知らなかったじゃ済まされないその行為、犯罪です!(イラスト/こうき)

 

「電気泥棒!」

 弁護士のもとに「カフェで充電をしていたら店主から訴えられた」という依頼人(赤楚衛二)がやってくる。そんなシーンから始まった『石子と羽男─そんなコトで訴えます?─』(TBS系:金曜夜10時)。今やカフェで充電は当たり前になっているが、なかにはコンセント使用禁止の店もある。ドラマ内ではすぐに和解となったが……。

盗電で逮捕事例も(イラスト/こうき)

 実際に“電気泥棒”で逮捕されたケースはあるのだろうか。

「'19年に兵庫県のコインランドリーで、無断でパソコンの充電をした男性が窃盗罪で逮捕されたケースがあります」(全国紙記者)

 窃盗罪が電気にも適用されると知らない人も多いのでは?

電気を無断使用した場合、窃盗罪(刑法235条・245条)となります。法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。充電する際には、お店の方にひと言断って、許可をもらうべきです。実際に、コンビニの外壁にあるコンセントで携帯電話の充電をした男子中学生は窃盗容疑で書類送検されており、携帯電話を充電しようと駅のコンセントを無断使用した女子大生が摘発されたケースもあります。いずれも書類送検はなく、警察限りで終結させる微罪処分になっています」

 とは、アディーレ法律事務所の長井健一弁護士。

 電気の窃盗以外にも知らない間に犯罪者になってしまうことが……ほかのケースを見てみよう。

ケース1 むしゃくしゃして1円玉を割ったら逮捕!?

硬貨を割ってしまうと…(イラスト/こうき)

 今年5月上旬、Twitter上で話題になったツイートがある。ある学生がむしゃくしゃしたとして1円硬貨を半分に切った画像を投稿。これに対して「硬貨を割る行為は犯罪」と多くのリプライ(返信)がつき、なかには警察に通報したという人まで現れ、学生は反省の意を述べてアカウントを削除した。

 このケースでは逮捕とはならなかったようだが、過去には硬貨を傷つけたことで実際に逮捕に至ったケースもあるのだ。

'17年10月に手品用のコインを製造するために硬貨を傷つけたとして3人の男性が警視庁保安課に貨幣損傷等取締法違反の疑いで逮捕となった事件があります。逮捕された男性らはマジシャンとして活動しながら、プロ向けにコインの販売もしていました。500円硬貨が別の硬貨に変わったように見せるため、2つに割って内側をくりぬいた中に10円硬貨を隠したり、安全ピンで硬貨を貫けるような穴をあけたんです。これらはいずれもマジックの小道具で、1枚当たり2千円から3万円で販売していたといいます」(司法記者)

 手品用に使うのは悪意はないと思うのだが……。

 アディーレ法律事務所の長井弁護士は、

故意に1円玉を割ることは、犯罪になります。ただし、ノリで1回やってしまったような場合に逮捕までされることは考えにくいです。

 貨幣を損傷した場合、貨幣損傷等取締法違反となります。

 法定刑は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金となります。ここでいう「貨幣」とは「500円、100円、50円、10円、5円および1円の6種類」の貨幣をいいます(法律で定める記念貨幣も含まれます)。紙幣は含まれませんので、紙幣を損傷しても犯罪が成立することはありません」

 1円玉を割って逮捕されたらたまらない!?

ケース2  ママ友にBTSの録画DVDを渡して謝礼をもらったら逮捕!?

ダビングもアウト!?(イラスト/こうき)

 7月上旬、大手掲示板サイトにこんな相談がのった。

《アーミー(BTSファンのこと)のママ友にTBSチャンネルで放送していた番組の録画をDVDに焼いてくれと頼まれました(中略)。

 4枚ほど渡してお礼として1000円いただきました。するとそれを知ったほかのママ友が「それって犯罪じゃない?」と言ってきました。私のしたことは犯罪なのでしょうか》

 推し活している女性にとってはとても他人事とは思えないこの相談。多くのリプライがつき、ほとんどが《違法ではない!》というものだったが、実際はどうなのだろうか。

 前出の長井弁護士は、

著作権法違反になる可能性があります。まず、テレビ番組について、私的使用のための複製は法律で認められています。しかし、個人視聴の目的で録画したテレビ番組であっても、放送局等の権利者の許可を得ずに無断でDVD等に収録して販売することは複製権・頒布権の侵害となり、違法です。今回は謝礼として1000円を受け取っていますが、DVD1枚の価格(100円もしない)から考えると1000円は実費ではなく、販売したとみなされる可能性があります。なお、今回は友人1人にあげる目的でダビングしていますので、「複製物を公衆に譲渡」(著作権法2条1項19号)にあたらないと思われます。したがって、無償であれば著作権法違反にはあたらないと思われます」

ケース3 子どものお昼寝中に出かけて逮捕!?

 7月4日、自宅に生後7か月の乳児を約8時間放置したとして札幌市内に住む母親(25)と知人男性(47)が保護責任者遺棄の疑いで逮捕された。

2人は居酒屋に行っていたと供述。その間“ベビーモニターで監視していた”とも。子どもの命に別条はなかった。なぜ逮捕されたのかというと、女性が鍵をなくしたため警察に自ら通報したことで事件が発覚したんです」(全国紙記者)

 このニュースを報じた記事のコメント欄には、《長男の幼稚園お迎えのとき下の子はお昼寝させたまま出てきちゃう私は逮捕されちゃうの?》など主婦らの困惑するコメントが相次いだ。

 幼い子どもを家や車に放置して死なせてしまう痛ましい事件が多く、保護責任者遺棄には厳重に罰してほしいとの声もあるが……。

「生後7か月の子どもを寝かしたまま出ていく行為には保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。

 保護責任者遺棄罪は、

1.幼年者などを保護する責任のある者が、2.これらの者を遺棄したり、その生存に必要な措置をしなかった場合に成立します。

 2の「遺棄」とは、保護のない状態に置くことにより危険にさらすことをいいます。「置き去り」にする行為も含まれます」

 とし、今回の事件については、

結果的に子どもに異常がなくても犯罪は成立します。夜間に8時間も外出して飲酒しており、何かあった際にすぐに対応することはできないので子どもを危険にさらしたといえる。したがって、逮捕が不当とはいえませんね。

 子どもを置いて出ていくことは保護のない状態にすることになり、子どもを自宅に1人にすることは子どもを危険にさらす行為と判断される可能性があります。大変だとは思いますが、子どもの安全のために一緒に外出されるほうがいいと思います」(長井弁護士)

 うっかり犯すこともありうる犯罪の数々。実は、知識で防ぐことができるのだ。

法律を扱った『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系:金曜夜10時から)弁護士の中村倫也とパラリーガルの有村架純のバディが話