全国各地の高校球児が甲子園出場をかけた地方大会がスタート。各地で熱戦が繰り広げられているが、
「試合中に足をつる選手が続出しています。また、宮城県では開会式で体調不良も訴える選手もいました。今年は6月下旬から気温が30度を超えるなど、連日の猛暑の影響も大きいと思います」(スポーツ紙記者)
夏の風物詩ともいえる高校野球だが、近年の酷暑で8月に開催することを疑問視する声も少なくない。SNSでは《夏に高校野球やるのやめませんか。日本の気候は変わりました》《考え直す時期》といった意見も飛び交っている。この問題について、スポーツライターの小林信也さんに話を聞いた。
「ここ数年の暑さは異常なもので、これに対応しないのはどうなのか。地方大会を行う時期としても向いていません。梅雨中は、雨で中止が増え日程が過密になり、晴れても湿度が高いです。梅雨が明ければかなり暑くなるため、熱中症になるリスクが高いです。なぜこの時期にやるのかという疑問はあります。
さらに、甲子園は夏に開催されるから、将来甲子園を目指す小中学生も暑い中でやれとなってしまっています。高校野球がアマチュア野球の中で影響力があることを考えれば、暑い時期を避けるのは当然のことだと思います」
子どもの入場料は100円→500円に
暑さの問題に加えて、入場券の大幅な値上げという問題も起きている。今年の夏の甲子園は3年ぶりに入場制限なしで開催予定だが、外野席入場券は大人500円から1000円、子ども100円から500円にアップ。一塁・三塁の内野席入場券は2000円から3700円となり、バックネット裏の中央指定席では2800円から4200円まで大幅に上がった。
「日本高野連は“暑さや感染症対策の費用が増えており、やむを得ず値上げすることにした”と説明しています。2019年に当日券を求めて早朝から1万人以上が並ぶ日があったり、大会期間中に約400人が熱中症で手当てを受けたりしたことも理由のひとつで、今回はすべて前売り、ウェブのみでの販売です」(前出スポーツ紙記者)
ネットでは《プロ野球並みじゃん》《昔は外野席タダだったのにな》といった不満の声もあがった。費用が増えたといっても、阪神甲子園球場はタダで借りており、審判も交通費が支給される程度のボランティアなのだが…
「昨年、一昨年と観客を入れられなかった負債もあると思いますが、暑さやコロナ対策で、そんなにお金がかかるようなやり方で開催するなら大会をやめた方がいい。バックネット裏の4200円なんて、完全にビジネスですね」(小林さん、以下同)
学校関係者のみしか入場できなかった昨年は日本高野連が朝日新聞のサイトでクラウドファンディングを募ったが、目標額の1億円には遠く及ばない1300万円台に終わった。
収入を増やしたい高野連と朝日新聞
「お金が足りないのなら、主催側がお金を出すべきだと多くの人が考えた結果だと思います。高校野球ファンとの認識の違いがあったことについて、日本高野連と朝日新聞は自問自答すべきなのに、そうした姿勢は見られなかった。入場料を上げて収入を増やそうというのは安易な方法です」
周囲の環境が変わりつつある中、高校野球も転換期にきているのかもしれない。
「10、11月にずらせば地方大会は秋に開催でき、暑さ対策もそこまで必要ない。さらに、3年生は少しでも長く部活ができるというメリットもあります。ずれた分、3月に行われている春の甲子園を5月ごろに行うとか、春は多くの選手に出場機会を与えるために、都道府県や地域ごとでリーグ戦を行うなど、いくらでも改善策はある。もっと新しいことを考えていく必要がありますね」
教育の一環であるならば、全ての高校生が安全に野球を楽しめる環境を大人たちが整備してほしい。