世界的な感染拡大を受け、2020年1月末、内閣に「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置された

 猛威を振るってきた新型コロナウイルス。今年5月、久々に行動制限のない大型連休を迎えられたかと思った矢先、再び第7波ともいわれる感染拡大が始まっている。コロナ不況が与えてきた雇用・家計へのダメージと、それらが巻き起こす“悪循環”とは。

女性の貧困の加速も…収入減で消費力も減

 コロナ禍による不況も日本社会の深刻な爪痕だ。特に非正規雇用の雇い止めは各業界で深刻化し、女性の貧困が大きな問題になっている。

「日本の雇用環境に関するデータを弊社で分析したところ、コロナ期間において解雇されたのは、ほとんどが非正規雇用の方でした。さらに性別で分類してみると、女性の割合のほうが高いということがわかります。次に雇用者数が減った業種で分類し直してみると、いわゆる“外出4業種”で従事者の解雇が顕著であるということが見えてきました」(経済アナリスト・森永康平さん)

 外出4業種とは、ホテルや旅館などの宿泊業、飲食サービス業、演劇や娯楽などに関わる娯楽業、そして美容業界や冠婚葬祭などを含む生活関連サービス業が該当する。

「いずれも対人のサービス業ということで、コロナ禍で大きな打撃を受けた業界ですが、女性が従事する比率が高い産業であることもあり、結果として女性の貧困が加速することにつながっています。賃金が安く、何かあったときにまず解雇されやすいという、非常に不安定な非正規雇用の問題をどうするか……この先の日本の課題がこのコロナ禍で、より浮き彫りになったように感じますね」(森永さん)

 雇用の問題以外にも、コロナ禍が家計に与えたダメージは大きい。生活保護の申請件数は2020年度、2021年度の2年連続で増加したことが、厚生労働省の発表で明らかになっている。

「非正規雇用の方はもちろん、正規雇用の世帯でも実は収入は減少傾向にあります。リモートワークの普及によって、残業代が減ったということが要因のひとつであると分析しています」(森永さん)

 収入の減少は必然的に家計消費の衰退にもつながり、その不況の悪循環はこの先も続きそうだ。また、コロナ禍を経て消費スタイルにも変化が見られたと森永さんは指摘する。

「コロナ前はみんな気軽に外食をしたり、遊びに出かけたりしていたと思いますが、そういった消費はコロナ禍で減少しました。この先コロナが落ち着いても、その消費活動がコロナ前の規模まで完全に戻ることは、難しいんじゃないかと思います」

 たしかに、コロナ禍での生活が長引く中、外食や外出にお金をかけないという生き方もまた定着しつつある。

「2年半以上続いたコロナ禍で、人々のライフスタイルや趣味嗜好も変わってしまったように感じます。実際、ジムやサプリメントなど健康関連の消費はコロナ禍以降で増えており、お金の使い方の変化もまたコロナの爪痕といえるかもしれません」(森永さん)

 コロナ禍が私たちの生活に残した数々の爪痕。癒えるのには時間がかかるだろう。

お話を聞いたのは……
経済アナリスト 森永康平さん
証券会社、資産運用会社を経て、2018年に金融教育ベンチャー「マネネ」を設立。『スタグフレーションの時代』(宝島社)など著書多数。

取材・文/吉信 武