「国民との親和を妨げない形で、いかにご身辺のご安全を確保するかは、警察の永遠といってもいい課題」――
7月14日、宮内庁の西村泰彦長官は定例会見で、そう見解を示した。
「安倍晋三元首相の銃撃事件を受けても、皇室の活動や警備体制が大きく変わることはないようです。これまでの警備を継続しつつ、今回の教訓を生かせたら、と話していました」(皇室担当記者)
皇室の警備は“秘匿型”
安倍元首相が凶弾に倒れたのは、奈良市の近鉄『大和西大寺』駅前で演説をしていた7月8日のこと。直後には、ツイッター上で《安倍元首相にもSPを小室圭くらいつけてほしかった》 といった投稿が続出し、多いもので1万3千件の“いいね”が寄せられた。
昨年の秋、秋篠宮家の長女・眞子さんと結婚した小室圭さんが10人以上のSPに囲まれていたのに対し、安倍元首相の警備の手薄さに違和感を抱いた人は多かったようだが、
「一般的に元首相の警備は“国内トップクラス”。安倍元首相には、専属のSPが1人、奈良県警や地元警察のSPが十数人で警備にあたっており、人数が問題だったわけではないでしょう。ただ、映像を見る限り、彼らを擁護できる要素は、いっさいありません」
そう指摘するのは、埼玉県警で要人警護の経験がある、警備会社『セーフティ・プロ』社長の佐々木保博氏。
「“360度から狙われる場所”かつ交通規制をかけていない場所で演説していますので、いつ車が突っ込んできてもおかしくない状況でした。警備配置や、後方に警察車両を用意していない点など、すべてが間違っています。SPは頭で考えるより身体が先に反応しますが、それすらできていないのは訓練不足です」(佐々木氏、以下同)
選挙では、国民に親しみを感じさせることが重要であり、私服姿の警察官を多く配置する“秘匿型”の警備体制が敷かれる。スーツや制服姿の警察官がずらりと並ぶ“見せる”警備は、国民に威圧感を与えてしまうからだ。
「“秘匿型”は皇室の警備にも当てはまります。ご訪問先で人々とふれあう際は、国民に皇室への距離を感じさせない配慮がなされるのです。天皇や皇族方の護衛や、皇居の警備を担っているのは『皇宮警察』です。責任の所在が明確で、地元警察に対する指揮命令系統も整っています」
胸の前で腕を組んでいる護衛がいた
今年4月、上皇ご夫妻が神奈川県・葉山町にある葉山御用邸で静養された際や、秋篠宮ご夫妻が三重県・伊勢神宮を参拝された際にも、私服姿の警察官が警備にあたっていた。
今回の銃撃事件によって、日本の警備上の甘さが露呈したともいわれ、国内外から“テロができる国”というレッテルが貼られた場合、その危険が皇室の方々に及ぶことも考えられるだろう。冒頭のように、宮内庁長官は「警備体制が変わることはない」と語っていたが、
「皇室にとっても“対岸の火事”ではない。6月25日に、刃渡り17センチの包丁と皇室を批判する文書が宮内庁に送りつけられる事件がありました。
2019年には、お茶の水女子大附属中学校に通われていた悠仁さまの机にナイフが置かれたこともあります」(前出・記者)
現在、筑波大附属高校1年生の悠仁さま。皇族を初めて迎え入れた同校の警備や警護について、とある在校生は懸念を示す。
「警備に力を入れると話していたけど、心許ないですね。部外者が校門を通過するのは簡単そうに見えます。悠仁さまは登校されるとき、学校から少し離れたところで送迎の車を降りて、徒歩で校舎へ入られます。SPは数メートル後ろにいますが、その“間合い”も気になるところです」
なかには「自分たちにも影響があるのでは」と、恐れる生徒もいるという。前出の記者も憂色を浮かべる。
「近年、皇宮警察に関する不祥事が相次いでいます。今年2月には皇宮警部だった40代男性がパチンコ店で窃盗。2020年3月には皇宮警察で未成年飲酒や“のぞき”があったとして幹部や護衛官ら30人前後が処分されました。伝統ある組織なだけに“パワハラ”が横行し、内部では皇族方への悪口がはびこっているとも報じられ、忠誠心や素行に疑いのまなざしが向けられています」
不安は尽きない中、今後の警備や警護における改善策について、前出の佐々木氏に聞いてみた。
「何よりも大切なのは“意識改革”。安倍元首相の銃撃事件で驚いたのは、胸の前で腕を組んでいる護衛がいたことです。腕組みは、初動が数秒遅れてしまうためタブーです。“自分の身を呈して守る”という大原則に忠実になることが、いま最も必要でしょう」
警護対象者を守れない“失敗”を二度と繰り返してはならない――。