「白米と玄米どちらを主食にするか」で健康効果に大きな差が生じる。夏に向けたダイエット、コロナ対策の免疫力UPにも効果的な玄米の栄養を最大限吸収するには、「発芽玄米」であることが重要だという。女性必読!薬剤師が絶賛する美容と健康効果を高めるスーパーフードの魅力とは──?
食事が欧米化し、パンやパスタなど小麦の消費量が年々増えている。しかし、小麦から生成されるグルテンは、人間の消化酵素では分解できないため腸の炎症を起こしやすく、倦怠感や免疫力低下を招く。近年、「グルテンフリー」を謳う食品が増えたのはこのためだ。
とはいえ、「私は毎日白いご飯を食べているから大丈夫」と安心するのは早い。
なぜなら、米にはビタミンやミネラル、タンパク質に食物繊維といった栄養素が豊富に含まれているが、その9割は表皮と胚芽にある。精製した白米では、その栄養をすべて捨ててしまっていることになるのだ。
「パンよりは白米のほうがいいのですが、米に白で『粕』という漢字になるように、白米=カスなんです。ですから、主食は玄米にしたほうがいい。玄米だけで身体に必要な栄養素をほぼ賄うことができ、健康になれますから」
そう語るのは、予防医学の商品紹介や講習を行う『あまてらす株式会社』代表の渡辺茂さんだ。アステラス製薬で20年以上、医療用医薬品や予防医学関連事業に従事してきた薬剤師で、20年前までは、「病気になったら薬を飲めばいい」と考えていた。ところが、ヨーロッパへの転勤で身体に異変が起き、玄米食に目覚めたという。
娘のアトピー治療で玄米生活スタート
「前職でヨーロッパに転勤になり、現地の方と同じように肉を食べ、ワインを飲んでいたんです。美食ざんまいの生活を2年ほど続けたある日、コレステロール値を測ってみたら290mg/dlをマーク。投薬での治療を考える目安が240mg/dlですから、相当高い数値だったといえます」
日本にいたころ、和食中心だった渡辺さんのコレステロール値は180mg/dl。食事の変化が2年でコレステロール値の急上昇を招いたことは明らかで、その影響は家族にも及んだ。
「ヨーロッパの水や食事が合わなかったのか、転勤後、娘がアトピー性皮膚炎を発症したんです。ステロイドを塗って、いったんかゆみがひいても再発する状況が6年間も続きました」
転機となったのは、マクロビオティック健康法の権威、久司道夫先生のセミナーを受講したことだった。
「娘のアトピーのことを相談したら、薬では根本的な解決にはならない、“食事や水など身体に入れるものをかえないとダメ。玄米を食べさせてみなさい”とアドバイスをいただきました」
驚いたことに、玄米生活を始めて半年で娘さんのアトピー性皮膚炎が完治。以後、一度も再発していない。
娘さんと一緒に玄米生活を始めた渡辺さんのコレステロール値や血圧もすべて正常値に戻り、13キロ痩せた。その後、20年間リバウンドしていないという。
白米と玄米、どちらを主食にするかによって、健康効果に大きな差が生じる。
「玄米は白米のようにぬか層(果皮、種皮、糊粉)を削っていないので栄養素が多く、“最も母乳に近い完全食”といわれています。ところが、白米は精製の段階で食物繊維も削ってしまうため、消化吸収はいいものの急激に血糖値が上昇し、それを下げるために膵臓からインスリンが一気に分泌されます。
血糖値の上昇と下降は緩やかであれば問題ありませんが、急激な乱高下は血管を傷つけ、身体に負担をかける。これを『血糖値スパイク』といい、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞、がん、認知症などのリスクが指摘されています。
その点、玄米は血糖値スパイクを起こしにくく、腹持ちがいいので1日2食でも満足できます。現代人は大してお腹が減ってないのに3度食事をとり、胃が大きくなっていますが、玄米を主食に1日2食にすれば、適正サイズになってくる」
解毒効果の高い玄米で体温を上げる
現代社会を生きる以上、食品添加物を避けて暮らすのは難しい。食品の箱や袋の裏を返せば、成分表示にカタカナの添加物がズラリと並ぶ。
口に入ったものは仕方ないとして、求められるのは不要なものをためずに体外へ排出する解毒。玄米はこのデトックス効果も高い。
「身体に必要ない老廃物が腸で滞ると滞留便になり、通り道を防いでしまう。お通じが悪い人が多いのはそのためです。ところが、玄米を食べれば豊富な食物繊維が老廃物を吸着し、体外に排出してくれるので腸がきれいになる。また、玄米の表面についている玄米菌は複数の有用な菌の集合体で、悪玉菌に傾いた腸内環境を整える作用もあります」
腸が整えば腸内の免疫細胞の働きも向上し、免疫力も体温も上がる。すると、血流が改善し、肌ツヤや顔色もよくなるという。美容にもうれしい効果がある玄米だが、食べ方にコツがいる。それは、玄米を“発芽”させること。
「玄米はそのまま炊いても、豊富な栄養素を十分吸収することができないため、“眠った米”と呼ばれています。玄米の栄養はかたい表皮に覆われていて、腸でスムーズに吸収するためには、茶碗1杯分を食べるのに1時間ぐらい噛んで、でんぷんをブドウ糖化させる必要があります。
たまに玄米を食べているのに顔色が悪い人がいますが、これは消化不良の玄米が腸にたまり、腐敗して、活性酸素が発生するためなんです」
種子がかたい表皮に覆われているのには理由がある。発芽に必要な栄養を簡単に外敵に取られては命をつなぐことができない。そこで、玄米に限らず、すべての種子にはデトックス作用のあるフィチン酸が含まれる。鳥に食べられても鳥の体内でフィチン酸が働き、未消化のままフンと一緒に排出され、種子を守れるからだ。
「この眠った米を起こし、豊富な栄養を吸収する方法が“発芽玄米”にすること。発芽を合図に、フィチン酸の成分が変化して、化学ブロックが外れます」
また、発芽によってデンプンがブドウ糖まで分解されるため、より栄養を吸収しやすい状態になるという。
「“発芽玄米”はスーパーやネットでも簡単に購入できます。ただし、工場で発芽させた玄米は、流通に耐えるよう乾燥させてあるので、発芽抑制モードに入っています。これを発芽したての栄養を吸収しやすい状態にするため、発芽玄米を炊く前にひと手間加えます。常温より少し高い30度から32度のお湯に4時間ほど浸水させて、そのお湯ごと炊くんです。
浸水時間は長すぎてもいけません。特に夏場は水が臭くなるので10時間以上つけっぱなしはNGです」
市販の「発芽玄米」は通常の玄米より値段が張るが、自宅で玄米を発芽させる方法もある。温度調節機能のあるヨーグルトメーカーを使えば、作り方は簡単だ。
玄米を入れて32度にセットし、6時間ほど待てば小さな角のような芽が出る。ポイントはその状態ですぐに炊くこと。放置すると発芽が進み、栄養が芽の生育に使われてしまう。食べきれない分は冷凍保存しておけばよい。
「発芽玄米の栄養素をさらに高めたいなら、小豆と天然塩を加えて炊き上げ、有用な玄米菌を増殖させるべく専用の炊飯器を使い、全自動で発芽・発酵させる方法もあります。この発酵発芽玄米を私は“めざめ玄米”と呼んでいて、毎日食べています。生きた酵素も加わったスーパーフードですよ」
夏本番前の今こそ、腸をきれいにして免疫力を高め、さらにはダイエット効果も高い玄米食に切り替えない手はない。
発酵発芽玄米のつくり方
発芽玄米2合に小豆18gと天然塩0.5~1g弱を加え、230mlの水で炊き上げ、必ず保温の温度を72度前後に設定できる専用の炊飯器で3日間保温し、発酵させる。
※通常の電子ジャー炊飯器は保温中に60~65度まで下がるものもあり腐敗菌の繁殖を招く原因となるため、必ず専用炊飯器をご使用ください。
教えてくれたのは…渡辺茂 ●1961年、熊本県生まれ。熊本大学大学院薬学研究科卒業。あまてらす(株)代表取締役、薬剤師、生活習慣病予防指導師。著書に『発酵発芽玄米 三カ月の奇跡』(さくら舎)がある。