コロナ禍でマスク着用を宣言する桶田敦容疑者(本人SNSより)

「ゼミを履修している友人がショックを受けている。学生に理解があってフィールドワークに積極的で、講義もおもしろかったそう。いまだに事件が信じられない、人間不信になりそう、って……」

 と被害者と同じ大学に通う女子学生は打ち明ける。

 教え子に睡眠薬を飲ませて自宅でわいせつな行為におよんだとして警視庁麹町署が準強制わいせつの疑いで7月7日に逮捕したのは、大妻女子大学(本部=東京都千代田区)の元教授・桶田敦容疑者(64)。6月26日、夜もふけきらない時間帯の犯行だった。

教え子の女子生徒に睡眠導入剤を飲ませて…

「同じ大学の20代女子学生を自宅マンションに誘いこみ、ふたりきりのシチュエーションで食事をごちそうし酒をふるまった。ひそかに酒に睡眠作用のある薬を混ぜたとみられ、口にした女子学生は次第に意識がもうろうとしてきたという。桶田容疑者は“睡眠導入剤を入れた酒を飲ませ、ベッドで休んでいるときに身体を触りました”などと容疑を認めている。薬で抵抗できない状態にしてからわいせつ行為におよぶなど犯意は強く、手口は卑怯きわまりない」(全国紙の社会部記者)

 事件の容疑者、被害者の双方が通う大学の反応はかなり早かった。逮捕前の7月1日、桶田容疑者のセクシャル・ハラスメント行為を確認し、事態を深刻に受け止めるとして懲戒解雇処分に。逮捕時の肩書きが「元教授」となっているのはそのため。処分は、就業規則と学校法人のハラスメント防止対策規定に基づくとしており、被害学生の苦しみに寄り添う姿勢を明確にしている。

 逮捕当日は学長名で、

《本学元教員が、教育者として恥ずべき行為を行ったことは到底許されることではなく、極めて重大なことと受け止め、被害学生並びに在学生、保護者、卒業生をはじめ多くの関係の皆さまに心からお詫び申し上げます》

 などとコメントした。

 桶田容疑者は元TBS解説委員。専門分野は「災害報道」でメディア関係論に詳しく、同大では2019年から文学部コミュニケーション文化学科で教授を務めていた。

 事情を知るTBS関係者はこう話す。

「大学で修学した地震・火山噴火にかかわる報道をライフワークとし、福島第一原発事故では何度も現場に足を運んでいる。さらに約5年後には同系列の地元テレビ局に転職し、家族を残して単身、福島に移住した。気骨ある大物OBといえるが、下半身は別人格だったのだろう」

退職時にTBSの局アナらに花束を贈られる桶田敦容疑者(本人SNSより)

 関係者などによると、大阪府出身で10代のころからジャーナリストを志し、地元の公立高から信州大学の理学部地質学科へ。卒業後、通信社勤務を経てTBSに転職した。

TBSの敏腕プロデューサー

「得意分野がもうひとつあって選挙報道に強い。“小泉劇場”といわれた2005年の郵政民営化解散・総選挙では、当時、局のニュースの顔だった『ニュース23』キャスターの筑紫哲也さんと、テレ朝『ニュースステーション』でライバル番組MCを長く務めた当時フリーの久米宏さんを投開票日の選挙特番でブッキング。2枚看板で民放トップの視聴率をたたき出した。特番プロデューサーとして仕切ったのが桶田容疑者だった」

 と前出のTBS関係者。

 こうした実績にあぐらをかかず現場主義を貫き、後進の指導に情熱をそそぐ日々を送っていたとみられる。同大のほか、早稲田、慶応、上智をはじめとする有名大学でメディア関連講座の講師などを歴任。NPO法人放送批評懇談会が優秀な番組などを顕彰する『ギャラクシー賞』テレビ部門の委員でもあった。

 柔和な表情に鋭い目。桶田容疑者はフェイスブックで、報道のあり方や問題点をあげつらっていた。

 例えば、メディアの世論調査に不正があったと報じられると、

《あり得ない出来事です。(中略)メディア全体の世論調査への信用が墜ちる話です!》(20年6月19日付)

 と厳しく批判。

 ニュース番組についてはプロデューサー目線で、

《報道ステーション、9党首討論会。50分あるかないかで語るには時間が無さすぎ。個別にじっくり聞く場を作る方が、大越さんも生きるよなぁと思いながら視聴》(21年10月14日付)

 と書き込んでいる。

在校生は「本当に気持ち悪い事件」

 一方、女子大教授が直面するいまの学生気質を語る場面も。『自主ゼミがジャニーズに乗っ取られた』とタイトルをつけ、

《今日は一日学生たちと番組鑑賞会。途中で、ジャニーズの話になって、YouTubeでキンプリ見てるゼミ生のはしゃぎぶりが半端ありません!》(今年4月23日) 

 と自虐ぎみに綴っていた。

 目立つのは、犯行とは真逆のまっすぐな記述や意見ばかりだ。

犯行現場となった桶田敦容疑者の自宅マンション

 犯行現場となったのは築約20年の賃貸ワンルームマンション。賃料は月13万〜15万円が中心とみられ、大学から徒歩10分以内とアクセスがいい。福島移住時に別居することになった家族との現在の関係はわからないが、立地条件からみると大学に通勤するためのセカンドハウスとも考えられる。

「捜査当局は部屋を借りた経緯や睡眠導入剤の入手経路、犯行の計画性などを詳しく調べている」(前出の記者)

 在校生の別の20代女性は「ほんとに気持ち悪い事件。吐き気がしますね」とばっさり。大妻女子大の校訓は「恥を知れ」。あらためて容疑者がこの校訓に思いを馳せたとき、心にどう響くだろうか。

          

桶田敦容疑者(本人SNSより)
大妻女子大学
犯行現場となった桶田敦容疑者の自宅マンション
退職時にTBSの局アナらに花束を贈られる桶田敦容疑者(本人SNSより)