で犯罪コメンテーターの秋山博康氏は、
「安倍さんは現職の総理ではないということで警視庁からはひとりしかSPがついておらず、あとは奈良県警とともに警備に回っていた。たとえば現職の岸田総理の場合ですと、側に4〜5人、車内にも待機しているので十数人はいるのではないでしょうか。人員不足だった感は否めません」(以下、コメントは秋山氏)
アメリカのような銃社会ではないから
人的要因もさることながら、強行突破をされてしまったのには他の原因も考えらえるようだ。それは、警備体制において、“前代未聞のケース”に対する準備が十分に取れていなかったとの考え方。
「今回の警護のケースですといかに要人に近づく不審者を見つけ出すかですが、このご時世はマスクをしているのが当たり前なので、怪しい人間が見分けにくい時代でもあるかもしれません。
また、アメリカのような銃社会ではないので、“対拳銃”専門の対策をとれていなかったという見方もできると考えられます。私が捜査一課の特殊班にいたときも、対刃物・対銃器の両方の訓練はやっていましたが、装備品ひとつとっても防弾チョッキに耐刃防護衣と異なるものを装備しますし、警備の方法も異なります。銃のような“飛びもの”と刃物ではとるべき距離感も殺傷能力も違いますから。対拳銃の場合の対策を怠っていた部分もあるでしょうね」
今後の選挙演説は“防弾ガラス”も検討か
秋山氏は「日本のSPは文武両道で優秀」としたうえで、
「SPができたきっかけは三木武夫元総理の時代に佐藤栄作元総理が亡くなったときに葬式が行われた際、右翼の人間が三木さんの元に走り、顔面を殴打したことに端を発します。当時は全国で生中継されていたこともあり、大騒ぎになったことがSPの成り立ちです。ですが、三木元総理の一件以降、日本は平和で大きな事件は起きなかった。言葉は良くないですが、体制として“平和ボケ”している部分もあったかとも思います」
今回の一件を受けて、要人の警備の見直しが図られると予想されるという。凶器は刃物だけでなく銃の可能性があることも視野にいれなくてはならない。
「今後、選挙演説といった聴衆との距離が近い場合は、所持品の検査や防弾ガラスを設置するといった対策がとらえる時代になってくるかもしれません。それほど前代未聞の事件だったといえるでしょう。
今後も模倣犯が出てくる可能性もありますから。早速警察庁は全国警察に対し、警護の体制を見直すよう通達をするのではないでしょうか。あってはならない国家に対するテロ行為なので早急に対策をとらなくてはなりません」
山上容疑者は安倍元首相を「狙って撃った」と供述しているという。岸田文雄総理は「卑劣な蛮行」と非難のコメントを出した。
《秋山博康 犯罪評論家・コメンテーター/防犯コンサルタント/ドラマ等の警察監修》
1979年 徳島県警察 採用
1984年 23歳の時刑事に初配属 殺人など重大事件を担当する本部捜査第一課
2000年「おい!小池」で有名な殺人指名手配の総指揮官で注目される
以後、「リーゼント刑事」のニックネームで 警察密着番組等メディアに多数出演 2021年 定年退職「刑事バカ一代」をモットーに犯罪コメンテーター等として活動中。得意分野は、殺人、強盗、強姦、放火、誘拐、立てこもり、窃盗等。